=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「蜂の巣にキス」 ジョナサン・キャロル (アメリカ→オーストリア)
<東京創元社 文庫本> 【Amazon】
ベストセラー作家として知られるサミュエル・ベイヤー(サム)は、30年前、15才の時に死体の第一発見者となったことがあった。殺されて川に流されていたのは、同じ学校の先輩だったポーリン・オストローヴァという少女だった。 ポーリンは成績超優秀で学校年間の編集長、しかし、突飛な行動を繰り返し、片っ端から男と寝る、つまりは学校一の目立つ女の子だった。小説の創作で行き詰まっていたサムは、その殺人事件をもう一度調べなおし、作品にすることにした。 | |
超久しぶりのジョナサン・キャロル新刊です〜! 何年も前から出る出ると噂ばかりが先行し、やきもきさせられましたね〜っっ。 | |
でも、こちらは今までのファンタジーものではないんだよね。読んで確認しましたが、やっぱりこれはファンタジーなしのミステリ作品です。 | |
でもやっぱりジョナサン・キャロルではあるんだよね。ジョナサン・キャロルのファンタジーが好きって人だとどうかなってところはあるけど、私みたいにジョナサン・キャロルの読者をためらいもなく深淵に叩き落す暗黒っぷりが好きな人だったら、ぜんぜん抵抗ないかも。 | |
ファンタジーが苦手で読まなかったって方には、逆にオススメだよね。 | |
読んでみて思ったけど、もともとこの方ってミステリにも向いていたのかも。伏線の張り方がうまい、というか、伏線を張っておいてそれをぎりぎりまで気づかせない誤魔化しかたがうまいというか。 | |
読者の心理をうまいこと思い通りの方向へ導いていくんだよね。でも、感情移入しちゃうのとはまた違うの。 | |
うん、この本でも、主人公に感情移入するようなことはなかったもんね。 | |
んで、すべてがわかるラストなんだけど、読み終わったあと、しばし呆然としちゃったよね。あまりにも唐突で。 | |
そうなんだよね、しばらくボーっとしちゃって、なんじゃこりゃと思って、それからしばらく経って考えてみると、あ、そういえばっていっぱい思い出すところがあって、やられた〜と思った。 | |
あとさあ、怖い女性が出てきたりするところ、ジョナサン・キャロルっぽかったよね(笑) | |
うんうん、ああいう精神的な恐怖を味わわせてくれるのがこの人よね。クルリンと裏が見えてくるところとか。 | |
でも、父親の娘への愛情がタップリ書かれているのはちょっと意外な気がした。なんかこれまでジョナサン・キャロルを読んでいるとき、こんなこと書く人が私生活では父親でもあるんだ〜っていつも不思議な気がしていたんだけど。 | |
この小説の主人公、サミュエル・ベイヤーは、ジョナサン・キャロルがそのままモデルなのかなと思える人物造形なんだよね、それも作戦なのかもしれないけど(笑) | |
ジョナサン・キャロル自身、本当に少年時代、死体の発見者になったことがあるんだってね。それに、作家という職業、それからそれから、出身地のニューヨーク、それにオーストリア。 | |
でも、ジョナサン・キャロルは子供は息子しかいないんじゃなかったっけ。違ったかな。サムには娘が一人いるのよね。サム自身は、三度も結婚に失敗しているんだけど。 | |
この小説の冒頭で、新たに美女と知り合い、付き合いはじめるようになるんだよね。この女性もまたモデルがいるらしいんだけど。 | |
んで、サムは15才の時に発見した死体、つまりポーリン・オストローヴァのことを思い出し、小説にすることに決め、昔の知り合いに会いに行ったりするように。 | |
ポーリンはいろんな男と付き合っていたけど、当時付き合っていたエドワード・デュラントと殺された夜に言い争っていたことから、エドワードが逮捕され、エドワードは刑務所で死んでしまっているのよね。 | |
でも、エドワードは最後まで、自分がやったかどうかわからないと言っていたそうだし、ポーリンは複雑な生き方をしていたみたいだし、今は警察署長となったサムの友人も、エドワードが犯人ではないようだと推理して、独自に捜査していたりするの。 | |
そんなミステリらしいミステリの流れから、女性との恋愛、その後という流れもあり、娘が初めて経験するの恋愛、それに戸惑いつつもなんとか対応する父親って話の流れもあり、幼なじみたちの人生の話もあり、と平行したり、からみあったりしながら、いくつもの話が進行されていくのよね。あとは怖ろしい脅迫もありで。 | |
うん、読んでいるあいだは気になることだらけで、気が抜けちゃうようなところはまったくなかった。 | |
そして最後には、だよね。読み終わって、どこが伏線だったか考える、これが楽しいっっ。ということで、ジョナサン・キャロルが好きな人も初めての人にもオススメです。気に入ったら、他のファンタジー作品も読んでね、もっと暗黒っぷりが炸裂しているのもありますよってことで(笑) | |