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2004年上半期・なおきのベストほんやく本
日時: 2004/07/09 12:36
名前: なおき   <naoki-sg@dc4.so-net.ne.jp>
参照: http://ns.concordia.to/mt/

自分のWeblogの記録を見てみると、比較できるほど読んでいないのですが、書いてみます。下半期はもう少し読む時間があるといいですなあ。

■1位■ トマス・ピンチョン 「ヴァインランド」

今ごろ読むなよ、なんですが。。。語り口自体は、いつものごとくだめだめ男がでてきたり謎の女の過去をさぐったりなんですが、昔に比べるとずいぶんわかりやすくなっている気がします。いやそれも21世紀の今読んでいるからで、もし80年代のレーガンからブッシュの頃に、もしこれを読んだとしても理解できなかったんじゃないかという気もする。それを考えると、発表当時はこの作品は賛否両論だったわけですが、すげーなと思わざるを得ない。また、物語は80年代に50〜60年代を懐古している部分もあるのだが、今私たちが80年代を懐古しているのと二重に重なるのであります。

■2位■ ウラディミール・ナボコフ 「透明な対象」

「青白い炎」とどちらにしようか考えたんですが、こちらを上に。「透明な対象」はナボコフの晩年の作品で、中篇といっても良い長さですが、ナボコフ度は異様に濃いです。なるほど、これがナボコフかーってかんじ。堪能いたしました。ナボコフのこの作品は、絵画でのキュビズムのようで、ピカソの絵のように多視点、多光源で、しかもズームアップ自在、それでいて不思議と全体がまとまっています。なるほど小説とはこう書くものかと関心しました。

■3位■ ウラディミール・ナボコフ 「青白い炎」

「青白い炎」は実験小説といいながらなんのなんの、面白すぎる。小説の体裁は、ジョン・シェイドという詩人の長編詩「青白い炎」に隣人で大学教授のキンボートが注釈をつけたもの(前書きと索引もある)というものだが、この注釈が奇態であって(いや前書きから奇態であるが)、詩のことはそっちのけで、キンボートが祖国ゼンブラのチャールズ最愛王であった頃から革命・脱出・暗殺者の到来といった内容を、詩の短いフレーズを曲解した上に展開(というか放出)していくというものです。どうやらキンボートは狂人で同性愛者で詩人のストーカーで、ゼンブラの話もすべて妄想・・・なのですが、この妄想が異様におもしろい。げらげら笑いながら読んでしまいました。

■4位■ G・ガルシア=マルケス 「愛その他の悪霊について」

200ページ弱の中篇であるが、内容はとてつもなく濃い。しかも十年近く私の本棚で積まれていただけに、ほどよく醗酵していて芳醇である。出てくる人間誰も彼もが何かが足りず、しかも孤独で何も分かりあっていないという悲しさがひしひしと伝わる佳作だと思いました。書き方は相変わらずひねくれているし、汚いものも出てくるんだけど、それでいて小説としては宝石のようにまとまっています。マジックリアリズム好きにもたまらん世界になっています。

■5位■ エリック・マコーマック 「隠し部屋を査察して」

マコーマックのものは展開が読めない、うえに短編でもまとめる気がない、何か散文詩と小説のキメラであるような、それでいてあざやかな幻想をみせつけてくれます。不条理というよりは無条理とでもいいましょうか。アイルランド系不条理の引継ぎ手のようです。一番は「庭園列車」。これは・・・すごいね。イレネウス・フラッド最高です。また「フーガ」はコルタサルへのオマージュで「続いている公園」を元にして、反行形から始まっての3重フーガになります。小説の冒頭にもコルタサルの文章が引かれているし。カフカ+ボルヘスに筒井康隆を乾燥させてまぶした感じ。どちらかというと幻想小説にすれた人でないつらいかもしれません。「パラダイス・モーテル」読みたいなあ。
メンテ

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Re: 2004年上半期・なおきのベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/07/10 02:01
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

なおきさん、ご参加ありがとうございます。
わ〜、『ヴァインランド』が1位だっ。私たちはピンチョン、これが初めてだったんですよ。だから比べるものもなにもなく、うわ〜っ、おもしれ〜っっと思って、遡って一気に他のも読んじゃいました。なるほど、たしかに今の時代に読むからこそってところは大きいのかもしれませんね。
メンテ
Re: 2004年上半期・なおきのベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2004/07/11 11:55
名前: なおき
参照: http://ns.concordia.to/mt/

すみません。今頃読んでしまったもんで。。。私の場合は「V.」から入って、なんじゃこりゃーって感じでした。でも海外の現代文学の面白さを教えてもらったひとつです。

下半期はもう少し読みたいです。
メンテ

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