2003年上半期・アッシュのベストほんやく本 |
- 日時: 2003/07/29 19:48
- 名前: アッシュ
- グリシャム「処刑室」(新潮文庫)
皆さんの投稿を拝見していると純文学系が多いのでためらいましたが、これはそんな区分など超越している作品なので、思い切って投稿いたします。
グリシャムといえばリーガルサスペンスの名手であり、スートーリー展開の速さが持ち味です。 ですが、これは他の作品とは異質で、グリシャムが新しい局面を開き、初めて書いた本格社会派小説です。グリシャムファンの人でも題名から敬遠する人がいるようですが、残念です。
この本は死刑制度を扱いながら、アメリカ南部の重厚な歴史を背景にしていて、それだけでも圧倒されました。圧倒されてしばらく立ち上がれなかったほどです。アメリカの批評家でこの小説を高く評価する人が多いのも無理ありません。わたしがこれまで不覚にも泣かされた小説は決して多くありませんが、これはその記念すべき1冊です。
また、アメリカといえばニューヨークか西海岸しか思い浮かばない日本人にとっては、もうひとつの見えなかったアメリカを見せてくれる小説でもあります。グリシャムはストーリーテリングの名手ですから、その才能も十分に発揮されていて、わたしは上下2冊をノンストップで一気に読み切りました。
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