すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「クライム・マシン」 ジャック・リッチー (アメリカ)  <晶文社 単行本> 【Amazon】
生涯に350篇以上の作品を残した短篇の名手ジャック・リッチー(1922年〜1983年)の初めてのまとまった形での作品集。
17編を収録。
クライム・マシン/ルーレット必勝法/歳はいくつだ/日当22セント/殺人哲学者/旅は道づれ/エミリーがいない/切り裂きジャックの末裔/罪のない町/記憶テスト/こんな日もあるさ/縛り首の木/カーデュラ探偵社/カーデュラ救助に行く/カーデュラの逆襲/カーデュラと鍵のかかった部屋/デヴローの怪物
にえ これは、短篇の名手ジャック・リッチーの、初めてのまとまった形での邦訳作品集だそうです。お名前も存じませんでした〜。
すみ アメリカでも扱いがいいとは言えなかったみたいね。ジャック・リッチーは350篇以上の短編を書き、ヒッチコックや多くの作家に絶賛されながらも、生前に出た短篇集はたったの1冊、しかも映画がらみでの出版だったそうで。
にえ いやでも、読めばわかるよね、多くの作家が嫉妬するほどに褒めまくったというのは。ホントにこれはもう素晴らしく良質な短篇揃いで。
すみ そぎ落としまくって引き締まった文章がキリッとビシッとキマっていて、辛口のユーモアは効きまくりで、ストーリーは最初からおもしろくて、最後にはもうヒネリの上手さに手を叩きたくなるほどで。
にえ 一昨年あたりから、短篇集はアタリが多いんだけど、これはその中でも上位も上位だね。
すみ うん、ホントにホントに楽しめたっ。こりゃもうあれこれ語るより、とにかく読んでみてよと大絶賛でオススメでしょう。読んで、読んでっ。
<クライム・マシン>
殺し屋リーヴズのもとに、ヘンリーと名乗る男が訪ねてきた。ヘンリーはタイム・マシンに乗って、リーヴズが過去に犯した3件の殺人を見てきたと言うが本当だろうか。とても信じられる話ではなかったが、ヘンリーの言うことは細部まで正しかった。
にえ ヘンリーはタイム・マシンで切り裂きジャックの正体を見てきたらしいです。知りたい方はご確認を(笑)
<ルーレット必勝法>
マットが経営するカジノにおかしな客が通ってくるようになった。エドワード・シボーグというその男は、たいした額ではないが毎晩のように勝ち続け、帰りにはパトカーで送ってもらっていた。しだいに賭ける額を上げはじめたシボーグ。彼にはなにか特別な必勝法があるのだろうか。
すみ ルーレットの必勝法なんてあるはずないと思っていたマットも、今度ばかりは信じるしかなさそうなんだけど・・・。
<歳はいくつだ>
味気ない人生を歩んできたターナーは、ある日突然、医師に余命4ヶ月だと告げられた。たった4ヶ月でなにをすればいいというのか。ターナーは移動サーカスの入り口でチケット係が、二人の娘を連れた父親を罵り、恥をかかせているのを目撃した。ターナーは32口径のリボルバーと弾薬を買うことにした。
にえ たしかに、楽しいはずの一日がまったくの他人であるだれかのせいで不快な一日になってしまうことはありますよね。そういう他人を不快にするようなやつは、何度でもやってるとは考えられるけど、殺しちゃう?(笑)
<日当22セント>
ホイットコムは4年間、刑務所で過ごしたあとで、冤罪と判明して釈放された。4年前の裁判でホイットコムが有罪となったのは、無能な弁護士と、真実を語らなかった二人の目撃者のためだった。さて、刑務所を出たホイットコムはなにをするのか。
すみ 戦々恐々とする弁護士と目撃者・・・最後は良い意味での苦笑いでした。楽しいなあ。
<殺人哲学者>
ウィーラーは訪ねてきた二人の男を歓迎した。彼は殺人を犯したが、それは捕まって、刑務所に入れられるためのものだったからだ。
にえ 偉そうに語るウィーラーにムカムカ。でも最後には、ねっ。
<旅は道づれ>
飛行機で隣の席に乗り合わせたミセス・ボーマンとミセス・ラリーは、どちらの夫も鉄道で働いていることがわかってすぐに意気投合し、それぞれの身の上を語り合った。
すみ 相手の話をほとんど聞かないまま、自分のしたい話をベラベラやってる、典型的なご婦人2人。それでも真実は見えてくる。
<エミリーがいない>
アルバートは妻のエミリーがいなくなった理由を、カリフォルニアの友人に会いに行ったのだと答えたが、エミリーのいとこミリセントは、エミリーにはカリフォルニアに住む友人などいないことを知っていた。
にえ アルバートの前妻はヨットで事故死しているの。それを目撃したのはアルバートだけ。で、この話の結末は?
