2003年・ツラツリの年間ベストほんやく本 |
- 日時: 2004/01/20 10:11
- 名前: ツラツリ
- ゴンブローヴィチ検索中にここを見つけて、ときどき拝見しています。
2003年のベスト10です。海外文学のろくに読めない年でしたが。
■1位■ J・G・バラード『コンクリート・アイランド』
バラード、テクノロジー三部作の二作目。『クラッシュ』では交通事故がエロティックなものとして描かれていましたが、ここでは非人間的な未来都市のデッドスペースに放り出され、そこでロビンソン・クルーソーしてみたいという妙な欲望をそそられます。
■2位■ ファン・ルルフォ『燃える平原』
生涯に『ペドロ・パラモ』と本書の2冊しか残さなかったルルフォの短篇集。一見昔ばなしみたいな語り口に見えますが、石版に刻まれた律法のような、一部の無駄もないハードな作品群でした。
■3位■ クロード・シモン『路面電車』
シモンとしては簡単に読了できる薄い本。しかし地の文全体をおおう、夢の体験をじかに切り取ってきたような強烈なエロティックさはいつものまま。
■4位■ L=F・セリーヌ『ギニョルズ・バンド』
セリーヌはどれもこれも読後感が一緒になりますが、この荒涼と猥雑ないまぜの、悪意の暴風がとにかく心地よくて。
■5位■ サミュエル・ベケット『モロイ』
安部公房から通俗的な抒情や寓意を全部抜くとこうなるんじゃないかというような妙な内容を、沈黙という軟体動物に指をつっこんで裏返したような饒舌で物語る。
■6位■ デイヴィッド・ヴォイナロヴィッチ『ガソリンの臭いのする記憶』
少年への性的虐待をドライに描いてアメリカの暗部を告発する。デニス・クーパーに似て、戦闘的。
■7位■ フリオ・コルタサル『遊戯の終り』
悪夢的な巧緻さで、根源的不安に測鉛を下ろす幻想短篇集。
■8位■ ルネ・ドーマル『類推の山』
アレハンドロ・ホドロフスキー監督のカルト映画『ホーリー・マウンテン』の原作。秘境的な真理の高みを目指し、みんなでシュールな冒険の旅に出る。作者夭折によりほとんど導入部だけで終わってしまい、トルソーや断片ならではの魅力というものもありますが、もう少し先まで書いてほしかった。
■9位■ ジョイス・マンスール『有害な物語』
これはベルメールや四谷シモンの人形のような、あやしく歪んだ美しさが好きな人向け。
■10位■ G・パピーニ『逃げてゆく鏡』
ボルヘス編《バベルの図書館》の1冊。全然知らない作家でしたが、ポーやコルタサルに通じる暗めの怪奇譚でした。
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