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2004年・mopsaの年間ベストほんやく本
日時: 2005/01/09 10:31
名前: mopsa
参照: http://granola.jfast1.net/

上半期ベストでは選外だった作品がランクイン。インパクトの残留濃度が濃いというか、日々の出来事や、別の作品に触発されて記憶を新たにしたり、読んだ当初はそれほどでもないと思っていたけれど、実は心の奥底に刻印されていたらしい作品たちです。
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1位:イアン・マキューアン『贖罪』新潮社

この物語の問いの投げかけは実に重くて、ずうっと後を引いています。主人公ブライオニーが過ちを犯すに至る心の動きについて、そして、贖罪について。あれ以外になかったのか?他に方法はなかったのか?何度、反芻してはグルグル考えているか分かりません。われながら粘着…。


2位:アイン・ランド『水源』・『肩をすくめるアトラス』ビジネス社

ランドとの出会いは衝撃的でした。あんな分厚い本を2冊もよく読んだなーという自分への慰労の気持ちもあり、「あわせて一本」でランク入り。小説としては、作者の思想の主張がくどいし、情感も薄いしと拙いところがありますが、人間の生き方や社会構造に対する斬新な視点を提供してくれました。


3位:ニール・ウィリアムズ『フォー・レターズ・オブ・ラブ』アーティストハウス

昨年は、国産の悲恋物語がベストセラーになりましたねえ。本書も切ない恋愛小説ですが、それにとどまらず、ケルト的な野生味あふれる自然風土や人間性、神々しい幻想からくる独特の悲哀感といった雰囲気が堪能できる作品でした。親と子、姉と弟、そして恋人たちの間に通い合う情愛が切なく、心にしみました。


4位:コニー・ウィリス『犬は勘定に入れません』早川書房

上半期選外から。かえりみて、やはり質が高かったなーと思います。イライラしつつもニヤニヤ笑えるウィリス節の愛好者として、出版前から期待が膨れ上がっていたのですが、それを裏切らない出来でした。構成の巧みさや、ユーモアあふれる会話、タイムトラベル理論やヴィクトリア朝風俗などのディテールがたいへん楽しかったです。


5位:ピーター・ケアリー『ケリー・ギャングの真実の歴史』早川書房

こちらも上半期選外から。ジワジワ評価が上がってきました。無骨が魅力の、ダイナミックで迫力ある作品だと思います。ネッドの物語が、暗黒面とはいえ、オーストラリアの建国神話たりえているがゆえの力強さでしょうか。


6位:ジェフリー・ユージェニデス『ミドルセックス』早川書房

昨年は、イラク戦争や大統領選挙などを通じ、アメリカという国家のありようについて、様々な言説がとびかった年でした。移民国家としてのアメリカを知る上での一材料として、この本に描かれたギリシア系アメリカ人である主人公一家の三世代に渡っての生活描写や、意識の変化なんかをよく思い出しました。


7位:ジェフリー・フォード『白い果実』国書刊行会

麻薬、狂気、暴力、専横、独裁といった負の要素に満ちた世界観が妖美なファンタジー。美しい装丁と活字、山尾悠子氏訳という付加価値が多分にあるかな…。とにかく、続編が楽しみです。


8位:オルハン・パムク『わたしの名は紅(あか)』藤原書店

ルネサンス絵画に影響され、イスラム細密画の様式がおかされていく物語。トルコの恋愛作法も興味深かったです。アラブ世界に西洋文化が初めて流入した時代を選び、伝統文化が変容していくさまを描いた作者は、EUに加盟しようとしているトルコに何を思うんでしょうか。


9位:フィオナ・マウンテン『死より蒼く』講談社文庫

ラファエル前派という興味のある分野を扱ってくれたことで、必要以上に楽しんでしまったかも。登場する絵画がよく知るものばかりだったので、思う存分咀嚼できました。その点、古式イスラム細密画のイメージが持てずに隔靴掻痒の感があった8位『紅(あか)』とは対照的でした。やっぱり予備知識は大事だなーと思った次第。


10位:アリステア・マクラウド『冬の犬』新潮社

前作『灰色の輝ける贈り物』の感動を再現しきるには至りませんでしたが、個々の物語の内容が記憶から薄れても、「上質なものを読んだなー」という思い出はいつまでも残っています。


