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2004年上半期・雫のベストほんやく本
日時: 2004/07/03 10:00
名前:

まずは長編、しぼりにしぼって10位まで。

■1位■ 『ミドルセックス』 ジェフリー・ユージェニデス
なぜか読む前からベスト入り決定してたほどの(こらこら)期待をも上回る大傑作!猥雑で奇矯な登場人物たちが織りなす人間賛歌、おかしくて哀しくて、なにより面白い!歴史のうねりに翻弄されるギリシャ移民一族の壮大な物語でありながら、個々の人間の卑小ないとなみを生き生きと丁寧に描いてこその大河小説と呼べるのだということをつくづく実感。

■2位■ 『ヒューマン・ステイン』 フィリップ・ロス
硬質で重厚な大人の小説。さらりと意表をつく真実の提示には驚愕しましたが、読み進むうちに「人間の穢れ」というものの重圧感に打ちのめされました。

■3位■ 『緑の家』 マリオ・バルガス=リョサ
■4位■ 『フリアとシナリオライター』マリオ・バルガス=リョサ
まあ『フリア〜』だけならもう少し順位は下だったかもしれないんだけど、上半期なんとかすべり込みで読んだ『緑の家』の饒舌で入り組んだ南米密林パワーに圧倒されちゃって、ふと気がついたら予定外の3位乱入(笑)。 両者に共通の登場人物=哀愁のリトゥーマ軍曹と、それに刊行までの15年に敬意を表して(笑)、『フリア〜』も持ち上がりの4位。もちろんこれはこれで実に楽しかった。
『緑の家』凄いです、入り組んでます、会話さえ入れ子仕様です。人物相関図が必要でした(笑)

■5位■ 『愛の饗宴』 チャールズ・バクスター
普通の人々の様々な愛の形を、章ごとに話者を替えてリアルに描く……だけじゃない、深遠で上質な "非"恋愛小説。鋭く視覚に訴えるシーンの挿入、絵画的ともいえるようなエピソードの繋がりかたなど、さすがは巧者バクスターだと唸らされました。

■6位■ 『エドガー・ミント、タイプを打つ』 ブレイディ・ユドール
これはもう、「おもしろうてやがてかなしき」好きな私のツボど真ん中。タフで純なインディアン混血少年の、悲惨なのに笑えて、ひどくせつない成長物語。主人公の少年は好きにならずにいられないし、哀愁ただよう大人たちもなかなかいい味出してます。分厚いくせに軽い、表紙が可愛い、大好き。

■7位■ 『ノーホエア・マン』 アレクサンダル・ヘモン
実は私、最終章でぽーんと投げ出され途方に暮れまして、正直言えばちゃんと理解できた感じがしないながらも、読後に残るものの存在感はとうてい無視できないぞってことでベスト入り。直接戦争を描かずに、戦争によって引き裂かれた自我を描くやりかた、特に、戦場から遠く離れた外国で生きていく中での抑圧された「怒り」が印象的でした。

■8位■ 『パイの物語』 ヤン・マーテル
「人を喰った」或いは「一筋縄ではいかない」小説、といえばこれ。ドキドキひやひや楽しみながら読んでって、見事にしてやられました。最初のほうで少し戸惑いつつ読んでいた宗教や哲学の話も、気がつけばちゃんと伏線となってくるし。面白かった〜。

■9位■ 『僕とおばあさんとイリコとイラリオン』 ノダル・ドゥンパゼ
これもまあ、『エドガー・ミント』と同じような理由でベスト入り決定。飄々とした悪童ズラブと、ほとんど精神年齢同じくらいに見えるおじさん2人……この3人組がしでかす憎めない悪戯や、ふとした時に見せるお互いを思いやる素朴な気持ちが微笑ましい。無愛想なくせに実はやさしいおばあさんもいいし、危機に瀕して妙に哲学的な諦めを見せる犬のムラダも泣かせる(笑)

■10位■ 『ビッグ・フィッシュ』 ダニエル・ウォレス
映画もファンタジックで美しくてたいへん良かったけど、やはり先に読んだ原作の、しみじみとひきつけてはジョークで身をかわすようなタイミングの妙と、なかなか死なない(笑)父親の魅力は実に忘れがたくて。 好きなんだなあこういうの。


★そして短篇集からいくつか、ほぼ好きな順。上で喋り喋り過ぎたのでコメントは省略(笑)
『あなたはひとりぼっちじゃない』 アダム・ヘイズリット
 『冬の犬』 アリステア・マクラウド
 『ふたりジャネット』 テリー・ビッスン
 

やっぱり絞り込むのって難しい〜。1位と2位はほぼ動かないところだったんですが、3位乱入をキッカケにガタガタと総崩れ、もうわけわかんない〜(泣)。後半はもっとスッキリ決まれば嬉しいな。ってか、あれこれ考えるまでもない傑作にめぐり会って恋に落ちたいと思います!
メンテ

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Re: 2004年上半期・雫のベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/07/04 22:18
名前: ベック

なるほど、リョサは「緑の家」もやはりすんばらしいんですね。読みたいとは思ってるんですが、いかんせん、あの厚さに少しビビッてるんですよね(笑)でも、「世界終末戦争」よりかは薄いか。

「ビッグフィッシュ」やっと読みました。いいですねこういう話。悲しい話であるべきところが、魅力あふれたとても素敵な物語になってます。っていうか、これ、素敵な短編が一つになったって感じですよね。
メンテ
Re: 2004年上半期・雫のベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2004/07/06 23:07
名前:

すんばらしいですよ『緑の家』。私の濁った沼のような夏の脳味噌にはかなりややこしい構成で苦労しましたが、その甲斐はありました。ベックさんなら大丈夫!
……と、あちこちで宣伝してるわけは、早く誰か読んでくれないと忘れちゃうのよ〜(泣)

『ビッグフィッシュ』はね〜、普通に考えると、あまりベスト本に入ってくるタイプの本って感じがしないじゃないですか、でもとにかく好きだからってんで入れちゃった。だから余計に、こうしてベックさんが反応してくださって嬉しいです!ほんと素敵なお話ですよね〜。イエスのジョークは笑えました?
メンテ
Re: 2004年上半期・雫のベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2004/07/08 22:04
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

雫さん、ご参加ありがとうございます。
やっぱり『ミドルセックス』が1位ですか。ですよね〜、今期の期待を遙かにうわまわる大作といえばこれ!と私たちも選びました。おっと、長居をすると『緑の家』をまた勧められるのでこのへんで(笑) もちろん読みますともっ。
メンテ

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