=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「P・G・ウッドハウス選集1 ジーヴズの事件簿 」 P・G・ウッドハウス (イギリス)
<文藝春秋 単行本> 【Amazon】 20世紀最高のイギリス・ユーモア作家と称されるP・G・ウッドハウス(1881〜1975年)が数多く残したジーヴズ・シリーズ作品から選出した傑作短編集。 ジーヴズの初仕事/ジーヴズの春/ロヴィルの怪事件/ジーヴズとグロソップ一家/ジーヴズと駆け出し俳優/同志ビンゴ/トゥイング騒動記/クロードとユースタスの出帆遅延/ビンゴと今度の娘/バーティ君の変心/ジーヴズと白鳥の湖/ジーヴズと降誕祭気分/ガッシー救出作戦 | |
100冊以上の著作があり、世界中で翻訳出版され、愛されているというP・G・ウッドハウスは、なぜか日本でだけこれまでイマイチだったのだとか。それが没後30年、選集のかたちで出るというので読んでみました。 | |
国書刊行会からも<ウッドハウス・コレクション>が出て、今年(2005年)はまさに、ウッドハウス・イヤー。日本だけで考えれば、ウッドハウス元年って言ってもいいのかもね。 | |
後世の作家たちに与えた影響もそうとうなものみたいね。アントニイ・バークリーの作風とか、ドロシー・L・セイヤーズのピーター卿と従僕ヴァンターのシリーズとか、みんなP・G・ウッドハウスの影響を受けているのだとか。 | |
この本はウッドハウスの代表的なシリーズである、ジーヴズ&ウースターものの短編集なのよね。このシリーズは長編が11編、短編はちょっと数を把握できないぐらいたくさんあるみたい。そのたくさんの短編の中から選んだ12作と、ジーヴズ&ウースターのシリーズが誕生するきっかけとなった作品1作の合計13作が収録されているの。 | |
最後にニンマリしてしまう、楽しいお話ばかりだったよね。翻訳文は、あえて喜劇的な語り口を避けた平易な文章に徹したそうで、いかにもユーモア小説って感じのものが苦手な私でも、逃げ出したい気持ちにはまったくならず、楽しいだけで読めたな〜。 | |
短編集とはいっても、ジーヴズとウースター以外も共通する登場人物がほとんどだから、長編小説を読んでいるときと同じように、登場人物それぞれ、それからその登場人物たちが織りなす人間模様に親近感がわいていくよね。そのへんで安心して読めるところがよかったな。読んでて疲れない。 | |
登場人物を紹介していけば、まずはほとんどの作品の語り手でもあるバートラム(バーティ)・ウースター。この人は独身で、ウィロビー叔父からもらう金で遊び暮らしていて、かなり気楽な身分。 | |
ジーヴズに言わせれば、頭は悪いが、性格は明るくてやさしいってことになるのよね。 | |
そういうジーヴズは機転が利いて、記憶力もよくて、知識も豊富、しかも行動も早くて、知人をどんどん増やしていくから、日頃からの情報収集もそうとうなもの。だから、バーティのやろうとすることの先へ先へと手回しは完璧なのよね。 | |
でも、いい従僕なのかどうかは微妙なところだよね。だって、ご主人様であるバーティを完全に見下してるんだもん(笑) バーティが自分の気に入らないものを買ったりすると、慇懃な態度で露骨に不快を露わにするし。 | |
気に入らなきゃ、かってに人にあげたり、燃やしちゃったりもするもんね(笑) ジーヴズがバーティにこだわるのもわかる。こういうボケボケの主人だからこそ有り難がられる存在で、他の人にとってもいい従僕かどうかはわからないよね〜。 | |
まあでも、読んでる私たちとしては、主人と従僕、その力関係が薄い表面の下で逆転してるってところがなによりおもしろいんだけどね。 | |
で、次によく出てくるのがビンゴ・リトルだよね。ビンゴはバーティの幼なじみで親友、モーティマー・リトルっていう湿布で大儲けした伯父に養われているんだけど、バーティよりさらにオバカさんで、しかも惚れっぽいの。 | |
毎度のように新しい女性を好きになって、バーティに泣きついてくるのよね。その女性っていうのがまた個性派ぞろいっていうか、毎回、毎回、まったくタイプの違う女性で。 | |
ビンゴのモーティマー伯父も、なにげに登場回数が多いよね。バーティとこの人は別に関わらなくても良いはずの立場なのに、ビンゴのせいでとんでもない関わりを持つことになっちゃうんだけど。 | |
バーティの経済的援助者であるウィロビー叔父は、この本のなかではほとんど出てこなかったよね。機嫌を損ねられたら大変だっていうバーティの気遣いはヒシヒシと伝わってきたけど(笑) | |
アガサ叔母はよく出てきたけどね。バーティはアガサ叔母からはなんの援助も受けてないから、嫌われても経済的に打撃を受けるようなことはないんだけど、とにかくこの叔母が怖くて、逆らえないみたい。 | |
よかれと思って言ってるんだろうけど、アガサ叔母から言われることは、バーティを困らせるようなことばかりなんだよね。 | |
