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2004年・ベックの年間ベストほんやく本
日時: 2004/12/29 17:58
名前: ベック

もう、一年経ったとははやいもんですね。今回のベスト10は短編集が1冊も入ってません。長編オンリーのベスト10となりました。短編集にもマクラウドやラヒリ、このあいだ読了したばかりのダン・ローズ等の良作があったんですが、選出過程で厳選した結果長編のみのベスト10になってしまいました。

■1位■ 「ミドルセックス」 ジェフリー・ユージェニデス/早川書房
 
 有無をいわさずの堂々1位。小説の持つ『力』を実感。登場人物、舞台設定、筋の運びすべてにおいて文句なし。いい時間を過ごさせてもらいました。

■2位■ 「フリアとシナリオライター」 M・バルガス=リョサ/国書刊行会

 1位と甲乙つけがたい魅力に溢れた長編。主人公マリオと叔母との恋の逃避行を描く現実パートとペドロ・カマーチョなるあまりにも奇矯な人物が創作するラジオドラマのシナリオパートが交互に語られ、小説を読む喜びを味わわせてくれます。ほんと、十五年待った甲斐がありました。

■3位■ 「ニューヨーク」 ベヴァリー・スワーリング/集英社

 二段組で六百ページ強という長大な作品ながら、それをまったく感じさせないおもしろさ。アメリカがまだ独立していない時代からの百三十年間を九代にわたる家族を通して描ききった作者の豪腕に頭が下がります。本書を読んで医療の発展がいかに困難に満ちたものだったかという事を痛感しました。

■4位■ 「グノーシスの薔薇」 デヴィッド・マドセン/角川書店

 爛熟のルネッサンス期を舞台にローマの聖地にて繰りひろげられるあまりにも人間的な権力者たちによるファルス。豊穣にして壮麗、荘厳にして蠱惑的な世界はあまりにも魅力的。最近、この時代を舞台にした本が多いんですが、本書はその中でも出色の出来だと思います。そうそう、本書の中に「フランチェスコの暗号」の真相の場面がちょぴっと語られる部分がありました。

■5位■ 「ライスマザー」 ラニ・マニカ/アーティストハウス

 これは、アジアの濃密な世界を充分に堪能。しかし、無惨な話でした。読了して何ヶ月か経った今でも心に食い込んでいるのは、その部分です。本を読んでて悔しくて眠れないなんて事いままで一度もなかったので、特に印象に残っているのでしょう。

■6位■ 「白い果実」 ジェフリー・フォード/国書刊行会

 独特の世界が質量をともなって描かれ、ファンタジーの枠にとらわれない上質の物語に仕上がってました。山尾悠子さんの冷たくて硬質な文章も相まって、忘れ難い世界との出会いとなりました。っていうか、早く続きを読ませて下さい。

■7位■ 「犬は勘定に入れません」 コニー・ウィリス/早川書房

 楽しく読みました。どっぷりと世界にハマったといっても過言ではありません。SFを毛嫌いしてる人、苦手な人でも本書は大丈夫なんじゃないでしょうか。あっ、ちょっと待って、本書を読む前にはJ・K・ジェローム「ボートの三人男」を読んでおくことを忘れずに。

■8位■ 「愛の饗宴」 チャールズ・バクスター/早川書房

 まさしく題名の通りの愛の饗宴。大人の愛、若者の愛、不倫の愛、父が子をおもう愛。そこで語られる真実はオブラートに包まれることなくストレートに読み手に伝わってきます。バクスターの真骨頂ともいうべき普通の人々の『愛の饗宴』。やっぱり彼はウマいんだなあ。

■9位■ 「いいなづけ〜17世紀ミラーノの物語」 アレッサンドロ・マンゾーニ/河出書房新社

 上半期にも選出しましたが、やはりこれはハズせません。とにかく純粋に楽しめます。マンゾーニのおおらかで、時としてユーモアを忘れず、時として鬼気迫る冷徹な描写に酔ってしまいます。単純な枠組みこそ物語の王道だということが本書を読んで実感できました。

■10位■ 「パイの物語」 ヤン・マーテル/竹書房

 オスのベンガルトラと一つのボートで漂流するというのだから、ちょっと変格的な漂流物だと思って読んでいたら、ラストでガツーンとくらわせられてしまいました。このヒネリによって本書は永遠に記憶にとどまる作品となりました。まさに『騙り』の1冊。こんな作家や、ラヒリみたいな作家を輩出するインドって奥深い国でありますなあ。


以上10作品すべて長編。やはり長編の魅力は抗い難い。小説の醍醐味ですな。ていうか、短編の良作をあまり読んでないんだな、これが・・・。
メンテ

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Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/12/30 02:07
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

ベックさん、一番乗りのご参加、ありがとうございます♪
う〜、そうですよね、「ミドルセックス」はまさしく1位にふさわしい貫禄がありました。とか書いているのは、自分たちがまだ迷っているからなんですが(笑) しかし、2位以下にするのが似合わない作品だなあ。あ、もちろん、ベストには入れますけどね。
そうそう、「フリアとシナリオライター」がまた良かったんですよね〜。「ニューヨーク」も楽しめたなあ。っと、「グノーシスの薔薇」が4位ですか! これは私たち、来年読む予定なんで、ググググッとまた期待が高まりましたっ。
メンテ
Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2005/01/08 12:40
名前: ベック

「グノーシスの薔薇」は、期待を高めず賞味下さい(笑)。年末ギリで読んだんで、印象深かっただけですから。しかし、年間通してのベストって悩みますね。だって基準てものがないんですから。ぼくは、おもしろかったか、感動したか、インパクトが強かったかってのを基準にして選んでるんですが、にしても上半期に読んだ本は分が悪い。難しいなあ。
メンテ
Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2005/01/09 00:45
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

そうなんですよね! どうしても上半期は分が悪くなるんですよね。私たちもこのベストをはじめた当初から、それをどうしたものかと悩んでいます。上半期に読んだ本の記憶が薄れかけた11月頃に読み応えのある本がドカドカッと出ますしね〜。上半期と下半期でやったほうがいいのかなあ、なんて話も出てはいるんですが。
メンテ
Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2005/01/12 22:32
名前:

さすがはベックさん、純文学エンタメどちらもいい感じで入ってますね。そのオープンな感じが好感度bPのベックさんぽくて感心します。今年も楽しいお話聞かせてくださいね。
ところで『グノーシスの薔薇』いちおう今手元にあることはあるんですが、エロいとの噂に腰がひけてます(笑)ベックさんの4位とは心惹かれますが、そのへんどうなんでしょうか、エロは相当なもんですか?
メンテ
Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.5 )
日時: 2005/01/14 02:00
名前: ベック

どうもです、雫さん。この頃ご無沙汰だったんで気になってました。え〜っと、グノちゃんはですね確かにエロいんですが、別に特別なエロさではないんで大丈夫だと思います。スワーリングの「ニューヨーク」にしても結構エロ描写多くなかったですか?
それにも増して、物語の魅力がありますから雫さんも全然OKだと思いまする。
メンテ
Re: 2004年・ベックの年間ベストほんやく本 ( No.6 )
日時: 2005/01/14 22:51
名前:

そうですか、特別なエロではない+物語の魅力ですね。じゃあおそるおそる読んでみようかな……挫折したらごめんね(笑)
そうそう、『ニューヨーク』もエロ多かったですよね!ちょっと女性作家じゃないみたいで(笑)
私的には、あれがなければもっとポイント高かったかも〜、というか、その分余った力で愛憎宿命面をもっと掘り下げてほしかった(笑)
メンテ

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