=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ガラスのなかの少女」 ジェフリー・フォード (アメリカ)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
1932年アメリカ、一流と仲間に認められるインチキ霊媒師、トマス・シェルに育てられたディエゴは17才、インドから来た霊能力者として降霊会に参加していた。ところが、パークスという富豪の家でトリックを使って降霊会を行っていたとき、トマス・シェルが本物の幽霊を見た。ガラスのなかに殺された少女の姿が現われたのだ。 真相を探るため、トマス、ディエゴ、用心棒役の大男アントニーの3人は、事件解決の捜査に乗り出した。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作品。 | |
なんだか、またですかってぐらい、このところ立て続けに新刊が出て読んでます、ジェフリー・フォード作品です。 | |
とはいえ、これは文庫本で出たってことで、今まで読んだのより軽い娯楽本ってタイプかな〜なんて思ってたんだけど、やっぱりそうだった(笑) | |
なんというか、ストーリーの流れ的なものとしては、YA本にも通じるような定番的な感じだったよね。 | |
そうそう。こういう王道というか、突飛じゃないものも書くんだなと逆にビックリしたよね。 | |
時は1932年、舞台はアメリカ、ということで禁酒時代。まだまだ霊の存在が信じる人が多くて、降霊会が盛んに行われていた頃。 | |
当然、降霊会を開きたがる金持ち連中を目当てに、詐欺師まがいのニセ霊媒師が暗躍しているのよね。主人公のディエゴを育てたトマス・シェルもそんなニセ霊媒師の一人。 | |
詐欺師としてはかなり上の部類の人なんだよね。父親も詐欺師で、エリートともいえるかも。そういう仲間のなかでは顔が広くて、尊敬されていて、かなりかっこいい感じなの。 | |
主人公のディエゴは、メキシコから逃げてきた不法移民の一人で、孤児になってしまっているところをトマス・シェルに拾われ、何人もの家庭教師までつけてもらって、大切に育てられているのよね。 | |
当然、トマス・シェルのことを尊敬していて、やがては跡を継ごうと、17才ですでに仕事の手伝いをしているの。 | |
肌の色を利用して、インドから来た霊能力者ってことになってるのよね。ターバンを巻いて、訳のわからない言葉をしゃべって降霊会に参加して、トマス・シェルの繰り出すトリックの補助をやってるの。 | |
トマスとディエゴはもう一人の仲間、アントニーと行動をともにしているの。アントニーは大男で、運転手や雑用その他をこなしつつ、頼りがいのある用心棒でもあるの。 | |
トマスは蝶を飼うのが趣味なんだよね。ちょっとキザなインチキ霊媒師が蝶を飼って、けっこうストイックに暮らしている。なかなかカッコイイではないの(笑) | |
そのトマスが、降霊会の最中に、本物の幽霊らしきものを見ちゃうんだよね。パークスというマザコンの富豪の家で降霊会をやっていたら、ガラスのなかに殺された少女の霊を見るの。 | |
少女は隣の家の娘なんだよね。もちろん、隣の家はやっぱり富豪で。少女が気になって仕方ないトマスは、無料で捜査に乗り出すことに。 | |
とにかくまあ、ちょっともう使い古された感はあるかな〜って設定だらけではあるけれど、展開次第ではかなり楽しめそうな感じなんだよね。だけど、う〜ん。 | |
終盤はちょっと、期待したほどのどんでん返しとか、これまでの話を終結させて、そういうことか〜と思わせる力業とかには欠けていたかもね。 | |
うん、こういう話は終盤がおもしろければOKってところはあるから、ちょっと物足らないというか、なんかジェフリー・フォードの人柄の良さがモロに出ちゃったかなっていう気も。 | |
ただ、まとまってないとか、グダグダで出来が悪いってことはないんだよね。これはこれで最後まで読ませてくれるし。 | |
うん、最初から最後まで楽しくは読めたよ。悪趣味すれすれというか、ほぼ悪趣味な裏の陰謀みたいなのが見えてきたりとかして、そのへんでの驚きはあったし。 | |
そのへんの大きさとこぢんまりまとめ話の折り合いがつきそこねたかな? | |
まあまあ、でも、あまり期待せずに軽く読む分にはいいんじゃないでしょうか。 | |
じゃあ、とりあえず、ジェフリー・フォードはこういうのも書くんだなってことで。 | |
2007.3.28 | |