2004年・HIの年間ベストほんやく本 |
- 日時: 2005/01/11 15:23
- 名前: HI
- 初めて参加させていただきます。あんまりたくさん読んでいないので恥ずかしいですが。タイトルが英語の作品は英語で、タイトルが日本語の作品は日本語訳を読みました。(ほんやく本じゃないじゃん、というつっこみはなし。)
1位: The Assault (原題 De aanslag), Harry Mulisch オランダの作家、ハリー・ムリシュの作品を読むのは大作の”The Discovery of Heaven”に続いて2つ目。分厚くて仕掛けが大きい「天国の発見」とは違い簡潔な作品だけど、第二次大戦の歴史の重みを感じさせる分、かえって胸を打つ物語だった。ハリー・ムリシュの他の作品も読んでみたい。
2位: Atonement , Ian McEwan (邦題「贖罪」) 2004年の一番最初に読んだ本。小説としての完成度が高くて堪能したという感じ。これを1位にしてもよかったのだけど、ちょっと躊躇してしまった。読んでいるときは登場人物にかなり感情移入していて、読み終えたあと胸にずしっと来るものがあったのだけど、振り返ると作者にうまくしてやられた感じもする。
3位: Affliction, Russell Banks (邦題「狩猟期」) 基本的には善人のはずの主人公が、生まれ育った環境と、置かれた状況、そしてちょっとした歯車の狂いによって暴力と破滅に向かって行く姿を迫力を持って書いている。皮肉なことに、手持ちの札を賢く使っていれば、主人公が望んでいたささやかな幸福は手の届く範囲にあったのに。
4位: 悪童日記、アゴタ・クリストフ どう形容すればいいんだろう。すごくシリアスな話なのに淡々として、ユーモラスですらあって。
5位: 香水 ある人殺しの物語、パトリック・ジュースキント 去年は須賀敦子さんのエッセーに結構はまっていて、この小説も、「ミラノ 霧の風景」に出てきたのをきっかけに読んだ。匂いを持たずに生まれたために忌み嫌われた主人公が、人工的な匂いをまとうことで初めて社会に受け入れられるというアイデアが面白かった。
6位: Life of Pi, Yann Martel やられた。
7位: In the Realm of Dying Emperor, Norma Field (邦題「天皇の逝く国で」) たまたま手に取ったノンフィクション。もしこの本を刊行直後に日本で読んでいたらもう少し別の感想を持っていたかもしれない。この本を戦争中のアメリカで読むことにアイロニーを感じた。この本が昭和天皇の死を迎えた日本で提起したのと似たような問題が、今のアメリカでも提起できる。それはナショナリズムが原因だからだろうけど。 日本を批評しながらも、アメリカに対する批評も忘れず、日本に対する思いを表現しているのに好感を持った。
ここまでにしておきます。ノーベル賞作家3人くらいの作品も読んだんだけど、あえてカット。「霊山」は英訳ではなく日本語訳を手に入れて読むべきだったかなとちょっと後悔。
|
|