=「すみ」です。 =「にえ」です。 | ||
「シミソラ」 ルース・レンデル (イギリス)
<角川書店 文庫本> 【Amazon】
ウェクスフォードは流行病で病院へ。担当医は黒人だった。後日、その担当医から自分の娘が 消えたと電話がある。恵まれた中流家庭の少女はなぜ失踪したのか。少女の生死は? | ||
わあ、もう、何から話していいか、わからない〜。 | ||
落ち着いて、落ち着いて(笑) 久々のレンデル新刊は、ウェクスフォードシリーズでした。 | ||
順番的には、「眠れる森の惨劇」と「聖なる森」のあいだに書かれたものなのよね。 | ||
なんで日本出版があとになったかわかるような気がする。この本は、「眠れる森の惨劇」や「聖なる森」のような派手さはないのよね。いつものウェクスフォードシリーズって感じ。 | ||
ファンとしてはもちろん、そのほうが嬉しいんだけどね。まあ、それは置いといて(笑)、これは今まで以上に味わいのある、深い作品でした。地味でも深い!! | ||
今回は人種差別がテーマになってるよね。 | ||
レンデルは政治家だったりしたので、社会情勢にはとても敏感なんだけど、この本では有色人種(カラード)と失業という、イギリスの現代社会における悩める部分がきっちり書かれてた。 | ||
背景は、通常営業のキングスマーカム。邸に住む金持ちと貧困にあえぐ人々。ウェクスフォードの家庭の悩みは、長女夫婦の揉め事。ウェクスフォードのいつものアレつきの捜査。と安心して読める定番もの。 | ||
アレつきね(笑) | ||
それに今回は、職業安定所とそこに通う人々、いろんな国から来たカラードたち、と味付けが加わってる。 | ||
自分に差別意識はない、偏見はないと信じたいウェクスフォードに、レンデルは辛辣。ほんと、きつい人(笑) まあ、だからこそ、人種問題がより浮き彫りにされていくのよね。 | ||
そうね。カラードにしても、ただの差別される被害者たちという単純なものじゃなく、エリート意識の強い人々、貧困のなかでも明るく、強く生きようとする人、抵抗する気もなくして流されている人、といろんな人たちが登場して、問題の深刻さがよりくっきりしてる。 | ||
それにしても、今回は登場人物が多いね。メモするか、きっちり把握しながらゆっくり読んだほうがいい。例によって、伏線ひきまくりで、最後の最後に一気に謎解きが来るから。 | ||
地味だなんて言ってしまったけど、殺人が何度か起きるし、あいだの謎解きなんかもあって、メリハリはきいてるよね。
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捜査のメンバーも、ウェクスフォードとバーデンの二人に、このところ加わったヴァインとカレンが今回も入ってて、4人になってるしね。 | ||
しかし、ヴァインってレンデルの別名と同じ名前だけど、それって何か意味があるのかな? | ||
最初見たとき一瞬、あ、こんどはウェクスフォードに代わって、このヴァインが主人公のシリーズになるのかな、なんて思ったけど、いくらなんでもねえ。 | ||
レンデルとはいえ、70歳過ぎて新シリーズというのは・・・(笑) | ||
それにしても、中盤に関しては、ハデハデ女やオイロケ女が出てきて、ウェクスフォードを翻弄してくれるし、最後の結末に関しては、いつにも増して驚愕的だったし、これを地味とは片づけられない。 | ||
うん。途中で休むことなく一気に読めたし、とくに鳥肌ものの結末に関しては、調べ上げた事実をもとにして書くレンデルじゃなければ書けないようなズシンと重いものだったし、このところのウェクスフォードものは読みやすくなったし、より味わい深くなったね。 | ||
ちょっと昔のほのぼの感が薄れてきて、淋しい気もするけどね(笑) | ||
でもさ、最後の5行は、ほんとにもう、ゾクゾクッとした。この5行のためだけでも読む価値ありって気がするね。 | ||
するする! それにしても、今までとは違う悲劇の味わいだったね。 | ||
う〜ん、そうだね。ウェクスフォードシリーズにもなく、ノンシリーズにもなく、ヴァイン名義にもなく、あえて言うなら、「カラー・パープル」なんかを書いたアリス・ウォーカー的な悲しみがあった。 | ||
やりきれない、つらい、悲しい、でもこれが現実ってかんじね? | ||
というわけで、またまたレンデルの新しい一面を見せつけられた作品でした。 | ||