=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「鏡の中のブラッディ・マリー」 ジャン・ヴォートラン (フランス)
<草思社 単行本> 【Amazon】
くそったれな上司と軍隊に怒りをたぎらせたジャン・イヴは盗んだ手榴弾数個と一緒にパリの街へ。くそったれどもが爆破される中、事件を追う刑事シュナイダーは秩序に固執しながらも、暴力へのあこがれを膨らませていく。 | |
フランス祭りの第2回めは、ジャン・ヴォートランです。 | |
この人は、映画監督を経て、作家さんになった人らしいよね。 | |
映像関係から来た人は、文章以前に光景の作り方がうまいよね。視線の位置がくっきりしてるし。こちらも瞼に浮かびやすい。 | |
で、この本は・・・。 | |
クレイジーな、とてもクレイジーな本でした(笑) | |
ジャン・イヴの義父は下水道で双頭の鯉と格闘してるし、シュナイダーの妻は多重人格で、赤ん坊になったり、娼婦になったりしてるし、もうメチャクチャ。 | |
公団住宅は29階の高層ビルなんて設定だったりね。 | |
そこに住んでるのも、家中にテレビとラジオを何個も置いて、新聞読みまくってるニュース狂いな人や、九官鳥に差別用語を教えつづける内反足の男とか、イカレてる人ばっかり。 | |
でも、なんか、登場人物はみんな力一杯生きてるのよね、清々しいほど(笑) | |
そのうえ妙に哀愁が漂ってたりしてね(笑) | |
で、みんな腐った街に怒りを燃やし、もう爆発寸前。当然ながら、爆弾事件をきっかけにして、みんなとんでもない行動をとっていく。 | |
やるだけやったって感じよね(笑) | |
フランスでは、この人の本ってミステリに分類されて賞をとったりしてるみたいだけど、これはミステリとも言い難いよね。 | |
う〜ん、SF? こんなハチャメチャな話はどこにも入れられないよ〜。 | |
ハイテンポとは言えないまでも、短い文章で話はとんとん進んでいき、突飛な出来事が次々に起こる。でも、常軌を逸した世界のようでいて、ストーリーはきっちり保たれてて、意外にきっちりまとまってたよね。未熟な腕の作家では、こうはいかないんじゃない? | |
あとさ、みんな禄でもない人間たちだったけど、それでも人間らしかったよね。愛情とか、悲しみとか、思いやりとかがあったりして。おかげで、彼ら彼女らの凄まじい行動のなかでも、読んでるこっちは腰が引けなかった。 | |
まあ、ひとことで言えばおもしろかった。ものすごくおもしろかった。 | |
ぶっ飛んでたね。 | |
狂いまくった中に美さえ感じた(笑) | |
それにしても、こういう話って一人ぐらいはまともな人が出て来るものだけど、全員やられちゃってたね。 | |
暴力も満載、拳銃もバンバン撃たれて、手榴弾は炸裂して、でも、私たちみたいなカヨワイ女でも、愛せる世界だった。 | |
くっきりと黒いふちどりの中に、極彩色の油絵の具を塗りたくったような、それでいて少し離れてみれば案外と美しい絵だったりするような、そういう本でした。 | |
たまにはぶっとんだクレイジーな本が読みたいと思った人にはぜったいのオススメでしょう。 | |
超オススメ! 質は高いです。下品じゃありません。 | |
私たちもこの作家の本、また読みましょうね〜。 | |
読みましょー♪ | |