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2003年上半期・坤のベストほんやく本
日時: 2003/07/04 22:13
名前:
参照: http://yonosk.tripod.co.jp

 今年も〜前半〜終わりですね〜。というわけで2003年度上半期ベストテン+αですが、やはり絶版ないし入手困難本が多いのが今年の特徴です。新刊に魅力あるものが少なくなってきたのか読み残してきたものを片付けなきゃいけないお年頃なのか、それはどっちでもいいけど、ご参考までに出版社・出版年を付けてみました。

1.『笑いと忘却の書』
  ミラン・クンデラ/集英社(1992)
 この書ほど左右両翼から我田引水に引用されている書物もないでしょう。その結果、著者が人間に対し感じている悲しみは、さらに深まりゆくのでした。

2.『ハザール事典[女性版] 夢の狩人たちの物語』
  ミロラド・パヴィチ/東京創元社(1993)
 一読三嘆、世の中にはほんとうに才気あふれる作家がいるもんですねー。今でもときどきわが夢はハザール可汗国をさまよっています。

3.『贖罪』
  イアン・マキューアン/新潮社(2003)
 愛ゆえに深まり行く人間の孤独さと弱さ。運命に対しあがき続けることで、かろうじて理性を保つことができる人びと。カバーの少女の表情もよかったです。

4.『エルフギフト』
  スーザン・プライス/ポプラ社(2002)
 これは歴史文学であり、ダークファンタジーであり、古代の人々の持つ素朴なまでの残酷さを美しく描いた物語です。

5.『透明な対象』
  ウラジーミル・ナボコフ/国書刊行会(2002)
 自由と悲劇の境界を、劫を経た爺さまは一見楽々と漂っているようにも見えます。そのはしばしに快楽を見出しつつ。この本は賛否両論でございましたなー。

6.『コレクションズ』
  ジョナサン・フランゼン/新潮社(2002)
 これは次男の元大学教師がリトアニアで詐欺まがいの仕事につくというところが気に入りました〜。もちろん地下室で実験するパパもよかったですし、『べる…』に出くわすまではわたくしもアメリカ人やってました。

7.『エバ・ルーナ』
  イサベル・アジェンデ/国書刊行会(1994)
 先天的語り部のエバ、今は誰のために物語を紡ぎ続けているのか。おっと『エバ・ルーナのお話』がまだだった。

8.『不滅』
  ミラン・クンデラ/集英社文庫(1999)
「不滅」にこだわる生者たち、いや、それどころか天上では、有名人たちの霊も「不滅性」を得ようとして必死(死んでるって)らしいのだ。

9.『トリストラム・シャンディ』
  ロレンス・スターン/岩波文庫(1969)
 ナンセンスにして緻密な計算に裏打ちされた英文学史上に輝く「奇書」。なるほど、漱石「猫」のルーツがここにあるというのも納得できます。

10.『エドウィン・マルハウス』
  スティーヴン・ミルハウザー/福武書店(1990)
 この少年、後を引きますねー。一見そのへんの生意気そうな子どもと変わらないように見えて、実はふかーいものを引きずっている。ジェフリーは無事成長できたのだろうか。

番外『風の裏側 へーローとレアンドロスの物語』
  ミロラド・パヴィチ/東京創元社(1995)
 エーゲ海を泳いで泳いで、まだまだあの島にたどり着けず、わが愛する女は、故意に兄に漏らしたのか…。わたしの苦しむ姿こそ、愛のあかしとでも…。

審査員賞『昏き目の暗殺者』
  マーガレット・アトウッド/早川書房(2002)
 おばさまパワー気迫の一編。とにかく話中話「アサシン」を除けば「いい男」も「いい女」も出て来ないのですねー。ということは、そーゆーものはお話だけに存在するのか?

 さっ、下半期はどんな本に出会えることか。
メンテ

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Re: 2003年度上半期・坤のベストほんやく本 ( No.1 )
日時: 2003/07/01 23:47
名前: すみ&にえ
参照: http://www.aw.wakwak.com/~w22/

おおっ、クンデラが1位ですか、なんか納得。あ〜、『ハザール事典』と『贖罪』がベスト3に入ってますね。そうなんですよね、良かったんですよね。とまた人のを見て悩みだす私たち(笑)
『エバ・ルーナのお話』もグッドでしたよ、ぜひぜひ♪
メンテ
Re: 2003年上半期・坤のベス ( No.2 )
日時: 2003/07/04 22:32
名前: おはな
参照: http://www.geocities.jp/hana3ana3

‥このレスにはすみ&にえさん以外でも書いていいのだとおかげで気付きました〜。
クンデラに魅入られていらっしゃいますねー。私も『不滅』と『‥軽さ』は大変感激しどんどん読もうと何冊か買い込んだんですけど、何故か重いような気がして中々手に取るまで至りません。どーしてかなと思ったら、ははぁクンデラには坤さんの背後霊がついていたのだ‥。私も納得。
メンテ
Re: 2003年上半期・坤のベストほんやく本 ( No.3 )
日時: 2003/07/04 23:42
名前: 海ねこ

あ、クンデラ....全然読んでない。
なぜかというと(何度もしつこく言うけど)、ハードカバーで全部うちにあるから。「夫猫のテリトリーには立ち入るべからず」という暗黙の家訓が...。いいもん。いつかきっと読んでやるぅ!
メンテ
なぜクンデラかというと… ( No.4 )
日時: 2003/07/21 21:04
名前:
参照: http://yonosk.tripod.co.jp

「国」と「個人」の関係をもっとも重く感じているのが「亡命者」であろうと思われます。望郷の念を持ちながら故郷の人々には疎外感を覚え、他国では「逃亡者」との目で見られている。それでも自意識を保ち続けるその意志の力、矜持。
 でも自分では自作を「ユーモア」と言っているけど、わかりにくいユーモアですね。特に女性には受けないだろうなと思うけど、おはなさんは感激されたのか〜。でも本人は「軽さ」だって言ってますぜ、「重さ」ではなくて。
 すみさんにえさんは、クンデラは苦手と書かれていたような記憶がありますね。海ねこさんは、どうでしょうね。まず夫猫に見つからないよう赤外線センサーをくぐり抜ける術を習得しなくっちゃ。

 パヴィチ大王は本年度の収穫。これに匹敵する後半の目玉はまだ見つかりませぬな。それにしても『エドウィン・マルハウス』復刊おめでとうございます。
メンテ

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