=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「柘榴のスープ」 マーシャ・メヘラーン (イラン→アルゼンチン→アメリカ)
<白水社 単行本> 【Amazon】
クリュー湾に近いアイルランドの小さな村バリナクロウでは、5年前にイタリア人店主デルモニコが亡くなってから、<パパのペーストリー>があった店舗は空いたままになっていた。イランからロンドン、そしてこの地へと旅してきたマルジャーン、バハール、レイラーのアミーンプール3姉妹は、そこにペルシャ料理の店<バビロン・カフェ>をオープンした。 | |
この本がデビュー作のマーシャ・メヘラーンは、イラン革命直前に家族でイランを逃れ、アルゼンチンで育ち、アメリカ、オーストラリア、アイルランドで生活し、今はアイルランド人の旦那様とニューヨークで暮らしているのだとか。 | |
著者は2才でイランを出ているのね。この小説の主人公の3姉妹は、もっと年齢が上になるまでイランにいたのだけれど。 | |
マルジャーン、バハール、レイラーのアミーンプール3姉妹は、両親を亡くして、イランでもすでに3人だけで暮らしていたんだよね。 | |
3人は単にイラン革命を逃れてロンドンに渡ったのかと思っていたら、もっと個人的な事情もあったのよね。そういうのが読んでいくうちにわかってくるの。 | |
3姉妹はアイルランドの小さな村でペルシア料理の店を開くけど、著者の両親はブエノスアイレスで中東風レストランを開いていたんだって。だからお店で出すような料理に詳しいんだと納得。 | |
そうそう。なんとこの本、各章に1つずつ料理のレシピが付いていて、お話のなかで実際にその料理を作るシーンが出てくるんだけど、けっこう手が込んでて、本格的に作ってるものばかりなんだよね。 | |
どれもどんな味だか想像が及ばないものばかりで、作ってみたいとは思ったけど、腕が痛くなるまでひたすらかき混ぜたり、練ったり、焼いたり、一か月寝かせたり、なかなか大変そうだった。 | |
タイトルの柘榴のスープなんかも、ただ啜るスープかと思ったら、お米やお肉も入っていて、けっこうお腹に溜まりそうな料理だったよね。長時間煮込むみたいだし。でも、ドゥーグっていうミントのヨーグルトドリンクは簡単そうで、これはすぐ作りたいな。夏にぴったりのすっきりドリンクみたいだったし。 | |
で、章ごとに料理が出てきて、3姉妹で料理店を開くお話ってことで、けっこうストーリーは軽めなのかなと思ったんだけど、意外に重かったよね。 | |
うん、過去には辛いことがあったみたいだし、現在も歓迎してくれる人ばかりじゃなかったりするからね。ただ、親切な人たち、料理のファンになって応援してくれる人たちもいて、暗く沈んでいく感じじゃなくて、温かさのあるお話なんだけど。 | |
長女のマルジャーンは料理上手、次女のバハールは元看護士、末っ子のレイラーはまだ15才、学校に通う年齢なんだけど、バラとシナモンの芳香が漂う美しい娘なの。 | |
マルジャーンの料理は、一度食べると魔法にかかったみたいにトリコになっちゃうのよね。 | |
その3姉妹に、村のいろんなタイプの人が関わることになるんだけど、けっこう一人ずつが個性的で、それぞれに物語があったりするの。 | |
最初のうち、予想外に登場人物が多くて戸惑ったよね。つい気楽にメモも取らずに読みはじめたから、ヤバイと思ったんだけど、読み進めると、それほど悩まずに区別がついたからよかった。 | |
3姉妹のうち、特に次女のバハールは過去の経験からまだ逃れられていなくて、精神的に不安定だったりするのよね。 | |
明るく元気に学校へ通うレイラーも、実は過去を忘れてはいないんだけどね。 | |
村の人たちは、実はああなりたかったとか、そういう思いを秘めていたりして、そういうものがマルジャーンのハーブの効いた料理のおかげで、うまく導かれていったりするんだけど、そっちの明るい方向へ行くのかな〜と思ったら、最終的には、過去との精神的な対決みたいにもなったり……。 | |
最後には、う〜ん、まとまったんだか、まとまってないんだか、みたいなところもあったけどね(笑) | |
でもまあ、読んでる過程では楽しめたから。とりあえず、明るい希望に満ちたラストではあったし。 | |
うん、楽しめたよね。なんといっても、最初から最後まで料理の濃厚な香りが漂いまくっていて、そこに酔いしれました。なかなかってことで。 | |
2006. 7.25 | |