=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
メアリ・ゲイツキル
アメリカ。大学教授を父に持つ恵まれた環境に生まれながらも、反抗を繰り返し、高校時代には麻薬や暴力 沙汰で退学になった。その後の放浪の旅で、売春婦、ストリッパー、モデルなどの職業を経験した。 のちに父親の教える大学に入り、そこで文学的才能を見いだされ、作家デビューした。 |
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じつは私、今まで読んだ本の中で一番好き な本は? と訊かれたら、メアリ・ゲイツキルの「太った女、やせた女」を挙げる。 | |
ただ、人におもしろかったよって勧める 本ではないよね。読んでてかなり息苦しいし(笑) | |
うん、まったくの個人的な趣味。でもね、 この人のこの張りつめた神経そのままのストーリー、衝撃的な文体は本当に圧巻、すごすぎる。 | |
人と結びつきたいけど結びつけない、 そういう一筋縄では解決できない孤独感がビシビシ伝わってくる本よね。 | |
短編集の「悪いこと」でもそれは感じる けど、私小説めいてて、それほど高い完成度はないと思う。「太った女、やせた女」のほうがずっと優れ ていると思うよ。 | |
この人って、早熟すぎて孤独な子供だった んだろうな〜って感じがするね。 | |
孤独ってさあ、いろんな作家が、いろんな 表現をしてきたけど、この人の孤独感は他にないと思う。 | |
雑踏の中にいて、初めて感じる孤独みた いな? | |
そういうクサイだけでたいして意味のない 科白は勘弁してください(笑) | |
じゃあ、どういうのよっ。 | |
う〜ん、口に出していうのは難しいけど、 人と人とが完全に理解し合えて結ばれるなんてありえないでしょ。それに、自分のすべてを相手に渡すよう な愛し方はしたくない。そういう理性がありながら感情的には、魂が溶けあうぐらい誰かとひとつになって みたいとず〜っと願いつづける、そんな叶わない願望みたいな、不変の孤独かな。 | |
わけわかんないよ! そうやって人にわか らない表現しかできないのってオバカな証拠だよ、バーカ、バーカ。 | |
言いたいことも伝えられず、双子の姉は 逆上して幼児がえり、私って今、最高に孤独だわ(笑) | |
あ、わかった。そういう一時的な孤独じゃ なくて、人が生まれてから死ぬまで持ち続ける解消しきれない孤独感ね。 | |
じゃ、それでいいや(笑) でね、あと絶対言っておきたいのが文章。短いほうが今風で、おしゃれだと単純に思いこんでいたところを ガツンとやられた。やたら装飾が多くて長い文節なのに、スタイリッシュ。もうゲイツキルにはやられっぱ なし(笑) | |
「悪いこと」 <早川書房 単行本>
過激でインモラルな生活をしながらも、なにかが欠けて見つけだせないニューヨークの悪い女たちを描く 九つの短篇。ゲイツキルの私小説的な要素が強い。エロティシズムを取りざたされがちだが、冷め切った 文章に性の情熱は感じられない。 |
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「太った女、やせた女 」 <早川書房 単行本>
かつて、圧倒的な個性で世間の注目を浴びていた女流作家に仕えていた太った女は、自室にこもり、 その知性を封印していた。そこに訪ねてきたライター、やせた女は太った女に同じ孤独を見いだす。 醜く太った女が心で語る女流作家の真の姿と、一度きりの愛の思い出は、だれにも伝わることはない。 |
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