=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ルイの九番目の命」 リズ・ジェンセン (イギリス→フランス)
<ソフトバンククリエイティブ 文庫本> 【Amazon】
ルイは短い人生のなかで、帝王切開の出産で死にかけて以来、線路に落ちたり、食中毒にかかったりと、何度も死にかけている。猫には9つの命があると言われている。ルイにも9つの命があるとしたら、もう8つは使ってしまったんじゃないのとママは心配していた。そして今、9才のルイは昏睡状態でベッドに寝ている。 誕生日に出掛けたピクニックで、パパに崖から突き落とされたのだ。 | |
こちらは初邦訳の作家さんで、この作品は「コールドマウンテン」のアンソニー・ミンゲラ監督によって映画化が予定されているそうです。 | |
サスペンスにホラーファンタジーのテイストが加わって、なかなかおもしろい感じだったよね。 | |
うん、一気に読めた。こういうことだろうなとわかる部分もあるんだけど、それはそれでどういう説明になるのか興味深かったりもして、どうなることかと先が気になりまくりだったし。 | |
心理描写とか、全体にしつこくはないけど丁寧で、読みごたえもあったよね。私としてはエンタメ系としては完全に合格点超えだった。ただ、謎解き含みの現実的なサスペンスに空想的なファンタジーテイストが加わるところで、けっこう好みが分かれて賛否両論みたいだけど。 | |
良いと思うんだけどね、小説なんだし、これはこれでひとつの世界観ができているんだし。ただ、ミステリ的なところを期待しすぎると、このフワ〜っとした感じは生ぬるくも感じちゃうかな。 | |
ストーリーは、昏睡状態の9才の少年ルイの頭の中と、現実に起きていることが平行して進んでいくの。 | |
ルイはもともと情緒障害の疑いがあった少年なんだよね。自分で意識しているかどうかもわからないような嘘をつき、変わった規則を自分の中に持っていたみたいで。 | |
カウンセラーのもとに通っていたんだよね。そこで担任教師はジダンだとか、そんなことばっかり言ってたみたいね。 | |
なんだかギョッとするような残酷なことも言ったりするし。 | |
でも、何度も死にかけているっていうのは嘘じゃないんだよね。ルイはベビーベッド死とか感電死とか食中毒死とか、死んで不思議のない状況に何度も陥っているんだよね。 | |
とにかく普通の子じゃないのよ。で、今は昏睡状態。 | |
なんと両親と三人で出かけたピクニックで、父親が谷に突き落としたということなんだよね。父親はそのままどこかへ逃げ去って行方不明に。 | |
ルイはいったんは死亡と診断されたの、でも、蘇生して、そのまま意識が戻らず。 | |
ルイは意識が戻らないまま、総合病院からプロヴァンスの昏睡状態の患者がたくさん入院している病院に移されるのよね。そこにいるのがパスカル・ダナシェという優秀な医師。 | |
ところがダナシェは、一目見るなりルイの母ナタリーに惹かれてしまうの。ナタリーは美人で、男性から見ると、思わず守ってあげたくなってしまうような女性。 | |
ナタリーに惹かれることで、ダナシェは上手く行かなくなりかけていた妻とはいよいよ最悪な状態になっちゃうし、仕事場でもちょっとまずい感じになってきちゃうのよね。 | |
そのうちに、ルイのことや、ルイの父や母のこと、その他もろもろのことがわかっていくの。ネタバレになっちゃうから言えないけど、このへんのパターンが私たち好みだったのは大きいかも。 | |
そうだね、このパターンは飽きない(笑) | |
DVがあったとか、アル中だとか、ダナシェ自身も思春期まで夢中歩行を繰り返していたりとか、いろいろ精神医学っぽい要素もからんでたりして、掘り下げ感はないにしても、そのへんもおもしろかったし。 | |
むりやりオチをつけてすべてに結論を見せないところも好感触だよね。あるていど読みごたえがあって、軽すぎず重すぎずのエンタメ系をお求めなら、オススメってことで。 | |
2007年1月10日 | |