すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「ラヴクラフト全集 5」   H・P・ラヴクラフト (アメリカ)  <東京創元社 文庫本> 【Amazon】
幻想と怪奇の作家H・P・ラヴクラフト(1890〜1937年)の作品集(全7巻)。第5巻は短編小説8編を収録。
神殿/ナイアルラトホテップ/魔犬/魔宴/死体蘇生者ハーバート・ウェスト/レッド・フックの恐怖/魔女の家の夢/ダニッチの怪
にえ ラヴクラフト全集の第5巻です。この巻は、クトゥルー神話全開って感じかな。
すみ 狂える詩人アブドゥル・アルハザードの「ネクロノミコン」が出まくりだったしね。
にえ 巻末におまけで、「資料:『ネクロノミコン』の歴史」ってのがついてるんだよね。紀元前730年頃に書かれた「アル・アジフ」がギリシア語に翻訳されて「ネクロノミコン」という題名になり、他の言語になり、で、そのあいだに何度も焚書の憂き目にあったという。
すみ いいね〜。ラヴクラフト全集を読んでいて、やっぱり一番気になるのが「ネクロノミコン」だもんね。アルハザードが幻の円柱都市アイレムを見たってくだりなんか、おわ〜っと声が出そうになっちゃった(笑)
にえ で、第5巻なんだけど、これまで1巻ごとに、これだ!ってのが1作ずつ入っていたのだけど、この巻だと、「ダニッチの怪」かなあ。
すみ そうだね、おもしろさからいうとそれかなあ。正直言って、私的には今までで一番盛さがった巻なのだけど。
にえ なんかパッとしないって感じはあったよね。そのぶん、巻末の資料と巻末解説が豪華というか、かなり興味深かったから、それで相殺されたような気もするけど。
すみ まあ、全7巻中の5巻めってのはこういう感想になりがちなのかもね。とりあえず、残る2巻が楽しみっ。
<神殿>
1917年8月20日に投げ込まれたメッセージボトルには、潜水艦U29の艦内で起きた、恐るべき出来事について書かれた文章が入っていた。すべては6月18日の午後、U29がイギリス貨物船ヴィクトリー号の沈没を目撃したことから始まる。 U29の甲板に打ち上げられた死んだ船員のポケットには、月桂冠をいただく若者の東部をあしらった、きわめて奇態な象牙細工が入っていた。
にえ 潜水艦のなかという閉塞感が恐怖を煽ります。欲から手放せなくなった物が引き起こす恐怖、早く手放せばいいのに、でも、なかなか手放せない気持ちもわかるのだなあ。
<ナイアルラトホテップ>
ナイアルラトホテップがエジプトからやって来た。ファラオのごときその人物を見かけた者はみなひざまずくが、その理由は自分にさえわからなかった。
すみ これは散文詩っぽい小説で、ラヴクラフトが「ナイアルラトホテップ」という言葉の響きやリズム感を楽しんで、もてあそんでる様子がうかがえるような。まあ、不気味なんですが(笑)
<魔犬>
セント・ジョンがずたずたの死体になりはててしまった。500年前の墓場荒らしだった男の墓を掘り起こした私たちは、その白骨の首に奇妙な魔よけのようなものがさげられていることに気づいた。
にえ これは読み終わってしまうと、ほとんどなにも印象に残らないお話だった。でも、狂える詩人アブドゥル・アルハザードが「ネクロノミコン」の著者だとはじめてわかる記念すべき作品なのだとか。
<魔宴>
一般の人がクリスマスと呼ぶその日、ユールの日に、私は故郷に戻った。その海辺の古びた町に我が一族は墨付き、1世紀に1度、祝祭を行うことになっていた。
すみ 不気味な一族の子孫であるがために、決められた儀式を行わなければならない男。一族はほぼ滅びかけていて、集まったのは自分一人。 屋敷で待つ老人一人・・・湿度の高い、いい雰囲気が出てるでしょ〜。
<死体蘇生者ハーバート・ウェスト>
ハーバート・ウェストとは、アーカムのミスカトニック大学医学部の時代から友人であった私は、ハーバートが研究する死体蘇生の実験を手伝ってきた。教授たちから禍々しい研究であると賛同を得られなかったため、私たち二人はメドウ・ヒルの奥のチャップマン農場の廃屋でひそかに実験を続けることにした。
にえ 死体を手に入れては蘇生実験を繰り返す、二人の医師のお話です。まあ、どうなるかは見当がつくにせよ、その紆余曲折もラストもなかなかおもしろかった。
<レッド・フックの恐怖>
ニューヨーク警察の刑事トーマス・F・マロウンは、ブルックリンのバトラー・ストリート署に配属されていたとき、レッド・フックの問題に気づいた。そこは混血の者たちが澄むむさ苦しい地区で、ロバート・サイダムという博学の隠者がフラットを持っていた。そこでは悪魔的な儀式が行われているのではないかという噂があった。
すみ 書き出しには引きこまれてしまったけれど、その後の展開はまあ、いかにもって感じで、これといって興味をひかれずに終わっちゃったかな。
<魔女の家の夢>
アーカムのミスカトニック大学の学生であるウォルター・ギルマンは、かつて刑務所を逃げ出した魔女キザイア・メイスンが隠れ住んだといういわれのある屋根裏部屋に住んでいた。ギルマンはそこで、不気味な夢ばかり見るようになってきた。
にえ これはかなり緩慢なストーリー展開で、途中で飽きてしまった。ラヴクラフトも散漫だからという理由で、発表する気はなかったみたい。
<ダニッチの怪>
ダニッジの村のはずれにある大きな農家で1913年2月2日、ウィルバー・ウェイトリイが生まれた。ウェイトリイ家は近親相姦を繰り返し、血筋は汚れていた。ウィルバーの母は35才の白化症で、魔法使いと噂される、なかば狂った老齢の父親と暮らしていた。父親のはっきりしないウィルバーは、生まれて7ヶ月めに歩きはじめ、11ヶ月めにはしゃべりはじめて、大人のような話し方をしだした。
すみ これはおもしろかった。怖くはないし、最後まで読むといささかバカバカしい気もするけれど、でも、やっぱり不気味な成長を遂げる子ども、とりまく田舎者らしい田舎者の村人、って設定からして良かった〜。