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2003年上半期・雫のベストほんやく本
日時: 2003/07/04 22:14
名前:

1.『昏き目の暗殺者』マーガレット・アトウッド
いや参りました〜。魔女アトウッドの最高傑作ということで、畏れ多くて1位以外には考えられない(笑)
緊迫感のある筆致とスリリングなストーリー展開、重層的で複雑な「入れ子」構造、濃厚な文章。詩人としてのアトウッドの魅力も満載。

2.『贖罪』イアン・マキューアン
「元?」知的変態マキューアンの最高傑作は、畏れ多くてとても2位以下には……(笑)
ちょっとだけ期待していたかもしれない(笑)ショッキングな嗜好もなければ、惹きつけては身をかわすような人の悪いユーモアとか、斜に構えた蘊蓄やケレン味もない、きわめて上質で深い小説で、子供時代特有の自己中心的世界観や焦燥感をクールに描いていて、降参です。

3.『めぐりあう時間たち』マイケル・カニンガム
この本を読んだことで、先に読んだヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』への理解まで深まってしまった……だからほんとうは『ダロウェイ夫人』+『めぐりあう時間たち』で3位、ということなんでしょう。ただ、この本の繊細さ、深さ、美しさは、私にとって、とても忘れがたい読書となりました。

4.『嵐が丘』(新訳)エミリー・ブロンテ
読んだばかりで、上半期ベストすべりこみセーフ!再読ではありながら、新鮮な印象で驚きました。名作『嵐が丘』が、センスのいい現代語訳で生まれ変わった記念に。

5.『ブロンド』ジョイス・キャロル・オーツ
マリリン・モンローの人生を徹底的に蒸留したフィクション。結局女優にも娼婦にも妻にも母にもなりきれなかった1人の無垢な女性の悲しみを、J・C・オーツは、女性作家ならではの視点(「血」の感覚など)、赤裸々で緊迫した筆致で描写しています。ラストの息苦しさは凄かった……。

6.『エロイーズ 愛するたましいの記録』ジャンヌ・ブーラン
世紀の恋愛(或いは醜聞)と呼ばれる、アベラールとエロイーズの物語を、エロイーズの内面から描いた「女の物語」。神よりも人を愛することを選んだのに、表向きは神に仕える身であるという矛盾と裏切りに、生涯苦しみ怖れるエロイーズの独白は、炎のようで壮絶でした。

7.『侍女』マーガレット・フォースター
雇い主であるエリザベス・ブラウニングへの思慕と共鳴と憎悪……主人公ウィルソンの生涯は結局これだけで占められていたのかと思うような濃密さでした。「侍女」という立場にまつわるプライドのありかや複雑な気持ちの浮き沈みが、実に克明に率直に描かれていました。

8.『小さな白い鳥』ジェイムズ・M・バリ
↑濃密な女の世界が続いたので、ここらでひと休み(笑)
すみ&にえさんもおっしゃってる通り、優しいのに優しくないフリをする主人公のオジさんのキャラにまず惚れたとも。そしてとにかく子供の愛らしさと、それを失う時の哀しさみたいなのがいっぱいつまった、読んでいてニコニコしちゃうような本でした。

9.『スパイたちの夏』マイケル・フレイン
子供の頃の、秘密めいた囁きで語られていた怖ろしい話、そしてイケナイコトに魅了されてしまう後ろめたさ、そういう思い出が一気によみがえる感じ。「少年の夏の日モノ」なんだけど、語りのせいもあってか、静かで厳粛な趣きでした。好みですう♪

10.『コレクションズ』ジョナサン・フランゼン
「アメリカ人か否か」論争で盛り上がりましたね(笑)
登場人物すべてが嫌なヤツなんだけど、その嫌らしさ加減は、ほんとうに誰もが少しは心当たりがあるようなリアルさでした。これは個人的な事情によるところが大きいのかもしれないけど、ラスト近くで号泣。


