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2005年・坤の年間ベストほんやく本
日時: 2006/01/02 21:04
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp

ではでは新年恒例行事、前年度マイベストの発表でございます。2005年に読んだ本は110編ですが、上位はほとんど翻訳本という結果になっております。

1.『肉桂色の店』ブルーノ・シュルツ
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/synamon.htm
 訳者の手によってポーランド・日本両言語の持つ機能がフルに発揮された一冊とでも申しましょうか、紙面に豊饒な想像世界が展開し、未だ見ぬドロホビチの街と少年の憧れる若い家政婦を眼前に彷彿とさせます。「ほんやく本」としては、ある意味極限の出来映えと言えるでしょう。昨年めでたく平凡社殿の手によって復刊成ったことも記念して、文句なしのトップです。

2.『移民たち 四つの長い物語』W・G・ゼーバルト
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/imintati.htm
2003年『アウステルリッツ』でわれわれに衝撃を与えたゼーバルトは、やはりただ者ではありませんでした。この作品においても人間の持つ「哀しさ」、その本質に独特の手法で迫ります。

3.『砂時計(クレプスィドラ)サナトリウム』ブルーノ・シュルツ
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/klepsydr.htm
 同著者『肉桂色の店』との合わせ技ということにしてもよいのですけど、やはり「春」や表題作「砂時計(クレプスィドラ)サナトリウム」の持つ現代幻想小説にも通じる世界はやや異質であるということでこの位置に独立して推薦します。

4.『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/kanatana.htm
 この作品はすでに古典的な風格さえ感じさせますね。ともすれば「民族に対する誇り」を誤解しかねないわれわれに対する大人の意見という感触すらあります。昨年読まれた方のほとんどが上位に推されているのではないかなー。

5.『周期律 ―元素追想』プリーモ・レーヴィ
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/sistema.htm
 これはやはりもっと早く読むべきだったかという一冊ですね。昔は洋の東西を問わず科学少年っていたんですよね。ただ、彼の場合は順調な人生とは行かなかった。それも最後まで…。

5.『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/lolita.htm
 もちろん若島正氏による新訳「ロリータ」のことです。時代は1950年代だったはずなのですが、現代少女コトバのロリータは意外と違和感を感じさせません。それだけ普遍的な「名作」だったということでしょう。

7.『ラデツキー行進曲』ヨーゼフ・ロート
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/radetzky.htm
 ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートなど聴きながら繙くには最適の一冊、と言いたいけど、華やかさというよりは、父子の三代物語によってひとつの時代・ひとつの国を哀切とともに描き出します。

7.『わたしの名は紅』オルハン・パムク
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/watasaka.htm
 うにゅ〜オルハンさんノーベル賞取れんかったにゃごっ。というような俗事はともかく、このエキゾチズム、細密画世界は「ほんやく本」ならではの味わいですね。

7.『いいなづけ 17世紀ミラーノの物語』アレッサンドロ・マンゾーニ
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/promessi.htm
 波瀾万丈にして登場人物もみな一癖ふた癖、十分堪能というかとにかく読ませてくれる「物語」ですね。やっぱり19世紀は「物語小説の世紀」ということなのでしょう。

10.『幼なごころ』ヴァレリー・ラルボー
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/enfant.htm
 中勘助に通じる世界ではありますが、やはり異文化の香りただよう一冊。この世に本当に守るに値するものがあるとしたら、それはやはり幼い者たちなのだ。

次点としては次の5冊。ベストテン入りは逃したもののいずれも印象深い作品です。
11.『ブライヅヘッドふたたび』イーヴリン・ウォー
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/bridhead.htm
11.『グールド魚類画帖』リチャード・フラナガン
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/gould.htm
11.『ミゲル・ストリート』V.S.ナイポール
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/miguel.htm
11.『星と呼ばれた少年』ロディ・ドイル
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/henry.htm
11.『カレーソーセージをめぐるレーナの物語』ウーヴェ・ティム
http://yonosk.at.infoseek.co.jp/rv05/curywurs.htm

