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2003年・坤の年間ベストほんやく本
日時: 2004/01/03 22:22
名前:
参照: http://http://yonosk.at.infoseek.co.jp/03.htm

2003年は評価対象として119篇(翻訳本99篇)の本を読みましたが、すみさんにえさんのようにいち早く新刊を読んで感触を伝えてくださる方、それぞれにお薦めの本を挙げて下さる方のご意見を参考にしたお陰で幅広い読書ができたように思えます。

◆1位◆
『アウステルリッツ』 W・G・ゼーバルト/白水社 (2003)
 老いを感じたとき、それまであえて無関心でいられた自分の出自がとてつもなく重いものとなってのしかかってくる。人生の始まりと両親のこと。自分がこの世につながっていた証を訪ねてようやくこの世に別れが告げることができるとでもいうように。静謐のなかに語られる歴史と人間が、「文学」の新しい可能性を教えてくれる本です。著者の早世が惜しまれてなりません。

◆2位◆
『笑いと忘却の書』 ミラン・クンデラ/集英社(1992)
 いつまでも耳に残る天使の高笑い。イノセントゆえの残酷さ。国を棄て、孤独を選び取るという究極の選択をなしてなおこの揺るがぬ精神には感服いたします。

◆3位◆
『ハザール事典[女性版・男性版] 夢の狩人たちの物語』 ミロラド・パヴィチ/東京創元社(1993)
 本書は木谷梨子さんのご推薦。驚異の「事典形式の小説」なのだけど、奇をてらっただけかと高をくくっていた鼻っ柱はいちばん最初「王女アテー」の登場とともにへしおられました。脳細胞ぐさぐさ刺激の一冊です。

◆4位◆
『白檀の刑』 莫言/中央公論新社(2003)
 線の細い都会の恋を描くのも文学、大地と歴史に根ざした、ぶっとくて強烈な恋と犯罪と革命を描くのも文学。だがこのエネルギー噴出は、残念ながら昨今の日本の小説家にはまず真似できないでしょうね。人民が時の政府を倒したって経験がないもんなあ。

◆5位◆
『調律師の恋』 ダニエル・メイスン/角川書店(2003)
 絵に描いたような原色的東洋幻想という、一歩間違えるとアナクロになりそうな題材を、よくもまあ臆面もなくこんな面白いお話に仕立ててくれましたっ。物怖じせぬ若さと才能に乾杯。

◆6位◆
『霊山』 高 行健/集英社(2003)
 高さんと莫言さんとは秘かに認め合ってるのか反発しているのか一度お伺いしたいもんですけど、こちらは亡命者の立場から、中国の大地と精神的歴史を語ろうとします。長江流域の濃密な大気に包まれた挿話がやがてひとつの山のように形作られて行きます。

◆7位◆
『贖罪』 イアン・マキューアン/新潮社(2003)
 マキューアンにしては珍しく「物語らしい物語」で、こんな力業もできるんだぜいというところでしょうか。戦争の描写、ダンケルクという設定など、どれもゆるがせにできない緻密な小説。堪能度は抜群です。

◆8位◆
『サマルカンド年代記 「ルバイヤート」秘本を求めて』 アミン・マアルーフ/リブロポート (1990・ちくま学術文庫で復刊)
 本書はらむずさんのご推薦。天文学者にして詩人のオマル・ハイヤームと彼が残した秘本をめぐるオリエント風味豊かな小説です。愛と冒険に満ちながら、歴史記述はかなり史実に忠実で、どこまでが創作なのかわからぬままにいつの間にか「本」の世界に引き込まれて行きます。

◆9位◆
『眩暈(めまい)』 エリアス・カネッティ/法政大学出版局(1972)
 本書はおはなさんのご推薦。はっきり申し上げてこの本を推薦するのはかなり勇気がいるのではないかと思われます。奇人変態勢揃い、読んで発狂しても知らないよー。

◆10位◆
『魔女は夜ささやく』 ロバート・R・マキャモン/文藝春秋(2003)
 ひさびさマキャモンというだけでベストテンに入れたということではありません。実力に裏打ちされた、一級のエンタテインメント。To be continued を示唆する終わり方も、ついつい期待しちゃいますね。

◆次点
『透明な対象』 ウラジーミル・ナボコフ/国書刊行会 (2002)
 軽々と書いているように見えて、緻密な構想に基づくエピソードと時制の配置にはゲーム好きの著者の趣味が現れています。しかも奇妙に美しいのだから困ったものだ。このボードでは物議をかもしたことてせも印象的だったりして。

