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2006年上半期・ぱらんのベストほんやく本
日時: 2006/07/20 17:26
名前: ぱらん

投稿しようかずいぶん迷いましたが、せっかくのチャンスだとばかり初参加させていただきます。ほかの皆様とはちょっと傾向が違うかもしれませんが、どうぞご容赦を。

☆第1位 『1941年。パリの尋ね人』(パトリック・モディアノ)
モディアノはフランスではかなり年季の入った人気作家らしいですが、私は偶然手に取ったこの一冊で心臓を撃ちぬかれました。静かな筆致にもかかわらず、そこに描かれる世界はとても重くこの世に人間が存在した証って何?と自問してしまいました。ナチス支配下のフランスで失踪した一人のユダヤ人少女を資料から追跡したドキュメンタリー小説です。

☆第2位 『あなたに不利な証拠として』(ローリー・リン・ドラモンド)
書評でもよく取り上げられている一冊です。パトロール警官という良くも悪くも一般人には誤解されやすい職業に女性として従事した人たちの生の声が鋭く迫ってきて、彼女たちの体臭や傷の痛みさえも実感できそうな秀作だと思います。ちなみに私が最も心惹かれたのは、1〜3話の主人公キャサリンです。

☆第3位 『結婚のアマチュア』(アン・タイラー)
去年のベスト翻訳本で絶賛されていた作品で、今さらと気も引けるのですが、私にとっては、すみ&にえさんのHPで興味を引かれ読んでみて、お二人の感覚とかなり近いものを感じたのでとてもうれしくなった作品でもあります。読書しててよかった、と思うのはこういう本に出会ったときだなぁとつくづく感じました。

☆第4位 『聖書の絵師』(ブレンダ・リックマン・ヴァントリーズ)
これはもう私の宣伝から火がついたような作品なんでね、なんて一人で悦に入ってますが、久しぶりにいい歴史小説を読ませてもらったなぁという一作でした。エンタメやロマンス一辺倒に流れず、中世という時代をよく描いていたと思います。

☆第5位 『破局』(ダフネ・デュ・モーリア)
「レベッカ」で言わずと知れたゴシック小説の女王の幻の復刊。40年前の刊行時はもっと斬新な感じで迎えられたのではと、当時の書評も気になります。デュ・モーリアの作品で現在読めるものは全て読んだけど過去の作品をもっと紹介、復刊してほしい作家です。

☆第6位 『天使の鬱屈』(アンドリュー・テイラー)
ミステリーですが、歴史小説的な味わいも楽しめる一冊で二度おいしい作品。もどかしい過去を資料と数少ない生き証人から明らかにしようとする過程が楽しめました。一見ヒロインと思われる女性はただの狂言回しで、人生も残り少なくなってから若き日に知った事実と事件を哀しみとともに回想するという凝ったストーリーも歴史小説好きには堪りません。

☆第7位 『青チョークの男』(フレッド・ヴァルガス)
シリーズものですが、主人公の署長が見せるいくつもの顔がとても魅力的。この作家も考古学者だそうで登場人物設定が、調査や発掘のために世界を飛び回る学者であるなどやっぱり歴史もの好きの私には堪らないですね。もっともストーリーや謎とき自体には歴史はほとんど関係なく、もっぱら人物造形に一役買っているような感じ。そういう学識豊かな人物に囲まれた署長はといえば、考えなければと思うほど何も考えられなくなるという、いわば直感タイプです。このへんの対比もなかなかおしゃれでした。

☆第8位 『燃える家』(アン・ビーティ)
これも偶然見つけた作品で、今年はこういう偶然からでた当たりというのが多く、収穫の多い半年でした。この本、文庫でなく単行本で出版されてたらもっと評判になってたのでは?とちょっと惜しい作品。ニューヨーカーから絶賛されてたようで20年以上も前の作品なのに今読んでも孤独なインテリ都会住まいの不安やじれったさがよく感じられます。

☆第9位 『地上のヴィーナス』(サラ・デュナント)
「聖書の絵師」に先立って読んでみたけど、結構遜色なく読めました。作家はイタリア大好き人間みたいでロンドンとフィレンツェとを半々で住み分けてる方のようで、フィレンツェに対する並々ならない思い入れを強く感じました。

☆第10位 『クラカトアの大噴火』(サイモン・ウィンチェスター)
ちょっと毛色の違う作品ですが、最近何かと不気味な動きを見せているインドネシアの火山の130年前の恐ろしい大噴火を科学的というより一般人にもわかりやすく書いたドキュメンタリー読み物という体裁になっています。問題の火山はジャワ島とスマトラ島の間にある火山島で、そのときの大噴火でほぼ消滅したのですがなんと21世紀の今日噴火当時とほぼ同じくらいの大きさに復活してるというではありませんか。作者は最終章でその復活した火山島に上陸していますが、なんととかげも生息しておりその活動の早さと規模には驚かされます。近いうちに噴火すると以前の被害を上回るのではという問いが決して絵空事ではないと思わせる恐ろしい一冊です。
メンテ

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Re: 2006年上半期・ぱらんのベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2006/07/21 01:56
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

ぱらんさん、ご参加ありがとうございます♪
おおっ、1位はモディアノですか。私たちは「さびしい宝石」と「暗いブティック通り」を読んで、う〜んって感じだったんで、それっきりだったんですが、 『1941年。パリの尋ね人』は良さそうですね。これが一番評判良さそうだなとは思っていたんですよ、やっぱりこれから読むんだった。
『結婚のアマチュア』はコメントまでうれしいっ。よかったですよね〜。これにはホントやられました。で、その次の『聖書の絵師』については、こちらが感謝です〜。ばらんさんがいなかったら、見逃すところだった。
メンテ
Re: 2006年上半期・ぱらんのベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2006/07/22 01:55
名前: ぱらん

すみ&にえさん
モディアノについては、「さびしい宝石」も読んだんですが、主人公が彷徨ってるのは同じなんですが、「尋ね人」のほうが実体は捉えられないながらもしっかり刻印された手形のようなものを感じます。「ブティック通り」に関しては帯に「冬ソナの原型がここにあった」みたいなことを書いてあったので「あ〜、この売り方じゃあかん」と早々に諦めてしまいましたね。
メンテ

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