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2006年上半期・ブー介のベストほんやく本
日時: 2006/07/06 11:59
名前: ブー介

こちらへの参加は初めてになります。よろしくお願いいたします。
さて、この上半期の読書は経済力の減少とともに、積読本の消化に努めました。そのため、いままで遠ざけていた古典を中心に読みました。新刊はほとんど読んでません。ですので、空気も時代も読めないセレクトになってしまうかと思います。
また、小説に限らず、あらゆるジャンルの本を半年で150冊前後は読んだと思うのですが、いかんせん今年になって読んだのか覚えてないものも多々あり、不正確なものもあるかもしれません。
と、言い訳はここまでにして、お付き合い&共感いただけたら幸いです。


1 『イラクサ』アリス・マンロー

言い訳しながらも最初に新刊をもってきました(笑)
比較的読んだ時期が最近ということもありますが、今年読んだ本で、未だぼくの中でくすぶっている2冊のうちの1冊です。
安っぽくなるのと感動を呼び起こすのは紙一重だと思います。そのバランスが上手いのは現代イギリス作家だと思うのです。マクラウドやマンローを読むと、イギリス作家たちよりも安っぽくなる危険ゾーンにさらに突っ込み、限りなくぎりぎりのラインでふっと引くのがカナダ作家なのかな、という印象を受けます。
そのせいで、少々物語から臭さを感じることもあり、インテリジェンスとは思えません。ですが、知的な作家がしばしばするように小説を弄ぶことをせず、誠実に小説と向き合い、切実に「生きる」ということを訴えてきます。それがいいんじゃないでしょうか。
また、注目すべきなのは比喩表現で、この小説を読んでいると、ところどころ立ち止まらざるを得ない文章に出会いました。マンローのそれは、同じプロ作家のなかでも群を抜いています。さりげないけれども、その場面にぴったりと合い、印象に残る表現を散見します。
なんとなく読んでいると、とらえどころなく終わってしまう小説だと思いますが、腰を据えてじっくりと読めば、多くのことが読み取れるのではないでしょうか。


2 『悪童日記』アゴタ・クリストフ

数年前に、『昨日』を英訳で読んで、この人はもういいや、と投げていました。
それで読まないはずだったのですが、とにかく評判がいいのが本書。これが最後のつもりで手にとってみると、おもしろいじゃないですか。
これについては他のところでいろいろ言われているし、とにかくすばらしいの一言です。


3 『シンドラーズ・リスト』T・キニーリー

映画の原作になったノンフィクションノベルです。
映画では、最後のシーン、あのユダヤ人たちが行列をなして歩いていく場面で、ぼくは反吐が出そうになりました。所詮はスピルバーグ、こんなやつにヒューマン・ドラマは撮れないな、と多感な十代に思ったものです。それ以来シンドラーズ・リストにはいい思い出がありませんでした。
しかし、これを読み、印象は一変しました。
本のほとんどは、やや人間離れし、神話化してしまったシンドラー自身や業績、それに彼を取り巻く周囲について書いてあります。それもそれでおもしろいのですが、本当によかったのは、第二次世界大戦後です。
シンドラーのピークはどうみても、戦時中で、それ以後は下り坂の一方なのです。そして孤独に死んでいき、本は一気にブンガクへと変貌をとげるのです(笑)
と、そんな皮肉な見方をする自分が嫌になりますけど、感動して涙を流したのは素直な気持ちです。


4 『ジェイン・エア』シャーロット・ブロンテ
5 『オリバー・ツイスト』チャールズ・ディケンズ

エンタメ的な楽しみはどちらも変わりません。どちらもタイトルが主人公の名前ですし、貧乏だったと思っていた両者が見知らぬ親戚から遺産を引き継ぎ、あらまと金持ちになるというパターンも一緒ですし(笑)
ただ、決定的に違うのは、オリバーが本人の謙虚さや才覚のおかげがあるとしても、美しさという生まれつきの才能もあって周りの人間に助けられ、よくも悪くも周囲に流されているのに対し、ジェインは容貌も、醜いとまではいえませんがよくもなく、ごくごく平凡でありながら、自分の才覚によって自ら道を切り拓くところにあります。
同じように才能のある女を描いた『エマ』は、ちょっとおつむが足りなく、男の選択で結婚という枠組みに収まってしまうのに対し、ジェインは自ら選択をします。ですが、そうした選択ができるのも彼女に見知らぬ親戚から遺産が入ったからであり、ただ単にヒーローは特別な生まれであり、特別な血がはいってなければならないという理由から貴族の血縁であると発覚したオリバーとは違って、逆説的に皮肉な結果となっています。
そうしたエンタメにおさまらない部分を描き出したブロンテに賞杯をあげました。
ああ、あとディケンズは読むたびに思うのですが、絶望的に訳文が悪いです。


6 『マザーレス・ブルックリン』ジョナサン・レセム

分厚いし、ミステリだし、と手が遠のき、積んではや4年、ついに読みました。
おもしろかった。もっと早く読んでおけばよかった、と思える1冊でした。
一応体裁はミステリですが、青春小説としての純度のほうが高いような気がします。


7 『青白い炎』ウラジーミル・ナボコフ

読みながらも読み終わってもわけわかめでした。でもなんか、すげえ。
もっとエネルギーのあるときに、きちんと集中して再読したいと思ってます。
すげえ。


8 『抱擁』A・バイアット

たぶん今年読んだんだよなー(汗)
あんま自信がありません。
ちょっと長過ぎて、正直、うへ、と思ったところもありますが、十分エンタメもしてたし、アイディア、筆力ともに申し分なかったです。
ただ、ところどころ、現代から過去に視点が移ってしまったことがご都合主義に感じられ、、とたんに嘘くさく思え、冷めてしまいました。
現代のままのテンションを維持できていたら、もっと評価は上がっていたと思います。