<切り裂きジャックの末裔>
精神科医である私は、自分が切り裂きジャックの直系の子孫だと主張するポムフレットという患者を診ることになった。ポムフレットは満月の夜になると、人を殺したいという衝動が起きるという。私は資産家の娘と結婚したが、遺産はすべて妻の姉に渡ってしまった。
すみ 精神科医の妻は支配的な性格で、父親と姉をずっと精神的に支配してきたそうなんだけど、今は夫と言い争っては負けてばかり。あれ、話が違うじゃない、と思ったら。これはかっこいいラストだなあ。
<罪のない町>
ミセス・プルーイットは不満だった。女性クラブ連盟の今月の課題は「青少年犯罪」だというのに、エルムズデールの担当のクララ・プルーイットは、この地域には報告するような問題がなにもないというのだ。最近起きたことといえば、財産を隠し持っていると噂のあったスワンソンさんが、散歩中に崖から落ちたことぐらいだという。
にえ けっこう灯台もと暗しというか、身近な人が殺人犯だとかって疑わないものなのかもね。こういうことはちょっと離れた立場の人のほうが判断しやすいのかも。
<記憶テスト>
ミス・ハドソンは叔父を毒殺して刑務所に入ってからの24年、模範囚でありながらも、仮釈放が認められていなかった。じつは彼女は叔父の他にも、叔母と二人の従兄弟を殺していたのだ。しかし、それには同情すべき理由があった。
すみ ミス・ハドソンの仮出所は、最終的には精神科医の判断に任されることに。そしてラストにうひゃっ。
<こんな日もあるさ>
ワトスン夫人は警察に、48才の兄ヘルムート・プリングルが行方不明になったことを届けに来た。ヘルムートと同じような年齢で、同じような身体的特徴を持つ遺体は収容されていたが、その男はアルバート・ヘネシーであると姪によって確認されていた。
にえ ミステリの定番? 死体確認でのトリックも、この方にかかるとおかしな様相に(笑)
<縛り首の木>
ミルウォーキー市警察のヘンリーとラルフは、グリーン・ベイへ行った帰りに車が動かなくなり、近くの村のホテルで一泊することにした。その村は車もテレビも電話もなく、小学校の校庭の木には縛り首の縄が吊されていた。
すみ なんかこの村では魔女裁判で処刑された女性の呪いのために、年に一人ずつ生け贄が必要みたいなんですけど〜。
<カーデュラ探偵社>
営業時間が夜8時から朝4時までのカーデュラ探偵社に、オリヴィア・ハンプトンという女性が依頼に来た。伯父のヘクターが明日の朝、遺言を書き替えるために、身内の者に命を狙われているというのだ。カーデュラが屋敷を訪ねてみると、その身内というのは、ヘクターが世話を焼いている変わった人たちで、血は繋がっていないようだった。
にえ ここから4つは探偵カーデュラのお話。カーデュラとはいったい何者かってのは、4話を通じてはっきりとは書かれていませんでした。でも、わかりますよね?(笑)
<カーデュラ救助に行く>
浮気調査を終えて事務所に帰ろうとしていたカーデュラは、若い女性がハンドバッグをひったくられそうになったところを助けた。ところが、その女性はなぜか怒って行ってしまった。翌日、同じような時刻に同じ通りを歩いていると、驚いたことに、同じ女性が同じひったくりに襲われていた。
すみ カーデュラにはヤーノシュ気の利く従僕がいるの。カーデュラはある国で高い身分にあってお城も持っていたけど、今は探偵で稼ぐしかない。夜しか稼働しないんだけど。いいなあ、この設定っ。
<カーデュラの逆襲>
ナディアが、カーデュラの仲間が次々にヴァン・イェルシングにやられていると伝えに来た。イェルシングの一族は何代にも渡り、カーデュラの仲間たちを倒すことに血道を上げているのだ。カーデュラはすぐにも手を下したかったが、イェルシング家には十字形の象牙細工をふんだんに使ったチョーカーがあり、接近するのが難しかった。
にえ あれ、この話は珍しくヒネリが足りないじゃない、と思ったら、ラストでニヤリ。
<カーデュラと鍵のかかった部屋>
カーデュラ探偵社に依頼に来たトンプスンは、盗まれたヴァン・ゴッホの絵を取り戻してほしい、そのためなら報酬ははずむと言った。しかし、そのヴァン・ゴッホの絵は本来、美術館にあるべきものだった。
すみ 絵画盗まれものもミステリの定番? これもまた、そういうことでしたかと最後にはニンマリ、のダブル(笑)
<デヴローの怪物>
ジェラルド・デヴローの屋敷では、以前から怪物が出ると噂があった。この噂は、祖父の弟レスリーが獣のような姿に変身し、姿を消したことに由来していた。そしてとうとう怪物の犯行と思われる殺人事件が起きてしまった。
にえ デヴロー家の召使いは、ず〜っとジャーマン家の人たち。この二つの家系はきっても切り離せない関係みたい。