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ヨーゼフ・ロート
日時: 2005/10/21 21:40
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参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/radetzky.htm

 ヨーゼフ・ロート(1894-1939)は旧オーストリア=ハンガリー二重帝国の東方、ポーランドやロシアにもまたがる地名である「ガリツィア」に生を享けました。ガリツィアにはシュルツの出身地ドロホビチも含まれるようにユダヤ人が多く暮らしていた土地であり、ロートもその血を引いています。若いときから欧州各地を巡り歩いてバガボンドを自認していたロートは国際情勢を見る目も鋭く、1933年、ナチスが政権の座につくと同時にそれまで腰を据えていたドイツからさっさとパリに亡命を果たします。まだほとんどのユダヤ人が楽観にとりすがり、あるいは迷っているさなかのことでした。
 しかし、彼にとって祖国とは、あくまで第一次世界大戦で解体された「最後の帝国」の名に値する国家「オーストリア=ハンガリー二重帝国」だったのです。「アーリア民族」という虚構を推し進めようとするナチス・ドイツを憎み、国家主義者ではあっても反民族主義を貫いた彼は、あの落日の帝国に対する愛惜を隠そうともしませんでした。しかしそれが一種のダンディズムと思えるほど、彼の手にかかるとかっこいいのですね。彼は第二次大戦勃発の年、四十代半ばにしてさっさとこの世をおさらばしてしまいます。目の前に展開するであろう大戦の悲劇、戦後明らかになる同胞に対する地獄絵を見ずに済んだのは、彼にとって救いだったのでしょうか。

 推薦はもちろん代表作とされる『ラデツキー行進曲』(筑摩版世界文学全集または世界文学大系所収)と言いたいけど、実は長篇をそれしか読んでないので、いずれ中期の傑作『ヨブ』『タラバス』(鳥影社・ロート小説集)も読んでご報告するという約束付きということで。
メンテ

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