9 『ダスクランド』J・M・クッツェー

クッツェーファンでありながら、今年になってやっとデビュー作を読みました。
もっと上位でもよかったです。そのくらい衝撃を受けました。
ほんとこの人は相性がいいのか、何読んでもおもしろいです。



番外 『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

この作品が、今年読んでまだくすぶっている2冊のうちの、もう1冊です。
『イラクサ』と違い、こっちのくすぶり方は、作品を理解できていない苛立ちからくるくすぶりでもあります。
まだ、ぼくのなかで評価が定まっていないし、こんな状態で順位をつけるのは、この小説に対して誠実ではないな、と思うので、番外に置きました。


と、長々と書いてしまいましたが、お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
メンテ

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Re: 2006年上半期・ブー介の ( No.1 )
日時: 2006/07/06 22:12
名前: おはな

ブー介さんこんにちわ。
ナボファンとしてはこちらにも『青白』がかかっているのが見すごせなくて(笑)。
すげえ、要再読、すげえ、ですか。ご賛同申し上げます。
メンテ
Re: 2006年上半期・ブー介のベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2006/07/06 23:58
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

ブー介さん、ご参加ありがとうございます♪
ひぇ〜っ、半年で150冊前後ですか。凄すぎっっ。そりゃ把握しきれなくもなりますよね。
そんな超読書家のブー介さんが翻訳本のなかでベスト1に選んだのが、『イラクサ』なのですね。さすが、この本の良いところを語り尽くしておられる。ホントにそうですよね、誠実に向き合う姿勢、読み方によってはとらえどころなく終わってしまうようで、じつはものすごく多く含まれているところ……やっぱりカナダの作家は良いですよね。
『シンドラーズ・リスト』はブッカー賞受賞作品だからいつかはと思っているんですが、なんか映画(観てない)で引っかかっちゃって、まだなんですよ。やっぱり良いのか〜。読まなくちゃですぅ。
メンテ
Re: 2006年上半期・ブー介のベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2006/07/07 02:55
名前: ブー介

おはなさん

こんにちは。レスありがとうございます。
ほんと、すげえ、の一言ですよね。
ぼくなんかだと、「なんだかよくわからないけどとりあえず」すげえと思うわけなのですが(笑)
もっと理解できるようになりたいです。
ナボ作品はこれとロリータしか読んでないので、他にもこんなのがあるのかと思うと楽しみで仕方ありません。
ただ、どうしても現代哲学書を1冊読みとおすくらいの気力とエネルギーがいりそうなので、なかなか手はつけられないかもしれませんが、それでも年に1,2冊は読んでいきたいです。
今日はナボの日とか勝手に決めて、毎年その日には必ずナボを読むとかするといいかもしれませんね(笑)
メンテ
Re: 2006年上半期・ブー介のベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2006/07/07 03:07
名前: ブー介

すみさん、にえさん

いえ、150冊とかいってますが、むしろそれだけの本を読む暇があることが恥ずかしいです(笑)
もっと有効なことに時間をつかえたんじゃないかなとか思ったりします。

その、『イラクサ』は、派手な展開があるわけでもなく、うおおおおお、おもしれえええええ、というタイプの小説でもなく、ぐずっ、これなんてかわいそうな小説なのかしら、なんてものでもない、地味ーな小説なので、むしろ評価してあげたいな、と思いました(笑)

『シンドラーズ・リスト』はおもしろいです。結構ページ数があるのですが、伝記ものなので、文学作品的な理解の困難さは皆無です。簡単に読み進められるので、気軽に手をつけられると思います。

あとメイン掲示板でのことですが、お気をつかわせてしまって申し訳ありません。
10位に書いておいたのは、どうせ小説ではなく、『ブッカー・リーダー』でしたし、下書きも消してしまったので、このままの形でお願いします。
それに、だらだらと長く書いてしまったのが悪いんですし(笑)
でも、こんな風に好きな本について語られる機会ってなかなかないので、ついついこういうときに長く書いてしまいます。
むしろ、こういう場を提供してくださっているお二方には感謝しております。
メンテ
Re: 2006年上半期・ブー介のベストほんやく本 ( No.5 )
日時: 2006/07/10 22:46
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv04/paleflam.htm

ブー介さん、こんばんは。
おお、積読山崩し仲間がっ。しかしわたくしのほうは読書ペースがた落ちですけど、着々と掘り進んでおられるようで羨ましい。
アゴタ・クリストフのこの三部作は、やはり訳文のテンポがいいのでしょうか。それよりやはり問題は『青白い炎』ですかねー。ナボ様あんたには勝てませんってところです。
メンテ
Re: 2006年上半期・ブー介のベストほんやく本 ( No.6 )
日時: 2006/07/11 22:33
名前: ブー介

こんばんは。

いえ、ほんと大学半分休学状態で、すごいヒマなんです。それで本を読むくらいしか(笑)
クリストフはたぶん原文がとてもシンプルなんでしょうね。英文で読んだときもすごく簡単な英語でした。それで、『悪童日記』は過剰な表現を徹底して削っているから、訳文になってもテンポの良さが活きてるんじゃないかな、と勝手に思います。

ナボ様は勝てないです(笑)
でも、一撃くらいはくわえたいです。
メンテ

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