=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「運命論者ジャックとその主人」 ドニ・ディドロ (フランス)
<白水社 単行本> 【Amazon】
ジャックとその主人は旅をしていた。ジャックは世の中で起きるすべてのことは前もって天上に書かれていることだと主張する。主人は無類の話し好き。二人は切っても切り離せない仲だった。ジャックは主人に乞われ、自分のたった一度きりの恋について語ることにした。 それは兵士の頃、膝に怪我を負って運ばれている最中、ある一軒の家の前に降りたことからはじまる。 | |
ロレンス・スターンの「トリストラム・シャンディ」とこの小説は、18世紀のヨーロッパの最高傑作メタフィクションと称されているということで読んでみました。 | |
私たちは「トリストラム・シャンディ」、まだ現時点では読んでないけどね(笑) | |
あっちを先に読むべきだったのかもしれないけど、なにせあっちは長いんで、後回しにしてしまった。でも、読むけどねっ。 | |
この小説、「トリストラム・シャンディ」と並び称されるってだけでなく、「トリストラム・シャンディ」からの引用とかも入っていたりして、密接に関係していたよね。やっぱり片方だけより、両方のほうが楽しめるかも。 | |
とりあえず、あっちも早めに読みましょうってことで。 | |
メタフィクションというのは良い意味での悪ふざけ小説ってイメージなんだけど、著者のドニ・ディドロは「百科全書」の刊行にも尽力した著名な哲学者なんだって。 | |
そう言われればそうかとも思うけど、それほど哲学してる〜って感じは読んでいてなかったよね。それよりも、はじめに開いてパラパラっと見たとき、戯曲かと思っちゃった。 | |
うんうん、会話部分が戯曲のように、「登場人物――『セリフ』」の並びになってるんだよね。実際に読んでみると、地の文かと思ってたところにも、――で会話がなされていたりもするんだけど。 | |
あわてて巻末見たりしたんだけど、どこを見ても小説と書いてあった(笑) とりあえず読んでみたら、やっぱりこれは小説だったよね。 | |
ミラン・クンデラはこの小説から「ジャックとその主人」という戯曲を書いているんだよね。たしかに、いっそのこと戯曲にしちまえってところはあるかも(笑) | |
でも、お芝居で見るのは厳しいかもね。会話中心の小説ではあるんだけど、セリフのなかにまた別の物語が流れていくって感じだから。 | |
もともとのところが、ジャックとその主人が旅をしているのよね。 | |
なんの目的でどこへ向かっているのか、いまひとつハッキリしないというか、設定がないんだけど(笑) | |
それについて語り手である著者が脱線して、読者に向かってペラペラとしゃべりだしたりとかもしてたよね。 | |
とにかく脱線につぐ脱線なの。主軸のストーリーは、ジャックが主人に自分の恋物語を話す、主人はそのあとで自分の恋物語を話すってところにあるみたいなんだけど。 | |
主人がとにかく話を聞くのが好きな人だから、旅先で出会う宿屋の女将、居合わせた貴族など、とにかくいろんな人から別の話を聞きはじめちゃうのよね。 | |
ジャックも恋の物語を話していたのに、主人に乞われて別の人の話をはじめちゃったりとかするしね。 | |
あと、著者も地の文で別の人の話をはじめちゃうし(笑) | |
でも、脱線につぐ脱線で、早く主軸の話に戻れよとイラッとするかと思えばそんなことはなくて、どの話も面白くて心惹かれちゃうのよね。 | |
宿屋の女将の話なんか面白かったな〜。しつこく求愛されてようやく一緒になった男性の気持ちが冷めて、復讐を誓う女性の話なの。 | |
主人がとにかく話を聞くのが好きで、ジャックは話し上手で、そのためにジャックと主人の力関係は、主従の上下関係がひっくり返ってしまってる感があるのよね。だから「○○とその従者」ではなく、「ジャックとその主人」なの。そのへんにも面白味があったかな。 | |
この小説がどんな感じかと訊かれれば、だらだらといろんな人がいろんな話をする小説って言うしかないけど、それがぜんぜん退屈ではないんだよね。次々と話が繰り出されていくから、意外とテンポがいいと言えるのかもしれないし。 | |
肝心のジャックの話は、ウルウルもののロマンティックな物語が…と言いたいところだけど、結局、相手の女性に出会ってからの話は、小説の最後のほうになってからじゃないと出なかったりするんだけどね。でも、最後には大団円が待っていたりして、これはこれで満足かも。最終的には、意外なほどきれいにまとまった小説だったし。 | |
メタフィクションだからなのか、古さはまったくなかったよね。登場人物とか旅の様子とかはもちろん18世紀なんだけど、小説じたいが新しい感じがした。とりあえず、このラインの小説に興味がある人だったら読んでおいたほうがいいんだろうし、勉強のためというより、かなり楽しく読めますよってことで。 | |
2007.1.26 | |