=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「すぐり」 「たわむれ」 アントン・P・チェーホフ (ロシア)
<未知谷 単行本> 【Amazon】 「すぐり」 「たわむれ」
「すぐり」 獣医のイワン・イワーヌィチと中学校の教師ブールキンは歩いているあいだに雨が降ってきたので、アリョーヒンの家へ立ち寄ることにした。そこでさっぱりとしたあと、イワン・イワーヌィチは弟の話をはじめた。 「たわむれ」 <たわむれ> 晴れわたった冬の昼間、まだ若者だった私は、ナジェージダ・ペトローヴナと橇に乗った。私は滑走する橇のうえで、「わたしは あなたを 愛しています ナージャ!」と囁いた。 <大学生> 宗教大学に通うイワン・ヴェリカポーリスキーは、ヤマシギ猟の帰り道、母も娘の未亡人のワシリーサとルケーリヤに声をかけた。イワンはふと思い立ち、聖書のペトロの話をはじめた。 | |
未知谷のチェーホフ・コレクションのシリーズから2冊まとめて紹介です。 | |
1冊につき、短篇が1作か2作ぐらい収録されていて、それにロシアの画家が絵をつけている本なんだよね。ほとんどが絵が1ページ、文が1ページって割合で。 | |
そうなのよね、だから1冊じゃホントに短い紹介になっちゃう(笑) | |
ちなみに、「すぐり」はイリーナ・ザトゥロフスカヤという方の絵で、「たわむれ」はユーリー・リブハーベルという方の絵。どちらの画家も世界的に著名な方みたいです。 | |
このチェーホフ・コレクション、気になってはいたんだけど、すぐに読む気はなかったんだよね。それを急に読むことにしたのは、新刊コーナーで「すぐり」を目にしたからなんだけど。 | |
一瞬、和風? と思うような本なんだよね。開き方が普通の本と左右逆で、カバーはちょっと着物を思わせるような? で、中の紙はキナリで。 | |
挿絵も筆で書いたような絵だしね。和風のようだけど、よくよく見ると、やっぱり和風じゃなくて、なんだろ〜と掴んだら放せなくなった私(笑) | |
「たわむれ」のほうの絵もいいよね。2作収録されているんだけど、「たわむれ」は明るい色彩でまとめられ、「大学生」はガラッと変わって暗めの色合い。 | |
「たわむれ」の最後のページのおじいちゃんが可愛いかも(笑) | |
そんな贅沢な本なんですが、「すぐり」はちょっとお説教臭いお話なんだよね。 | |
でもさあ、3人の登場人物のうちの1人がお説教臭い話をするけど、他の2人はぜんぜん感銘も受けず、しらけてしまっていて、とりようによってはどうとでもとれるよね。 | |
そうね〜。イワンは弟の話をはじめるんだけど、その弟は地主屋敷を手に入れるという自分の目標のために、他人を不幸にしても、それに気づきさえしなかったみたいなの。それでイワンは、自分の幸せのことを考えるくらいなら、自分の幸せのために犠牲になった人たちのことを考えなさいというようなお説教をするの。 | |
ちょっと寝る前に感謝しろとか、そのぐらいだったら、「まあ、そうですね」と適当に合わせることもできるだろうけど、いきなり自分の幸せのことなんか考えるな、不幸な人のことを四六時中考えていろと言われても、まあ、困っちゃうのも無理はないよね。 | |
「たわむれ」は打って変わって、愛らしいお話なのよね。若者が娘に、橇に乗ろうと誘うんだけど、娘は怖がって嫌がるの。 | |
それをむりやり乗せて、愛の言葉を囁くのよね。で、娘は風の音がそう聞こえたのか、若者が囁いたのかわからなくて、それを知りたいばかりに、怖さを押しのけて何度も橇に乗るの。 | |
肌が透けるほど白いロシア美人の娘が頬をうっすら染める姿が目に浮ぶようだったよね。 | |
「大学生」は宗教大学の大学生が、母と娘、二人の未亡人に、二人もよく知っているはずのペトロの話をすると、母親のほうが、意外な反応を見せるというお話。 | |
なにか自分のやってしまったことと重なるところがあったんだろうね。人のやることって、1900年もの歳月を経ても、根本的にはあまり変わっていないというか。 | |
それにしても、このチェーホフ・コレクションは、ほんとにコレクション用だよね。ロシアの著名な画家の絵がタップリ入っていて、チェーホフの短篇は何度繰り返して読んでも味わい深くて。欲しくなるな〜。 | |
どれも、それぞれの物語のためにわざわざ描いた絵だもんね。とにかくどれも大人向けの素敵な本ですから、機会があったら一回ぐらいは見てみてくださいってことで。 | |
2006.11.10 | |