さて、今年もたくさん良い本に巡り会えますように。
メンテ

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Re: 2005年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2006/01/02 21:45
名前: けーはい

こちらではシュルツがマクラウドに勝っている・・♪
まああのレベルになるともはや、カフカとトルストイどっちが上?みたいなもんなのでしょうな。
ちゃっかり「砂時計」より上にいるぜーバルトも
読まず嫌いせずにチェックしてみます。
表紙がダサいから敬遠、という安易な逃げを打っておりましたので^^
しかしまあ、シュルツ文庫化した平凡社さんは神ですね・・とはいえ友人にシュルツ勧めたところ、2000円?ハッ
見たいな感じで鼻に笑われてしまいましたが。泣
メンテ
Re: 2005年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.2 )
日時: 2006/01/02 23:23
名前: おはな
参照: http://www.geocities.jp/hana3baba3

坤さん明けましておめでとうございます。
そーですかシュルツ丸ごと入れちゃいましたか。私も先に平凡社のを読んでいれば多分恐らく、と思われますが、恒文社抄訳で行ってしまったし。まぁ今年仕切り直しをするのです。しかしその類の悲しい作者及び人々の物語がど〜んと上位を占めましたね。そんな中にぽっかり浮かび上がるロクデナシハンバート‥。
何というか、体重300キロ超のベスト本という感じ。ヘビー坤。
メンテ
Re: 2005年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2006/01/04 21:56
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp

けーはいさん、こんばんは。昨年は古典板でのけーはいさんの強力なプッシュもあって、ほんのわずかこの周辺だけではありますけどシュルツ・ブームが起きてご同慶の至りでございました。それにしても平凡社さんはご英断でした。あんまりマスコミには取り上げられなかったけど、朝日新聞の書評欄にはほんの10行ほどでしたけど取り上げられてましたね。

おはなさん、こんばんは〜。お餅の食べ過ぎで300kgとなってしまった坤でございます。ナボ様はやはり別格という感じですからねー。あの知的装飾を取り払った先というのはたぶんかなり孤独なのでしょうけど、まーわれわれにゃ絶対と言っていいくらいたどり着けないでしょうねー。
 シュルツ、ゼーバルト、ロート、というあたりは、ガリツィアとかチロルとか、田舎っぽいところでたぶん共鳴しあうところがありますよね。マゾッホとかカフカも混ぜてくれいと出てきたりして。
メンテ
Re: 2005年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.4 )
日時: 2006/01/04 22:16
名前: すみ&にえ
参照: http://park8.wakwak.com/~w22/

坤さん、ベストご参加ありがとうございます。
わ〜、坤さんはシュルツが1位か〜っ、わ〜、3位にもっ、2位がゼーバルトで、マクラウドは4位に〜っ、と驚いたのですが、けーはいさんのコメントに、たしかに、と納得してしまいました。たしかにここまで来ちゃうと、カフカとトルストイどっちが上?って話になっちゃいますよね。
それにしても、オルハン・パムクがノーベル文学賞獲れずに、ウニャウニャっとその話も消えていったのは、納得がいきませんね〜。とりあえず、もう候補者にあがることもないってことか…。
それはともかく、今年は10人ずらりと並ぶと渋めのメンバーですね。飛びつくような若手の新人が出なかったってことでしょうかね〜。
メンテ
Re: 2005年・坤の年間ベストほんやく本 ( No.5 )
日時: 2006/01/06 22:40
名前:
参照: http://yonosk.at.infoseek.co.jp

すみさんにえさん、明けましておめでとうございます。昨年はシュルツで明け、年末にシュルツ復刊で暮れるという年でしたけど、今年はさらに渋そうなところを攻めたいと思っております、つーより、渋そうなところが山となって残っている状況です。それよりお二人の冬休み宿題の行方のほうが気になったりして、とても若手発掘どころではありません〜。
メンテ

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