そして、惜しかったね〜のオマケいろいろ。

☆『ボディ・アーティスト』ドン・デリーロ
 肉体と精神の危ういバランスをとるような不思議なはりつめ感、好きなんです。
☆『ベル・カント』アン・パチェット
 甘い、ありえない、と言われようが、政治的社会的観念が欠如していると言われようが、登場人物へのいとしさで一杯にしてくれた本です。泣きました。ただしエンディングは無かったことに(笑)
☆『アルネの遺品』ジークフリート・レンツ
 ハンスの、傷口をそっと撫でるような語り口が、問答無用に好き。
☆『紙葉の家』マーク・Z・ダニエレブスキー
 楽しい読書でございました(笑)
☆『ゾマーさんのこと』パトリック・ジュースキント
 だってこういうの好きなんだもん、としか言いようがない(笑)『香水』とは全く違った顔を見せてもらいました。

ん〜ほかにも短編集とかいろいろあるんだけど、きりがないのでこの辺で♪
メンテ

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Re: 2003年度上半期・雫のベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2003/06/30 22:12
名前: すみ&にえ
参照: http://www.aw.wakwak.com/~w22/

わ〜、ホントに順位が違いますね。とくに1位の『昏き目の暗殺者』の「畏れ多くて1位以外には考えられない」には気にしていただけにウッ(笑) そ、そうなんですよね、そう、そうなんですよ(^^;)(^_^;)
え〜っと2位の『贖罪』は私たち、イアン・マキューアンじゃなかったら1位だったかも。どうしてもイアン・マキューアンだと次はどうなるのよ、とそっちが気になって。一発屋の匂いのする新人作家だったら迷わず1位か2位か、せめて3位にしてたでしょうね(笑)
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Re: 2003年上半期・雫のベス ( No.2 )
日時: 2003/07/04 22:40
名前: おはな
参照: http://www.geocities.jp/hana3ana3

さすが雫さん。番外がいっぱい出てる〜。でもあの読書量からここまでに絞り込むだけでも大変だったでしょうね。
1&2位が大変に重いチョイスで、う〜む風格の香り‥。
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Re: 2003年上半期・雫のベス ( No.3 )
日時: 2003/07/04 23:08
名前: ぎんこ  <ginko_books@yahoo.co.jp>
参照: http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/9629/

ほんと、雫さんはいっぱい読んでるなぁ〜。
「この世の果ての家」は、早く読まないと映画が先に公開されたらイヤなので、さくっと行きたいです。
あと気になってるのは「ブロンド」です。これは読みたいです!
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Re: 2003年上半期・雫のベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2003/07/05 14:05
名前: mopsa
参照: http://granola.jfast1.net/

>雫さん
『ブロンド』、読んでらっしゃったのですね。
気になっていたのですよ、私も! >ぎんこさん
ノンフィクションっぽいけど、でもフィクションなんですね?モンロー自体も好きですし、こりゃーチェックですわ。
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Re: 2003年上半期・雫のベストほんやく本 ( No.5 )
日時: 2003/07/05 21:35
名前:

>すみ&にえさん
わかりますとも、蒸し暑い時にアトウッドの顔は念頭から追い払いたい気持ち……えっ違うの?(笑)
うん、マキューアンはそう簡単には信用できませんよね〜。遅筆だというから、次の作品書くまでに性格変わっちゃうんですよきっと(笑) でもできれば次もこの線でお願いしたいですよね。

>おはなさん、ぎんこさん
やだなおふたりとも〜、私はおはなさんみたいに難しい本は読まないのと、おふたりや皆さんのような素敵なHPを持ってなくて、ヒマだからですってばー。

ぎんこさん、『この世の果ての家』は、『めぐりあう時間たち』のような完成度はないにしても、良かったですよ。特に、短編「White Angel」にもなったという最初のほうの兄弟のエピソードは、胸迫る美しさと悲しさで、映画になるときっといいだろうなあ、って感じです。
『ブロンド』も凄いですよ、ぜひぜひ♪

>mopsaさん
そうなんですよ、『ブロンド』。単なる伝記だったら私も読まなかったと思いますが、作者がなにしろ凄腕のJ・C・オーツですし、現実と幻想世界が渾然一体となった
緊迫感はmopsaさんの好みにもぴったりだと思いますよ♪
メンテ

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