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坤の2007年ベストほんやく本
日時: 2008/01/07 20:05
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp/

すみさんにえさん、お集まりの皆様、あけましておめでとうございます。すっかり宴会オンリーメンバーとなってしまった坤でございます。昨年読了数は68篇ですが、ベストを絞ってみるとやはり新刊がけっこう入っているのが不思議だったりして。

◇1 位 
『ベルリン1945』クラウス・コルドン 理論社
 敗戦から焼け跡闇市に向かったのは日本でも同じことだけど、「武運つたなく」という感傷(あるいは言い訳)がついに拭えなかった日本に比べると、子供ですらも自責や政治とは無縁ではいられないドイツの事情が浮き彫りにされます。常に少年少女の視点を維持して時代を捉える三部作構想も見事。
◇2位  
『選ばれた女』アルベール・コーエン 国書刊行会
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/seigneur.htm
 こりゃー変○本好きには見逃せませんぜー。いや、特定の方に言ってるわけじゃありませんけど。
◇3 位
『砂時計』ダニロ・キシュ 松籟社
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/sablier2.htm
 常に東西から大国の圧迫を受け続けた東欧の人々が不屈だったのは、この「したたかな笑い」があったからなのか。まったく見習うべきところですね。
◇4 位
『失われた時を求めて (1-13)』マルセル・プルースト 集英社ヘリテージ文庫
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/proust.htm
 こりゃもう、一昨年来読んでる間は酩酊感の日々でした。それにしても老人ホームに入所後読む本を探し直さなくっちゃ。
◇4 位
『ガラスの宮殿』アミタヴ・ゴーシュ 新潮社(クレストブックス)
 おっ、今年も少なくとも一冊はお二人とカブってめでたいことでおます。家族史で語る年代記という手法は名作が多くて本書はその点やや散漫な印象もありましたけど、なにしろ印緬関係史というのは実にユニークな着眼点で、登場する人々の運命もさることながら、現代ビルマの抱える事情まで勉強できるというのは二度おいしいところですね。
◇6位
『土星の環 イギリス行脚』W・G・ゼーバルト 白水社
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/saturn.htm
 すべての、この世に受け入れらなかった人々、遅れてやってきた人々、生きづらさを感じている人々に。
◇6 位
『ナボコフ短篇全集(T・U)』ウラジーミル・ナボコフ 作品社
 こうなると著者の生涯をたどるようなものでベスト企画向きの本ではないのだけど、小説化としてのナボコフの、一切手抜き無しで、しかも生活が苦しくとも知的な遊びを忘れないという姿がたいしたもんです。
◇8 位 『ブーヴィエの世界』ニコラ・ブーヴィエ みすず書房
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/bouvier.htm
 若者たちが自由に世界を旅できるようになれば、世の中はもっと平和になるのに。ん、逆かな。本来平和と自由はかくのごとく「ある」べきなのか。
◇8位
『昨日の世界(T・U)』シュテファン・ツヴァイク みすず書房
 これも上と同様ノンフィクションですが、楽観性のかけらもすでにありません。その悲痛さが、今のヨーロッパの良心を支えているようです。
◇8 位
『秘められた人間』アンドレイ・プラトーノフ 中央公論社(新集世界の文学)
 1928年、この作品ですでに革命の退廃を予見していたプラトーノフは、やがて発表の場を奪われて行きます。それでもまだ底には庶民のユーモアが流れていますけど、政治の退廃に直面している現代のわれわれには、果たしてそれだけの余裕があるのかどうか。
◇8 位
『不安の書』フェルナンド・ペソア 新思索社
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv07/desasso.htm
 まとまりのない断章がどうして印象に残るのか、不安をかき立てられているのは読者のほうなのかも…。

 つーことで、なんのかんの言いながらも今年も結局本なしでは暮らせないのはお互い様でして、わたくしのほうはどんどん適当になって行きますけど、なにとぞ新刊ご紹介など、引き続きよろしくお願いいたします〜。
メンテ

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Re: 坤の2007年ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2008/01/08 14:45
名前: おはな

お〜小説じゃないブーヴィエランクイン!嬉しいです〜。ナボ短篇全集も入っているじゃないですかっ。
私的にはYA括りの「ベルリン…」がトップに来てやられました。普段からこのジャンルは避けがちなのに珍しく読んだんですよ、別のを。くすん、ベルリンにすればよかったです‥。
変○おすすめの『選ばれた女』、そんなお誘いに引っかかりたくはないけど、本屋のマイリストにずっと入れっぱなしです。できることなら借り物で済ませたいけど、分厚いしなぁ、考えちゃうなぁ。えっ読むつもりになっている‥?(笑)。
メンテ
Re: 坤の2007年ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2008/01/09 21:33
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

坤さん、ご参加ありがとうございます♪

おおっ、ベルリン三部作の「1945」が1位ですか。私たちはまだ一冊。もちろん、他の2冊も読みますとも。こういう本ってホントに読む価値ありって気がしますよね。「ガラスの宮殿」もまたそういう点では共通するかも。たしかにご指摘のところはちょっとでしたが、それをはるかに上まわるものがありましたよね。
「選ばれた女」は擦れ違いの連続で、読み損ねてしまったんですよね。そうか〜、あの変態本好きの方に勧めたくなるほどの出来栄えですか。これはやっぱり読まねばですねえ。最後にフェルナンド・ペソアが入っているところがいいなあ。私たちもそういうまとめ方がしたかった(笑)
メンテ
Re: 坤の2007年ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2008/01/10 03:07
名前: ブー介

ベルリン〜はちょっとまだ踏ん切りつかないんですけれども、ツヴァイクとプラトーノフのはぜひとも読んでみたいです。ヨーロッパの良心……気になる。
選ばれた〜、砂時計、不安〜は他人にはおススメしづらいけど、それぞれ味のある作品でしたよね。みんな好きです。
メンテ
Re: 坤の2007年ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2008/01/10 21:37
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp/

>おはなさん、こんばんは〜。
ブーヴィエの行動には何か潔さを感じますね。その点チャトウィンは行動を通じて考えようとしているつーか、ある意味俗気を残しているというか、西洋的。ブーちゃんは芭蕉に通じるような気がします。
「ベルリン…」はねえ、ここまで自分の生きている「国」と正対するということがなかなかできないだろうと思います。
「鰓腫れ女」は選ばれたら災難の典型みたいなものですけど、万一選ばれちまったときの心構えとしてはいいかも知れませんぜ〜。

>すみさんにえさん、今回もおじゃま様です〜の永久幹事ご苦労様です〜のまた6月もよろしく〜というのは気が早すぎるか。
「ガラスの宮殿」は三部作くらいにして、それぞれの世代のイベントを区切ったらもっと締まったのではないかという感じもしましたけど、象使いからアウンサン将軍(スーチーさんの父)などの動向も描かれて、各時代ともよく網羅して書いたものだと感心しましたね。実はゴーシュの前作はそれほど評価してなかったのだけど、力のある作家だったわけですなー。もっともペソアみたいにまとまりも何もはじめからなくとも、妙に訴える作品もあったりするわけで、まったく本の世界は不思議です

>ブー介さん、こんばんは〜。
『昨日の世界』は亡命者ツヴァイクの白鳥の歌というところでしょう。彼は没落するヨーロッパと心中するつもりだったのかも。ロートとはまた違った立場で観察している、というより、ロートについてはまったく言及していないところがもしかするとプライドなのかなーと思えたりもして。
 プラトーノフは岩波文庫の「作品集」が入手しやすいと思います。百均ででも、中公版の古い全集本が見つけられればいいのですけど。
メンテ

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