すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「カフカ短篇集」 フランツ・カフカ (チェコ)  <岩波書店 文庫本> 【Amazon】
フランツ・カフカ(1883年〜1924年)の20篇の短篇小説を収録。
掟の門/判決/田舎医者/雑種/流刑地にて/父の気がかり/狩人グラフス/火夫/夢/バケツの騎士/夜に/中年のひとり者ブルームフェルト/こま/橋/町の紋章/禿鷹/人魚の沈黙/プロメテウス/喩えについて/万里の長城
にえ これは別に新刊でもなんでもないんだけど、ゼーバルトの「目眩まし」を読む前に、読んでおいたほうがよさそうなので、読んでみました。
すみ カフカは中学生の時に読書感想文のために読んだ「変身」以来だねえ。
にえ まあ、「変身」1作しか読んでなくても、カフカの短篇集を読むとなると、理解して納得して、ストーリーや登場人物などを楽しもう、なんて考えなくはなるよね。なんだかわからないけどいいや〜的に読めばいいか〜みたいな(笑)
すみ うん、そういった意味では期待通りだったね(笑) カフカは凄いって偉い作家がみんな言うから、凄いって言わなきゃ〜みたいな読み方だけはしたくない、なんて思いながら読みはじめたけど、やっぱりなんだか読んでるうちに、凄いかもって気になってしまった。
にえ 「流刑地にて」とか「父の気がかり」とか「狩人グラフス」みたいな、なんだかわからないものをわからないまま書いて、それで読む側もなんだかわからないまま、わかったような気になって、期待されたとおりの反応をしてしまう、みたいな手法は、あとの作家にも大きな影響を与えてるんだろうな、なんて思ったりした。この短さで、この文章の力の大きさってどうよ。なんて、私の言ってることがなんだかわからないと思われているだろうけど、それはこの3作を読めば、なんとなくわかってもらえるかと期待(笑)
すみ 「田舎医者」みたいな、悪夢そのもののようなうねった話の展開のさせ方なんてのも、そうとう影響を与えてるんじゃないかなあ。なんかこういうのを、こうやって無駄なく削って書いてしまってることそのものが凄いなあと思ってしまう。
にえ なんだか良さがわかったようでわからないものも多かったけどね。
すみ まあ、それはそれでいいんでしょ。それを含めて期待を裏切られませんでしたってことで。ん〜、でも、やっぱり凄いよね。このあと、もう一回読もうっと。
<掟の門>
ある男が田舎から掟の門にやって来て、門番に入れてくれと頼んだが、今はだめだと断られた。永い歳月、門の脇で入れてもらえるのを待ったが、いつまで経っても断られつづけた。
にえ なんだか納得しそうになったけど、やっぱり考えてみると、わかったような、わからないような。
<判決>
家業を継ぎ、成功を収めたゲオルグ・ベンデマンは一旗揚げようとロシアのペテルブルグへ行ったきり、うまくはいっていないらしい幼なじみに手紙を書いたが、自分の成功は伝えづらかった。
すみ これは途中まではわかりやすいのだけれど、最後のほうの父親との会話が意味がわからなかった。
<田舎医者>
田舎医者である私は、猛吹雪の夜、10マイルも離れた患者の家へ行きたかったが、馬は昨夜死んでしまった。ところが豚小屋を蹴飛ばすと、立派な馬車と怪しげな馬丁が現れた。
にえ これはまさに悪夢的なお話。う〜、いろんな意味でゾワゾワとゆる〜く気持ちが悪くなるの。
<雑種>
父から譲られたのは、半分は羊で、半分は猫という変わった生き物だった。
すみ これは短い「雑種」のことを説明してあるお話。
<流刑地にて>
学術調査の旅行家が立ち寄った島は流刑地だった。そこでは将校が前の司令官の残していったなんとも残酷な処刑機で、上官にさからった兵士を死刑にしようとしているところだった。
にえ これは長めで、しかもわかりやすい。前の司令官が残した処刑機ってのがなんともおぞましいの。そして最後にはゾゾゾッてのが用意されてました。
<父の気がかり>
オドラデクは平べったい星形の糸巻きのようで、真ん中から小さな棒がつきだし、直角にもう一本棒がある、なんともおかしな奴だった。
