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2003年・H2の年間ベストほんやく本
日時: 2004/01/05 02:17
名前: H2
参照: http://www2.ocn.ne.jp/~h2tea/

小説だけではなくノンフィクションも入ってしまいました。「翻訳」ということで許して〜。1位はこれしかないので、どうしても外せなかったのです。
2位の本は、上半期は番外としていたのですが、やっぱりこの作品の凄さは並ではない(こんな作品は他にないだろうし)のでランクイン。2・3位は強烈な内容なので、万人向けではないと思います。読みたい方は各自の責任において読まれるように。決して私を責めないでください(笑)。
今年は大作といわれるような本を読んでおらず、マイナーな本を多く読んでいたため、ベスト入りするほどの本が少なく(それなりに良書もあったのですが)、下位が尻すぼみ状態になってしまいました。

■1位 『極北の夢』 バリー・ロペス (草思社)
北極圏の生態系に関するノンフィクションです。異文化を識ることによって、私たち自身の文化による尺度や行動原理を識ることができます。北極圏に興味がなくても、何かしら得られることがあるであろう名著。

■2位 『異端の鳥』 イエールジ・コジンスキー (角川文庫,絶版)
第二次大戦末期下の東欧で、迫害されながら各地を放浪する少年の物語。人間の暴力性と不条理を暴いたとても凄まじい内容です。なので万人向けではなく、読む人は覚悟が必要かと。

■3位 『白檀の刑』 莫言 (中央公論新社,上下巻)
ドイツ兵が押し寄せた清朝末期の山東省高密(こうみつ)県を舞台とし、白檀の刑という拷問が執行されるまでの物語。凄絶な内容ですが、憎悪も悲喜も昇華させたラストは圧巻。しかし、これも万人向けではないですねぇ。

■4位 『アウステルリッツ』 W・G・ゼーバルト (白水社)
幼少期の記憶がない建築史家・アウステルリッツは壮年になってから、自らの過去を求めて西欧諸国を彷徨う。多くの図版が挿入されているため、物語がよりリアルに感じられました。文体といい構成といい、こういう緻密な作風は好きなのです。

■5位 『ねじとねじ回し』 ヴィトルト・リプチンスキ (早川書房)
ノンフィクションです。20世紀最大の発明とされる工具とは?それが「ねじとねじ回し」なのです。その効用と発明された経過を歴史的に検証する、すこぶる刺激的な本。なあんだ「ねじとねじ回し」か、とバカにしちゃいけません。これがなければ産業革命もパソコンも出来なかったのですから。さて、ここでクイズです。グーテンベルクの印刷機の発想の元となった物とは何でしょうか?正解はこの本の中に。

■6位 『コーネルの箱』 チャールズ・シミック (文藝春秋)
夢見る者たちに仕掛けられたオブジェという罠。箱の芸術家ジョゼフ・コーネルの作品に、詩人のシミックが詩的な文章を添えたもの。一人でひっそりと愛でたい本。理屈を捨てて感じるままに眺めていると、コーネルの想念が視えてくるかも。

■7位 『霊玉伝』 バリー・ヒューガート (ハヤカワ文庫FT)
チャイニーズ・ファンタジィのシリーズ二作目。ハチャメチャなのだけれど、中国ぽく感じられるから不思議。謎解きと破天荒な面白さとエグさと清冽さが混在。今年三作目も出たのですが、二作目の方がキッチリまとまっており、ラストにカタルシスを味わえました。

■8位 『宮殿泥棒』 イーサン・ケイニン (文春文庫)
ごくごく真面目で平凡、だけど不器用な人々の人生に焦点を当てた短編集。彼らを温かく見守る作者の視点に好感が持てました。

■9位 『パロマー』 イタロ・カルヴィーノ (岩波文庫)
中年男性で妻子がおり資産家、美食家だが職業不詳。パロマー氏の職業は思索すること。パロマー氏は自らの眼で世界を読み直す、とでも言うのでしょうか。ときに失敗して笑えることをやってくれます。そして、既成概念にメスを入れてくれるのです。

■10位 『グリフィンの年』 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (創元推理文庫)
『ダークホルムの闇の君』シリーズ続編。説明過多だった前作に比べると、ぐんと読みやすくなり構成もスッキリ。各人の書き分けも巧いし、なによりエリダがかわいい。

[番外] 翻訳ではないのですが
『ラピスラズリ』 山尾悠子 (国書刊行会)
絵画冬眠者、人形、ゴースト、トビアス、フランチェスコを巡る時空を超えた物語。この作品に理屈をつけるのは野暮というもの。イメージを味わう作品だと思います。
メンテ

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Re: 2003年・H2の年間ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2004/01/01 22:55
名前:

うわーっ『異端の鳥』が2位にっ。番外からの返り咲きですね!なんだか嬉しいなあというかちょっぴり怖い(笑)
そうそう『アウステルリッツ』は「緻密」ですよね、H2さんのコメントでしっくりきました。
そして何よりやっぱり今年は『ラピスラズリ』ですよねーーっ。見よ番外でもこの存在感!(笑)
メンテ
Re: 2003年・H2の年間ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2004/01/02 03:42
名前: もぐら
参照: http://www.valley.ne.jp/~maulwurf/

『パロマー』しか読んでません...面白かったですよね。愛すべきパロマー氏の振り回すメスが、めちゃくちゃなようで、それでいて結構ビシビシと決まっていくの。
メンテ
Re: 2003年・H2の年間ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2004/01/05 02:17
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

あ、べつに小説じゃなくていいですよ。私たちが小説外のものをほとんど読まないってだけで「ほんやく本のススメ」ですから(笑)
やっぱりバリー・ロペスが1位ですか。こういう自分にとって特別な方に出会えると、本当に読書をしててよかったと思いますよね。『異端の鳥』が2位か〜。逃げちゃった私たちは、うーんとしかコメントが(笑)
メンテ
Re: 2003年・H2の年間ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2004/01/11 22:26
名前: H2
参照: http://www2.ocn.ne.jp/~h2tea/

>雫さん
『異端の鳥』はですね、このような話は他にないだろうし、これからもこのような本は書かれないだろうということと、インパクトが凄かったので、上半期の番外から返り咲いたのです。
個人的には『コーネルの箱』と『ラピスラズリ』がツボでした!

>もぐらさん
『パロマー』はもぐらさんのように読み込んではいないのですが、面白かったです。いつか再読したい本なのです。

>すみ&にえさん
『極北の夢』はヘタな比較文化論の本を読むより、ずっと考えさせられる本でしたよ。質量ともにボリュームがあるので、読むのにかなり時間がかかりました。
『異端の鳥』は心理的にかなりしんどい内容なので、人様には無理にすすめられません。マジでキツーイ話なんですよ。
メンテ

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