チンタローの2007年ベストほんやく本 |
- 日時: 2008/01/05 18:55
- 名前: チンタロー
- 2006年ベストには参加しませんでした。読んだ翻訳小説の数が少なかったせいと河出書房から中々「アレキサンドリア四重奏」が出ないことに痺れを切らして、図書館で借り出して読んでいたのですが、4冊をどのように扱ってよいやらわかりませんでしたので(4冊別々に評価すべきか、やっぱり4冊まとめて1作品と考えるべきか、で)。今年は、そこそこに読んでますし、かなりいい作品にも出会えたので、参加します。以下、順不同で。
★「キリストはエボリに止りぬ」カルロ・レーヴィ 原作は1945年出版、翻訳は1953年の古い本です。図書館の書庫から借り出して読みました。第2次大戦前、ファシズム期のイタリアで流刑にされた作者の体験に基づく体験談のような、小説というよりはお話ですが、南イタリアの経済的には貧しいながらも精神的には豊かな神話的世界も語られるところなど、パヴェーゼやヴィットリーニとはまた違うイタリア作家の魅力を感じた本です。
★「香水」パトリック・ジュースキント 本書を読んだ後に映画もDVDを借りてきて見ました。映像で臭いをどのように表現するのか興味がありましたが、結構うまく映像化していたように思います。小説はこんなアイデアをどうやって考え出したのかと思うような奇想天外なお話で、面白く読み終えました。
★「驚異の発明家の形見函」アレン・カーズワイル 単行本では値段が高く、また大判の本なので持ち歩くにも不便なので、敬遠していました。文庫本化されたのを機に購入して読みましたが、すっきり楽しめました。この作品とペアをなす、「形見函と王妃の時計」も早く文庫本化されないかと楽しみです。この本の解説を書いているのが若島正さんなのですが、この方のお陰で次のロリータへと導かれていったような次第です。
★「ロリータ」ウラジミール・ナボコフ 30年ぶりのロリータ!しかも、若島正さんの新訳ロリータ!こんなに楽しめる作品だなんて知りませんでした。いかに巧妙な仕掛けが施されているのかは、読了後に読んだ若島正さんの書いた「ロリータ、ロリータ」で十二分に思い知らされました。ナボコフはハマルと大変そうですね。お金もかかりそうだし。原書で読んだ方が安上がりかも?でも時間はかかるなぁ。
★「荊の城」サラ・ウォーターズ 残念ながら私は「夜愁」が未読なので、今年読んだこちらの作品となりました。「半身」でも騙しのテクニックに唸らされましたが、こちらもやられた!と思いました。作品の長さを感じさせることのない展開ですっかり堪能しました。DVDに英国でドラマ化されたものがあるようですが、どんな仕上がりなのか興味津々です。すみ&にえさん絶賛の「夜愁」も楽しみにしています。
★「ガラスの城」アミタブ・ゴーシュ 私の今年のナンバー1は文句なしにこの作品です。歴史の流れと家族の人生模様をビルマの悲劇を背景にしながら描ききった、たっぷりの中味に満腹感で一杯です。複数のプロットを同時進行させる構成上、場面の切り替わりが早くて、フォーサイスのスパイスリラーみたいな感覚を感じたときもありましたが、作品に没入するに従い、それも気にならなくなりました。すみ&にえさんのベストのラインナップと作品評を見て、やっぱり「ラナーク」よりこちらを選んでよかったかな、と思いました。
|
|