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10冊選んだの初めてです。今回は、これといった傾向はないようです。ランク付けは難しい〜。特に下位の作品たちは、甲乙つけがたいです。
メンテ

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Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2005/01/09 19:34
名前: 藤森かよこ  <Kayokofuji@aol.com>

mopsaさんへ:
アイン・ランド『水源』を2004年度ベスト10の中に選んでいただいて、とてもとても嬉しいです。

ほんとランドの書くものに関しては、私自身もいくらでも批判できるのですが、あの圧倒的な生命感あふれる読書体験は、私にとっては無類の特別なものだったのです。ありがとうございました。

メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2005/01/10 00:32
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

mopsaさん、ベスとご参加ありがとうございます♪
おおっ、『贖罪』が1位ですか。たしかにあれは、心にズンと重い課題を残されたような読後感がありますよね。ふと立ち止まって考え込んでしまう。
アイン・ランドはいい読書経験になりましたよね〜。私たちもベストに入れようかどうしようかとさんざん悩んだんですが、他の小説と比べようがないところがネックでした(^^;)(^_^;)
メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2005/01/10 13:05
名前: 藤森かよこ  <Kayokofuji@aol.com>

すみさん&にえさんへ:

ベストに入れようかと悩んで下さったとのこと、嬉しいです。そうですねえ・・ほんとに比べられないというか、変な小説ですねえ。こちらのサイトで、紹介していただいたこと、感謝しています!ありがとうございました。
メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2005/01/10 18:36
名前: mopsa
参照: http://granola.jfast1.net/

>藤森様
ランドの主張するリバータリアニズムに賛同するか否かはおいておいても、こういう思想があるんだということを知ることができたのは大収穫でした。日本語訳がなければ、絶対に触れることのなかった知識です。翻訳していただいて感謝しています!

>すみ&にえ様
比べようがないですよねー、確かに。ランキングのなかでも異色のオーラを放っているような(笑)小説としてはアラが目に付きますが、なんと言っても、あの長大な作品を2冊も読了させたパワー!フシギな魅力があると思わざるを得ません。
メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.5 )
日時: 2005/01/11 01:49
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

>藤森様
えっと、あらためて、はじめましてっ。こちらこそありがとうございます。アイン・ランドが日本語で読める時代に生きていることを感謝していますっ。これはもう藤森様のおかげってことですよね♪
で、私たちは『水源』では大感動、大衝撃だったんですが、『肩をすくめるアトラス』のほうは、ちょっと、う〜んってところがあって、じつは昨夜、藤森様の書き込みを拝見して、ご挨拶したいと思いながらも、臆しておりました(アイン・ランド作品を貶してしまったしな〜と)。でも、あらためて藤森様のHP「日本アイン・ランド研究会」を拝見したら、『水源』ほどには『肩をすくめるアトラス』は・・・ってところはちょっと同じみたいなような気もするかもしれないかもかも(笑)と思い、ひそかに胸をなで下ろしたりもしています。やっぱり相手によるとは思いますが、アイン・ランドは『水源』から読むことをオススメしたいですよね。
メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.6 )
日時: 2005/01/12 22:15
名前:

うひゃあ、アイン・ランド2冊で2位!貫禄あるなあ。mopsaさんの『水源』後『肩をすくめるアトラス』への早業フットワークを思い出します。ランドのパワーも凄いけどmopsaさんの怒濤の読書も凄いと思いました(笑)ほんとこの出会いは衝撃的でしたよね。
あと私個人的には、『ケリー・ギャング』の返り咲きがことのほか嬉しい♪
メンテ
Re: 2004年・mopsaの年間ベストほんやく本 ( No.7 )
日時: 2005/01/13 20:10
名前: mopsa
参照: http://granola.jfast1.net/

>雫様
『ケリー』、何故かジワジワきちゃったんですよー。無骨で荒々しい男の、優しさ・悲しさ。出口のないやり切れなさ。アジェンデの『天使の運命』で思い出して比較して…って過程も影響したでしょうか(笑)
ランドはねー、2冊とも、図書館の新着コーナーでお出迎えしてくれたことが思い出されます。『水源』はいったん遠慮しましたが、結局買って読んだ後、『アトラス』まで鎮座ましましているのを発見してしまっては、お持ち帰りしかないかと。宿命を感じました(笑)
メンテ

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