=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「黄色い雨」 フリオ・リャマサーレス (スペイン)
<ソニーマガジンズ 単行本> 【Amazon】
アイニェーリェ村に住む人々は、一人、また一人と去っていった。最後に一組の老夫婦が残ったが、妻のサビーナは自殺して、残ったのは老いた男と雌犬だけになってしまった。 | |
スペインの注目作家フリオ・リャマサーレスの初邦訳本です。 | |
フリオ・リャマサーレスは弁護士になったあとジャーナリストに転身、早くから詩人として知られていた方なんだってね。で、この「黄色い雨」は2作めの長編小説だそうで。 | |
読めばすぐ、なるほど詩人の書いた小説だと思うよね。文章にしても、形式にしても、ああ、詩人だなと納得。 | |
まず驚いたのは、普通なら改行するだけのところをすべて一行あけてあって、普通なら一文字下げて書き始めるところを、一文字上げて書き始めているところだよね。最初の一文字だけがピョンと飛びだしてるの。 | |
うん、開いて見たときには、こりゃまいったと思った(笑) でも、意外と読みやすくなかった? 考えてみれば、なんで改行するたびに一文字下げなくてはいけないのかしら。わかりやすくするためだったら、この本みたいに一文字ピョンと飛びだしていたほうが、いっそうわかりやすいかも。 | |
飛びだしてると気になりすぎるから逆効果ってこともあるかもよ。この小説だと、ときおり「しかし」とか「あの年」とか「それから」とかって書き出しがわざと重ねてあって、詩のように韻を踏んでいるみたいで効果的だなと思ったけど。 | |
第1章の「だろう」の連続にも戸惑ったよね。この10ページぐらいの章の、文のほとんどが「だろう」で終わっているの。 | |
この先も全部そうなのかと、つい先のページをパラパラッとめくっちゃったよね(笑) でも、読みはじめにはこの第1章の内容はさっぱりわからなかったけど、最後まで読んで、すぐに第1章に戻ったら、そういうことか〜と思って、「だろう」が沁みてきたよ。 | |
時間の流れとしては、第2章→第3章→・・・最終章→第1章ってなってるんだよね。まあ、思い出をたどったりすることが多いから、まっすぐではないけれど。とにかく、くれぐれも第1章で「わから〜ん」と逃げ出したりしないようにってことで(笑) | |
とはいえ、私には最後まで読んでも、良いとも悪いとも言い難いような小説だったけどね。でも、この良いのか悪いのかっていう落ち着かなさが魅力のようにも感じてしまうんだけど。 | |
うん、とにかく暗いんだよね。もうホントに救いのない暗さで、どんどん沈んでいく一方なの。でも、氷の向こうをのぞいているみたいな、ちょっと離れた冷たい美しさがあって、それが落ち着かない気分にさせるのよね。 | |
住んでいた人たちがどんどん出ていって、最後に老いた男が一人だけ残る、その男の話なだよね。隣の村も6軒しか人が住んでる家がなくて。 | |
奥さんは自殺。子供は3人いたけれど、1人は出ていって、2人は死んだみたいね。空っぽの家が建ち並ぶ村で、男は亡霊というか、幻というのか、そういう死んだ人たちと暮らすことになるの。 | |
空家もどんどん朽ちていくし、いろいろな人のいろいろな思い出は、もの悲しいものばかりよね。 | |
男はどんどん孤独に深くはまっていくんだよね、抜け出せないところまで。 | |
なんて言うかな、読んでいくうちにどんどん静かな気持ちになっていくよね、重苦しいんじゃなく。ん〜、好きそうだったらどうぞってことで。 | |