すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「シンポジウム」 ミュリエル・スパーク (イギリス)  <筑摩書房 単行本> 【Amazon】
50代のアメリカ人画家ハーリー・リードと、40代の裕福な未亡人クリス・ドノヴァンは、長く同棲し、うまくいっているカップルだった。二人はちょっとしたパーティーを開いた。そこには幾組かの夫婦が訪れたが、そのなかに、新婚ほやほやのウィリアムとマーガレットのダミアン夫妻がいた。ウィリアムの母ヒルダ・ダミアンは大金持ちで、クリスの親友だった。ヒルダもクリスも、マーガレットについては疑いを抱かずにはいられなかった。何かが少しおかしいという気がした。
復刊ドットコム「ミュリエル・スパーク」復刊特集ページ
にえ ごめんなさい、絶版ですが読んでみました、ということで、私たちにとっては3冊めのミュリエル・スパーク作品です。
すみ ミュリエル・スパークは今年、2006年の4月にお亡くなりになったばかりなのよね。イギリスでは今でも評価の高い作家さんなのに、日本では絶版ばかり。全集出してほしいよね〜。
にえ これは1990年に発表された作品だから、書いたのは70代になってから? とにかくビシッと決まってて、まとまりがあって引き締まってて、さすがって作品だったよね。
すみ 読みはじめは、うっ、これはダメかもとちょっと思っちゃったけどね。スノッブの集まるパーティーのお話で、なんだかな〜の雰囲気の中、エピソードとともに紹介されていく登場人物も微妙に多くて。
にえ そうなんだよね、それがだんだん話が見えてくると、一本のはっきりした筋が浮かび上がってきて、急激におもしろくなってくるんだよね。
すみ うん、群像劇というか、パーティーに集まった人それぞれが悩みを抱えているんだよ〜みたいなお話かと思ったら、そうじゃなかった。
にえ やっぱりミュリエル・スパークだった。というか、レンデルとかP・D・ジェイムズにもちょっと近かったかな。女性ならではのサスペンスものの雰囲気ありだよね。最後に言わせたセリフで、これはやっぱりミュリエル・スパーク、と思ったけど(笑)
すみ さてさて、まずはパーティーの招待客なんだけど、スージー夫妻は、夫のブライアンが50代で、妻のヘレンが22才。ヘレンはブライアンの娘と同級生だったの。
にえ ヘレンはブライアンと別れたそうな感じだよね。ブライアンは強盗に入られたことをやたらと繰り返してばかりいるの。こりゃたしかにウンザリするわ。
すみ ローランド・サイクスは銀白色の髪の同性愛者で27才、そのいとこのアナベル・トリースは32才でテレビ局勤務。ローランドとはとても仲が良くて、同性愛者じゃなければな〜って思いがずっとあるみたい。そのためか独身なの。
にえ ウントツィンガー夫妻は、夫のエルンストが45才で、ブリュッセルの投資委員会勤務でロンドンにはよく出張で来ていて、妻のエラは42才で、ロンドン大学で教えることになっていて、ロンドンにフラットを借りる予定なのよね。
すみ エルンストとエラには、ルークという大学院生の若い友人がいるの。エルンストはルークがエラの愛人かと思っていて、エラはルークがエルンストの愛人なのかなと思っているみたいだけど、どっちも違うみたい。
にえ ルークは執事助手として、パーティーにアルバイトで来ているのよね。執事の名前は本名でチャーターハウス、うひゃ(笑)
すみ そして、新婚夫婦のウィリアム・ダミアンとマーガレット・ダミアンよね。ウィリアムは29才で、マーガレットは23才。二人はマークス・アンド・スペンサーの果物売り場で偶然出会ったらしいんだけど、やけに都合のいい偶然なの。
にえ なにしろウィリアムは大金持ちの母親ヒルダがいるからねえ。ヒルダはパーティーのホスト、クリスの親友で、オーストラリア在住。クリスもオーストラリアから出てきた人だから。
すみ パーティーに出た人のほとんどが、マーガレットの旧姓がマーチーだと聞いて、おや、なんか聞いたことがあるぞ、と思うのよね。
にえ それがなかなか明かされなくて、焦らされちゃうの。わかってみると、焦らされただけの甲斐があったとわかるけど。
すみ マーガレットは「レ・ゾートル(他者)の哲学」なんて言葉をやたらと使って、なんだか他人のために尽くすことが大切だみたいなことばかり言うのよね。
にえ 聖人ぶればぶるほど怪しまれるタイプ? で、マーガレットの家の中のことがだんだんとわかっていくんだけど、これがまたちょっと変わってるの。過去については、変わってるじゃ済まされないような話で。
すみ ということで、だんだんとマーガレットに焦点が絞られていくんだけど、もう一方で話が進んで、それがやがて交差して、って、このあたりは、たしかにレンデルに似てたかも。
にえ 頭の良いイギリス人女性っていうのは、ホント怖いこと考えるよね(笑)
すみ そういえば、マーガレットが燃えるような赤毛の美人だけど、ちょっと出っ歯っていうのも、なんとなくミュリエル・スパークらしいのかなって気がしない? とにかく、おもしろかったので復刊されますようにってことで。
 2006. 8.22