すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「フェルマーの最終定理」 サイモン・シン (イギリス)  <新潮社 文庫本> 【Amazon】
ピエール・ド・フェルマー(1601〜1665年、フランス)は裕福な皮革商人の息子として生まれ、トゥールズの請願委員となって、役人として出世していった。しかし、フェルマーには別の一面があった。彼は天才的な数学者だったのだ。 一人静かに新しい定理を創り出す喜びに浸っていたフェルマーは、ときおり数学者たちに、証明をつけずに自分の最新の定理を送り、これを証明してみせろと挑発した。フェルマーはその他にも、ディオファントスの著作『算術』に証明をつけずに定理を書き付けていた。こうして次々とフェルマーから発せられた定理は、長い年月を経て、証明がつけられていったが、ただひとつだけ、どうしても証明されない定理があった。 「xn + yn = zn   n は3、4、5……」を満たす3つの数は存在しない。この定理はフェルマーの最終定理と呼ばれ、350年にわたって多くの数学者たちが挑んできたが、証明されることはなかった。懸賞金までつけられたその定理が、アンドリュー・ワイルズによって証明されようとしていた。
にえ 文系人間でもおもしろいと噂の「フェルマーの最終定理」が文庫化されて、まだちょっとグズグズしてましたが、けっきょく読んでみました(笑)
すみ もういいかげん読まないと、「フェルマーの最終定理」的な、とか、「フェルマーの最終定理」のごとき、とか、出版社の紹介文や巻末解説なんかで多発しそうな予感、だもんね(笑)
にえ でもさあ、文系人間にもおもしろいとはいえ、けっこう数学の話は難しかったよね。
すみ うん、そこは文系パワーで、完全理解は追究せず、なんとなくわかったような気持ちになれたところで進んでいくしかない(笑)
にえ そうそう、そういえば、6と28は完全数だって話があったでしょ。6の約数は1と2と3で、1と2と3を足すと6になるからって。あれってなんで1が入るんだろう。1を入れるなら、6も入れるべきなんじゃないの〜とか素朴に思っちゃった。約数が1と2と3と6、もしくは、2と3と言われれば納得だけど。
すみ う〜ん、私に言われても困るけど(笑)、素数の話になると、今度は約数の1は除いてってことになるよね。
にえ 1って1個あるってことでしょ。1個あるっていうのは、その存在そのものを指しているのだから、1は入れないほうがいいって、文系の考え方? それともアホな私だけかい?
すみ だから、私に言われてもわからないって(笑) あなたは前々から、4ほど完璧な数字はないって言ってるから、4じゃないのが気に入らないんでしょ。
にえ 違う。完全な数は1だよ。もっともエレガントな数字が4なんだよ。4は2の2乗だし、2×2だし、2+2だし、1を4で割ると、0.25、つまりはクオーターなんて、これまたエレガントな数になるし、だから、数字のなかでは4がもっともエレガントなのよ。というか、私は4が好きだ〜(笑)
すみ そんな話はどうでもいいんだけど(笑)、でも、この本の中でも、数字というより数学かな、その数学の美しさについて何度も触れられていて、なんか嬉しかったよね。そういう美意識のある分野の話だってだけで、ワクワクできちゃう。
にえ 語られているのは、アンドリュー・ワイルズという数学者がフェルマーの最終定理をついに証明したと発表し、騒ぎが起きている現代、それに平行するように、フェルマーからワイルズに至るまでの数学者の歩んできた道のり、だよね。
すみ 数学者たちの話については、単に功績というより、人となり、それから人生について、長々とはしていないもののキッチリ語られていたよね。それがまたどれもドラマティックで驚いてしまうんだけど。
にえ そうなんだよね、数学者ってなんでこうも数奇な人生を送った人が多いんだろうと読みながら考えてしまった。そして気づいたよ、ズバ抜けて頭が良いからだ(笑)
すみ はははっ、でもそれもあるよね。深く政治に関わってしまったために、早世してしまった人とか、なにか私たちにはわからない理由で世をはかなんだのか、若くして自害してしまった人とか。
にえ 日本人も出てくるんだよね。ワイルズがフェルマーの最終定理を証明する上で、もっともと言っていいほど重要な役割をするのが、谷山=志村予想っていうんだけど。
すみ 私たちがこんなこと言うのは大きなお世話かもしれないけど、最近、日本人学生の数学レベルが落ちたとかよく聞いていたから、ああ、いかんなあ、日本人は数学がんばんなきゃーとか思ったりもした。
にえ 谷村さん、志村さんにもまたドラマがあるんだよね。それ以外の人たちについても、たった1つの定理でこれほどの人間ドラマがあるのかと感動した。数学のところは難しいけど。とはいえ、私たち程度の読者が嫌にならないようにとの配慮で、軽く触れているだけで、それほど突っ込んだことは書いていないんだけど。
すみ これで興味を持ったら、フェルマーの最終定理に関する本はたくさん出ているよね、そういうのを読めばいいんじゃない。と他人事のように言う(笑)
にえ 人間以外でも、たとえばジュウシチネンゼミについての話で、昆虫とその寄生虫のことについて数学的な謎解きがしてあったりして、わ〜、数学ってやっぱり役に立つ〜、広がりがあるんだ〜と思った。
すみ でも、弟子が、数学がなんの役に立つのかって聞いたら、そんな奴はいらないって追っ払った方の話も出てきたよね(笑)
にえ とにかくまあ、話が興味深いので、フェルマーの最終定理に興味がなくても、グングン読めましたよ。
すみ 数学っていうより、その周囲のこと、数学者たちという人間について語られているお話だったよね。おもしろかった。もちろん、オススメです。
 2006. 7.30