=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ラビリンス」 上・下 ケイト・モス (イギリス)
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2005年7月、フランスのスララック山で、アリス・タナーは友人の考古学者シェラ・オドネルが副責任者をつとめる遺跡発掘現場に短期ボランティアとして参加していた。その最終日、アリスはどうしてもなんらかの成果をあげたくなり、指示されていない場所まで行ってみた。そこで岩が転がり落ち、洞窟が姿を現したとき、アリスの中でなにかの記憶がよみがえり、誘われるように洞窟へ入っていった。 1209年7月、カルカソンヌのコンタル城で、家令ベルトラン・ペルティエの娘であり、騎士ギレム・デュ・マスの妻であるアレースは、早朝、こっそりと行った川で、男の死体を発見した。その頃カルカソンヌは、コンタル城の城主レモン・ロジェ・トラアンカヴェル子爵が異教徒を保護しているとして、十字軍に攻められようとしていた。カルカソンヌはヨーロッパ最大の城塞都市で守りは堅く、シテを中心として町は栄えてはいたが、十字軍の力はあまりに強大で、その攻め方は残酷だった。 | |
イギリス発の世界的ベストセラーということで読んでみました。ケイト・モスって初邦訳だよね。でも、新人作家のデビュー作なのかと思ったら違ってた。 | |
けっこう立派な経歴の方なんだよね。あのオレンジ賞の創設者であり、名誉理事ヨーロッパ女性功労賞受賞者で、王立芸術協会会員ですって。 | |
読む前にそれを知ったおかげで、信頼しきって読めたかな。おかげでめいっぱい楽しんで読んだんだけど、ネットで見ると、賛否両論? 面白かった人と面白くなかった人とまっぷたつみたい。 | |
私はなんといっても、十字軍の南フランス征圧の凄まじさ、戦いの激しさが、カタリ派の人たちの行動を含めてけっこう詳細に書かれていて、それに圧倒され、夢中になって読んだんだけど。 | |
そのへんの丁寧さが、逆に読むのがかったるいというほうになっちゃった方もいるみたいね。私たちはほとんど知らないから、ひたすら驚いて読んだけど、知っていると、もういいよってところもあるのかな。 | |
いや、イギリスでベストセラーになったんだから、それはないんじゃない? むしろ興味がなければそれまでというか。 | |
それよりも、私はひたすら、2005年と1209年の繋がりというか、誰が誰なの的なところに興味を覚えて、そこに焦点を合わせて読んだからワクワクしたけど、聖杯伝説とか、そのへんを期待しちゃうとダメなのかも。 | |
あー、そうだね。十字軍の無差別殺戮の凄まじさとか、人間関係とかは詳細に書いてあって食いつけたけど、主軸の書の謎とか、聖杯のこととかについては、ちょっと書き込み不足と言ってはなんだけど、あんまり気合いを入れて書いてなくて、よくわからないところもあったような。 | |
でしょ、そこだけに期待が行っちゃうと、う〜んってなっちゃうかもね。私たちはなんだかわからないまま、なんにも期待しないでボーっと読みはじめたから逆によかったんだよ(笑) | |
とりあえず、どんな話かというと、まず2005年のアリスと1209年のアレース、この二人はなんらかの繋がりがあるってことは最初からわかってるんだよね。 | |
アリスにはアレースの記憶があるみたいなんだよね。で、アリスは遺跡発掘現場で洞窟に入り、そこに男女二人の骨と、迷路が描かれた指輪を見つけるの。それに、ちょうど本が入るサイズの袋、祭壇……。 | |
アレースは、コンタル城の城主、レモン・ロジェ・トラアンカヴェル子爵に仕える家令である父のベルトラン・ペルティエから、3つの書のことを聞かされるの。 | |
3つの書は、エルサレムでハリフから渡されたものなのよね。3つの書は3人の守護者が1つずつ持ち、守られることになったんだけど。 | |
おもにカタリ派の異端を征圧するために十字軍が南フランスに襲いかかってきて、3つの書は危険にさらされるのよね、それでハリフは自分のもとに3つの書を集めようとするんだけど、十字軍はどんどん迫ってくるし、書を狙う者たちが現れたりもして、そう簡単にはいかなくなっちゃうの。 | |
アレースには身近な問題もあるよね。愛する夫ギレムの様子がおかしかったり、美貌の姉オリアーヌがなにか企んでいるらしいこともわかったり。 | |
2005年のほうでは、アリスが見つけた指輪がどこに行ったかわからなくなっちゃって、そのせいで謎の人たちに追われることになるんだよね。 | |
富豪で美貌の女性マリー・セシールとか、どういう存在かわからない作家オドリック・バイヤールとか、怖ろしげな弁護士ポール・オーティエとか、いろんな人がからんでくるしね。 | |
そうそう、謎解きっていうのはホントに最後の最後になるのよ。だから、それを待ちわびちゃうとつらくなってくるかも。でも、物語的にはかなりおもしろいと思うんだけどな〜。 | |
うん、書いてあることそのものを楽しんだほうがいいかもね。13世紀のほうはどんどんすごいことになっていくし、ロマンスもあったりするし、姉のオリアーヌが存在感出しまくりだし。 | |
あと、カルカソンヌの景色とかも活き活きとして楽しめたなあ。これについては、グーグルで「コンタル城」と検索して、一番上に来る(はず)のページで、写真がたっぷり見られると思いますよ。 | |
登場人物が多いから、イラッとするってのもあるかなあ。登場人物表もついてるから、確認しながら読めば大丈夫だとは思うんだけど。 | |
まあ、とりあえず私たちにとっては、すっごくおもしろかったし、オススメなんだけど、好みは分かれるようですよってことで。 | |
2006.11. 2 | |