あとはクロードとユースタスでしょ。バーティの従弟にあたる双子なんだけど、この二人がまあ、ホントにろくでなしというか、本人たちは楽しい悪ふざけぐらいのつもりでやっていることが度を超してるというか、超しすぎてるというか(笑) | |
だいたいこんなところだよね。このメンバーじゃ年中、騒動が起きるのも当たり前。最後にはジーヴズがスパッと解決してくれるんだけど、これがまた痛快ではあるんだけど、スッパリしすぎていいのかなってぐらいで(笑) とにもかくにも楽しいですよ〜。オススメですっ。 | |
<ジーヴズの初仕事>
新しく従僕を雇うことになり、紹介所からやってきたジーヴズを雇うことに決めたバーティは、レイディ・フローレンスと婚約中だった。そこに電報が届き、フローレンスからイーズビーにすぐ帰るようにと連絡があった。戻ってみると、フローレンスはバーティに、ウィロビー叔父の暴露本出版を阻止しろと命じた。 <ジーヴズの春> 大衆食堂のウェイトレスに惚れたビンゴ・リトルに頼まれて、モーティマーの説得に行くバーティ。ジーヴズの勧めどおりに流行作家ロージー・M・バンクスの身分を越えた愛を描いた小説でモーティマーを懐柔できたはずだったが。 <ロヴィルの怪事件> アガサ叔母から手紙が来て、ロヴィル=シュル=メールに呼び出されたバーティ。アガサ叔母はそこで知り合った令嬢とバーティを結婚させたがっているらしい。 <ジーヴズとグロソップ一家> ジーヴズの夏の休暇中、バーティはなんとか自分を無能呼ばわりするジーヴズの鼻をあかすつもりだった。アガサ叔母のところへ行く途中で、ビンゴに出会ったバーティは、よりにもよってビンゴの今度の恋の相手がホノーリア・グロソップだと聞かされて驚いた。さらに驚いたことに、そのあと会ったアガサ叔母に、ホノーリアとの結婚を勧められた。 <ジーヴズと駆け出し俳優> アガサ叔母から逃れてニューヨークに滞在中のバーティとジーヴズ。そこにアガサ叔母から手紙が来て、ワシントンに行く途中に立ち寄るシリル・バシントン=バシントンの面倒をみてくれと頼まれた。ニューヨークで演劇家とつきあいのあったバーティは、さっそくシリルを演劇家たちに紹介したのだが……。 <同志ビンゴ> ロンドンに戻ってきたバーティは、ビンゴの新しい恋の相手を知って驚いた。彼女の父親はブルジョワを全員殺戮し、パーク・レーンいったいを略奪する計画で仲間を集めており、なんとビンゴもその仲間入りをしていたのだ。 <トゥイング騒動記> 8月のロンドンを逃れ、グロースターシャー州にあるトゥイング・ホールに出向いたバーティは、クロードとユースタスに誘われて、牧師たちを賭けの対象とした「長説教大賞ハンデ戦」に一枚加わることにした。そこにはビンゴもいて、牧師館の娘に夢中になっていた。 <クロードとユースタスの出帆遅延> とうとうオックスフォードを放校になったクロードとユースタス。アガサ叔母は二人を南アフリカに送ることに決めたようだが、二人は行く前に泊まったバーティのところから出発しようとはしなかった。なぜなら、二人ともマリオンという娘に恋をしたからだ。 <ビンゴと今度の娘> <のらくら倶楽部>が大掃除のため、会員をよそに預ける2週間、バーティとビンゴは<熟年自由倶楽部>に腰を据えることになった。その倶楽部のウェイトレスに恋をしたビンゴは、またもバーティにモーティマー伯父を説得させようとした。 <バーティ君の変心> (この話だけ語り手はジーブズ)バーティが結婚を望みはじめることをいち早く察したジーヴズは、バーティの気をなんとか逸らそうとブライトンへ連れ出した。そこではうまく行かなかったが、帰りの道程で女学校の生徒を車に乗せてやることになり、着いた女学校で計略を巡らすことにした。 <ジーヴズと白鳥の湖> アガサ叔母に呼び出され、ウーラム・チャーシーに赴いたバーティは、そこにビンゴがいて驚いた。なんとビンゴはバーティの従弟トーマスの家庭教師をやっていたのだ。ビンゴは悪がきトーマスのせいで家庭教師をクビになりそうになっていた。 <ジーヴズと降誕祭気分> ジーブズは予定通りクリスマスをモンテ・カルロで過ごさないと知って機嫌を損ねたようだが、バーティはレディ・ウィッカムからの誘いを受けることに決めた。ミス・ウィッカムに恋をしていたからだ。しかし、行ってみるとそこには憎きタッピーもいた。バーティはミス・ウィッカムが教えてくれた方法で仕返しをしてやることにした。 特別収録作品<ガッシー救出作戦> アガサ叔母はバーティにニューヨークへ行けと命じた。従弟のガッシーがヴォードヴィルのステージに立つ娘と恋に落ちているらしいのだが、それをバーティに止めさせようとしていたのだ。 | |
■国書刊行会「比類なきジーヴス」収録該当作 <ジーヴズの春><ロヴィルの怪事件><ジーヴズとグロソップ一家><ジーヴズと駆け出し俳優><同志ビンゴ> <トゥイング騒動記><クロードとユースタスの出帆遅延><ビンゴと今度の娘> ■国書刊行会「それゆけ、ジーヴス」収録該当作 <ジーヴズの初仕事><バーティ君の変心> ※<ジーヴズと白鳥の湖><ジーヴズと降誕祭気分><ガッシー救出作戦>は重複なし。 | |