◆番外
『トリストラム・シャンディ』 ロレンス・スターン/岩波文庫(1969)
 いくつか「古典」を読んだ中ではやはりこれを挙げておきたいつーことで、2003年の思い出のために。
『エドウィン・マルハウス』 スティーヴン・ミルハウザー/福武書店(1990)
 すみさんにえさんのお薦めと古本の神様のおかげでこの本に出会えたことを記念して。

6位以上の本はわたくしの分類で★4つ、まさに「体験」というにふさわしい読書時間をもたらしてくれました。全順位についてはリンクページに挙げております。
メンテ

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Re: 2003年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/01/05 02:24
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

うわ〜、『アウステルリッツ』が1位でしたか。もちろんベスト10にはお入れになられるだろうなと思ってましたが、1位とはまったく予測していませんでした。そうだったのか、そうなのですね(笑) でも、ホントに凄い本でしたよね。読んでいて鳥肌が立ちました。2位は『笑いと忘却の書』ですか、これは、まあ。ああ、でも、順位が何回見ても意外ですね。『調律師の恋』も5位とは意外だし。う〜ん、きりがない(笑)
そうそう、高さんと莫言さんについては、私たちも思いましたよ。どうなんでしょうね。ついでに勝手に評価させていただくと、二人の著作をあわせても『霊山』はとびぬけてて、それを除くと莫言さんのほうが上なんじゃないかなって気もしますよね、しません?
メンテ
Re: 2003年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2004/01/13 14:35
名前: おはな
参照: http://www.geocities.jp/hana3ana3

はい〜発狂本『眩暈』をおすすめしてしまった責任取りに来ました〜(笑)。
なるほど、中国に関して二大巨頭の読み比べをされているのは羨ましく、またどこでも逆風しか感じないナボコフ『透明』を次点とはいえ上げられているのが心強いです。
クンデラ第2位ですか。もうすぐ手足が震えて来ても知りませんですよー。
メンテ
Re: 2003年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2004/01/13 13:35
名前: らむず

『トリストラム』読みたいと思いつづけてるんです。え、絶版!?こういう古典を絶版にするのを禁止する法律でも作らなきゃいけません。でも岩波ならそのうち復刊してくれるかしら。
それにしても、あんなに大量の作品に全順位をつけられてるんですか?ひええ、すごい。
メンテ
Re: 2003年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2004/01/16 20:31
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp/

のんびりしていたらなんともはや1月も半ばではございませぬか〜。はやくも今年の前半ベストを考えている方もいたりして。

>すみさんにえさん
 やっぱり字面・紙面を超えてふわっと直接心に入ってくるような本には、まずお手上げですわい。『アウステルリッツ』はわたくしにとってそんな本でした。
『調律師の恋』はなんと言っても読んでいるときの酩酊感ですねー。ああ、ここはどこ、わたしはぴあの。おふたりはあまりお好きではないオンダーチェに感覚は近いかも。まあ、判断基準はそんなもんで感覚ばっかしなのですけど。
『霊山』もしっとりと迫ってきましたけど、順位としては鳴り物見世物の『白檀』が印象強烈な分、上になってしまいました。

>おはなさん
 おお、ともに連れだって鉄格子のはまった救急車で砂漠をドライブしようぜ〜。『眩暈』みたいなの、発掘して来たらあかんがなー。おかげで普通の本は刺激不足に見えるという後遺症が…。
 それにしてもクンデラ・ナボコフ・高行健と言った亡命者たちは、本人はたいへんな体験をされているのだろうけど、「残る」作品を書いてくれますね。

>らむずさん
『サマルカンド』のご紹介ありがとうございました。これは文庫に入っていてよかったけど『トリストラム』はなかなか復刊(というより再版になるのかな)してくれませんね。よろしければ、こちらに清き一票を。
http://www.fukkan.com/vote.php3?no=9154
 読んだ本の順位は、適当に点数付けて表計算ソフトでソートするだけですので、あれこれ迷わなければ簡単です〜。えーなんでこれがあれより上に来るんだコンピューターの馬鹿もんっと怒鳴っても言うことを聞かない場合は、ちょちょっと点数をいじればよろしいのです。つーわけで、ここ9年のランキングも下のようにすぐに出せたりするのでした。
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/guide/guide5.htm
メンテ

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