すみ オドラデクがなんなのかはよくわからないけど、というか、わざとわからなくしてあるけど、最後に語られる語り手の気持ちには頷いてしまった。
<狩人グラフス>
港に小舟が入ってきた。二人の黒衣の男が棺台を担いで降り立った。市長が近づくと、棺台に横たわっていた男が目を開き、狩人グラフスだと名乗った。
にえ 死んだ男が放浪しているって話。なんだかわからないけどスゴイ迫力だった。真っ黒い圧力にのけ反りそうになってしまう。
<火夫>
16才のカール・ロスマンは、女中に手を出して子供ができたため、アメリカへやられることになった。ニューヨーク港に入っていく船のなかでカールは会計長に差別を受けているという火夫と知り合った。
すみ これは長めのお話。カールは火夫の話を聞いて、張り切って船長に文句を言いに行くんだけど。なんだか途中からおかしな方法になって、なんだったんだろうなあ、みたいな。
<夢>
ヨーゼフ・Kは夢のなかで散歩をしていた。墓地に着くと芸術家が墓石に金文字を綴っていた。
にえ 静かに怖ろしい夢の話。なのだけれど、どうして主人公にヨーゼフ・Kという名前があるのかがすっごい不思議だった。実はヨーゼフ・Kは長編小説『審判』の主人公でもあるみたい。
<バケツの騎士>
金がないのに石炭が尽きてしまった。空のバケツにまたがったおれは、石炭屋にツケで石炭を分けてもらおうと訪ねていった。
すみ これはわかりやすい。空のバケツにまたがって石炭屋へ行った男と、石炭屋の夫婦との遣り取りが面白くも切ないの。
<夜に>
夜に沈んでいる。だが、おまえは目覚めている。
にえ これはスンゴイ短いの。ここまで短いと小説というより詩だなあ。「夜に沈んでいる。」ってもう詩でしょう、これは。
<中年のひとり者ブルームフェルト>
7階の部屋に一人で暮らすブルームフェルトは、犬を飼いたいと思っていたが、帰ってきた部屋の中にいたのは、いつまでも弾みつづけ、自分について来る2個のボールだった。
すみ これはわかりやすいし、おもしろかった。同じ話を二度、まったく違う話としてなぞるおもしろさというか。それによって、2個のボールが象徴しているものがなんだったのかがわかるというか。
<こま>
ある哲学者は、いつもこまで遊ぶ子供たちを見つめ、子供たちが回しはじめたとたん、こまをつかみ取ってしまう。
にえ これはごく短い話で、読み終わるといったん納得しつつも、なんだわかったような、わからないような。
<橋>
私は橋だった。手すりもなにもない。夏の夕方、私はやって来た旅人をぶじに渡す手伝いをするつもりだった。
すみ これもまたごく短い話で、読み終わるといったん納得しつつも、なんだわかったような、わからないような(笑)
<町の紋章>
バベルの塔の建造は、初めのうちかなり順調だったが、世代を重ねるうちに、技術は急速に進歩しても、塔を建てるには支障が出てきてしまった。
にえ これは短くて、なるほどね、と落ち着く話。人間社会の縮図をちょこっと垣間見るようなおもしろさ。
<禿鷹>
禿鷹に襲われつづける私は、靴も靴下も食いちぎられ、今は脚そのものがやられている。そこに紳士が通りかかった。
すみ これは気持ちはわかるってことで納得のお話。
<人魚の沈黙>
オデュッセウスは怖ろしい人魚の歌声から身を守るため、両耳に鑞を詰めこんだ。しかし、人魚には歌声よりも怖ろしい、沈黙という武器があった。
にえ これはなるほどね、とおもしろさが納得できた。
<プロメテウス>
プロメテウスについて4つの言い伝えがある。
すみ これはまた、わかったような、わからないような、どちらかというと、わからなかった(笑)
<喩えについて>
賢者の言うことは喩えばかりだ。たとえば、賢者が「かなたへ赴け」と言ったら、それは路を渡ってむこうへ行けという意味ではない。
にえ こりゃもうさっぱり。禅問答?
<万里の長城>
万里の長城の着工50年前、中国全土にわたって、建築学、とりわけ築城に関する学問こそ最も重要な学問だとされた。私は運のいいことに、下級学校の卒業試験を終えた年が長城の建築が始まった年だった。
すみ これは語り手が中国に住む中国人で、万里の長城について語る、という設定。だからなんだか違和感があって、不思議な感じ。