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2004年上半期・ベックのベストほんやく本
日時: 2004/07/02 18:28
名前: ベック

今年の上半期は寄り道の多い半年でした。(笑)ということで、今回は上半期ということもあり総決算としてのランク付けは年間ベストにゆずることにして、ランクをつけずに10作品選出してみました。尚、順番は読んだ順です。

◇「ケリー・ギャングの真実の歴史」ピーター・ケアリー

 今年一番に読了した逸品がこれ。オーストラリアで愛され続けている義賊の埃臭い悲劇に家族への真摯な愛情を垣間見ました。彼の誤解と濡れ衣にまみれた人生にやり場のない憤りを感じます。


◇「不思議のひと触れ」シオドア・スタージョン

 「影よ、影よ、影の国」でスタージョン熱にかかり、本書で虜になりました。(笑)すべていい作品ですが、ぼくのベスト1は「雷と薔薇」。次が「タンディの物語」ですね。SFの枠にとらわれない懐の広さを感じます。


◇「初めの光が」、「愛の饗宴」チャールズ・バクスター

 昨年に続いて今年もこの作家を推します。(笑)「初めの光が」は章を追うごとに時間が逆行していくというその秀逸な構成に、「愛の饗宴」は告白形式で市井のごく普通の人々に輝くばかりのスポットライトをあてた手腕に。まったく得がたい作家だと強く思いました。


◇「いいなづけ〜17世紀ミラーノの物語」アレッサンドロ・マンゾーニ

 これほどの長編、しかも古典作品をこれだけ楽しく読めたことが驚きでした。まさしく波乱万丈、次から次へと恋する二人に苦難がふりかかります。古くから連綿と続く物語の王道ですね。常套といえばそれまでですが、それでもこの滋味あふれ、生気に満ちた作品を愛します。


◇「天使の運命」イザベル・アジェンデ

 久しぶりのアジェンデですから、ちょっと不満でもやはり挙げておきましょう。(笑)本書は、下巻でのゴールドラッシュに湧くカリフォリニアが数々の人種を巻き込み発展していく様がめっぽうおもしろい。主人公の特徴が活かせてない、影がうすい、物語が尻すぼみ等々のマイナス要素はありますがそれでも、次の長編を首がちぎれるほど長く伸ばして待っています。

 
◇「灰色の輝ける贈り物」アリステア・マクラウド

 静謐でありながら、荒ぶる真実を突きつける、巧者マクラウドの傑作短編集。生と死のイメージが頻繁にあらわれ、だからこそ生命への力強いメッセージが痛いほど伝わってきます。また、話す言葉が違っても、文化、風習が違っても、子どもが大人を見る目は世界共通です。本書を読んで、郷愁にも似たせつなさを感じる所以でしょう。


◇「ミドルセックス」ジェフリー・ユージェニデス

 豊穣な物語世界を堪能。ギリシャ移民を主人公にすえた壮大なサーガであり、アメリカの年代記であり、苦悩に彩られた青春記でもある本書はまさしく奇跡の一冊、至福の読書時間でした。ギリシャという古風な土地の因習を引きずって、新世界に溶けこみ切れない愛すべき人たち。どことなくアジアの民族とだぶるギリシャの人たち。まだ尾をひいてます。


◇「サトラップの息子」アンリ・トロワイヤ

 伝記作家としての固定観念を快く覆して、作家としての実力を見せつけてくれた快作。平易な文章で、驚くほど巧みに物語をあやつる手腕に脱帽しました。作家トロワイヤの誕生秘話。小品ながら強く印象に残りました。

  
◇「ダ・ヴィンチ・コード」、「天使と悪魔」ダン・ブラウン

 エンターティメント系なら、ダントツです。この作者の素晴らしいところは、大風呂敷広げたような話がたんなる絵空事になってないところです。両作共通して、歴史の定説が覆される快感に酔いしれてしまいます。西洋の絵画、建築物に秘められた象徴の意味、現在使われている言葉の思いもよらぬ語源、なんでもない習慣の由来。歴史の積み重ねてきた暗部に、この作者は驚くべき照明をあてます。マイナス要素も多々ありますが、それを補ってあまりあるおもしろさでした。


◇「ホエール・トーク」クリス・クラッチャー

 久しぶりに涙した作品。アメリカが直面している現実の厳しさが正面きって描かれ、答えの出ないその混乱を主人公は仲間と共に乗り越えていきます。はぐれ者ばかりが集まって、一つの目標に向かうなんて話、掃いて捨てる程書きふるされているテーマですが、それでもいいものはやっぱりいい。本書を読めば、誰もが人間をもっともっと好きになるはずです。


 以上、厳密にいえば10作品ではありませんが、それはご愛嬌。では、みなさん後半もたくさん良作に出会いましょう。
メンテ

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Re: 2004年上半期・ベックのベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/07/03 09:05
名前:

読んだ順とはいえ、ひいきの『ケリー・ギャング』が一番上にきているのがなんだか嬉しい(笑)

それはともかく、やはり気になるのが『いいなづけ』です。コメント拝見してると読みたくてウズウズ。マンゾーニの作品は読んだことないのに、なぜかナタリア・ギンズブルグの『マンゾーニ家の人々』は読みました。こちらもなかなか良い本でした。ような記憶がかすかに(笑)

エンタメ系ならダントツ!というベックさんお墨付きのダン・ブラウンは『ダ・ヴィンチ・コード』がものすごく売れてるみたいですよね。なかなか順番回ってきません。とりあえず先に来た『天使と悪魔』からいってみたいと思いまーす。
メンテ
Re: 2004年上半期・ベックのベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2004/07/08 22:03
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

ベックさん、ご参加ありがとうございます。
私たちが気になるのは、やっぱり『いいなづけ』ですね。これは絶対いつかは読みたいっ。読んで、もっと早く読めば良かった〜と悔しがりたいです(笑)

あと、『ダ・ヴィンチ・コード』の広告にベックさんのコメントが載っていることもここに書き残しておきますっ!
メンテ
Re: 2004年上半期・ベックのベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2004/07/07 20:55
名前: ベック

>雫さん、すみ&にえさん
マンゾーニは挑戦してみる価値あると思いますよ。そうなんですか雫さんは「マンゾーニ家の人々」お読みになってるんですね。確かあの家族は娘さんが多かったんじゃないかな?

ダン・ブラウンは二冊読んでみて、やはり「天使と悪魔」のほうが強く印象に残ってます。「ダ・ヴィンチ・コード」の広告にのった文章は、ここで書いた感想の抜粋版です。お恥ずかしい(笑)。
メンテ

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