=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ラヴクラフト全集 4」 H・P・ラヴクラフト (アメリカ)
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幻想と怪奇の作家H・P・ラヴクラフト(1890〜1937年)の作品集(全7巻)。第4巻は短編小説6編と長編小説1編とエッセイ1編を収録。 宇宙からの色/眠りの壁の彼方/故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実/冷気/彼方より/ピックマンのモデル/狂気の山脈にて/資料:怪奇小説の執筆について | |
ラヴクラフト全集も第4巻まで来ました。この巻にはラヴクラフトのエッセイもあって、いつもどういう流れで小説を書いているか、丁寧に説明してくれてます。 | |
こういうのを読むと、真面目で几帳面な人だったんだろうな〜と思うよね。現代作家なら、おそらく大部分の方がこういうのを説明するときは、おもしろおかしく茶化しながら書いていくんだろうけど、ラヴクラフトさんはホントに生真面目に書いてらして。 | |
この巻の目玉は「狂気の山脈にて」ってことになるんだろうね。裏表紙に「著者独自の科学志向を結実させた超大作」とあったけど、ホントにその通り、地球上の歴史がラヴクラフトによって書き替えられ、暗黒の歴史が詳細かつ鮮明に語られてるって感じ。これぞクトゥルー! と感動もの。 | |
ただ、歴史を淡々と語られていくから、ちょっと眠くもなるよね(笑) 個人的にぜったい読んでほしいと思う傑作は、「宇宙からの色」だな。これは物凄い迫力だった。 | |
うん、「宇宙からの色」は凄かったね、ラヴクラフトの気迫に圧されまくるようだった。巻末解説によると、ラヴクラフト自身、1936年11月10日付の手紙に「『宇宙からの色』以外に全体としてわたしを満足させる作品はありません」と書いているらしいよね。 | |
納得だよね〜。なにが凄いとか説明するようなものじゃなくて、ホントにもう全体で襲いかかってくるような、こちらの体が硬直しそうになるような。「宇宙からの色」を書いたのが1927年3月ってことだから、その後の10年近くは、これを超えるものを書きたい、でもなかなか超えないって意識もあったのかな。 | |
巻末解説といえば、挿絵もタップリ紹介されているんだけど、「狂気の山脈にて」は挿絵付きで読みたかったかも。絵がないと書いてあることがわからないっていうんじゃないんだけど、淡々とした描写も絵があれば多少は気晴らしになって、もうちょっと楽しく読めた気がする。 | |
とにかく、ラヴクラフトの世界に深入りしたい方は「狂気の山脈にて」は必読、そうじゃない方は、そうは言っても「宇宙からの色」は読んでみてもいいんじゃな〜いってことで(笑) | |
<宇宙からの色>
アーカムの西の丘陵地帯には、「焼け野」と呼ばれる人の住まない場所がある。なぜそうなってしまったかは、アミ・ピアースという老人が詳しく知っていた。それは1882年6月、アミの親友ネイハム・ガードナーの家の井戸のそばに、空から大きな石が落ちてきたことから始まる。 | |
アミもネイハムも、ごくごく素朴な田舎の農家の人。隕石が落ちてきたために始まる不幸に立ちつくすだけ・・・。小さくまとまった彼らと、襲いかかってくる驚異的な不幸の大きさのあまりの規模の違いに、こちらまで愕然とさせられるのだなあ。ホント、どれほど奇抜な話であろうと、これは真に迫りすぎってほどです。 | |
<眠りの壁の彼方>
1900年から1901年にかけて、私がインターンとして勤めていた州立精神病院に、ジョー・スレイターという男が収容されていた。南部における「貧乏白人」に相当する、蛮的な衰退をした一族の末裔であるこの男は、身の程にあわないとしか思えないほど絢爛たるヴィジョンを持った夢に支配されているようだった。 | |
昔の人は酷いもんだね。生まれが賤しいから、見た目が汚らしいから死んでもいいとか、頭が悪いから死んでもいいとか、平気で書いちゃうんだもの。それはともかく、ジョー・スレイターの夢は、いったいなにに支配されていたのでしょう。う〜ん、まあ、それほど意外性はないかな。 | |
<故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実>
アーサー・ジャーミン卿は自殺した。その理由について説明するためには、ジャーミン家の狂気が、ウェイド卿から始まったところから語らなければならない。ウェイドはアフリカへ行き、そこで知り合ったポルトガル商人の娘と結婚したが、屋敷に戻っても、だれにも妻の姿を見せようとしなかった。 | |
何代にもわたって語られるジャーミン家の当主たちのお話。「アフリカの白い神に支配される白い類人猿の灰色の都市にまつわる伝説」がこの一家の狂気と結びついていくの。オチはわかっちゃうにしても、なかなかおもしろかったな。 | |
<冷気>
1923年の春、私はニューヨークの西14丁目にある、古い四階建てのアパートに住むことにした。私の部屋の上に住んでいたのは、自分の特殊な病気の治療のために部屋を塩化アンモニウムで冷やしている医師、ムニョス博士だった。 | |
病気を治してもらったことをきっかけにして、ムニョス博士の世話を焼くことにした主人公。でも、最初のうちはムニョス博士に多大な敬意を抱いているのだけど・・・。大きなお世話なんだけど、最初に、冷気が怖いって書かないほうが良かったんじゃないかな、なんて思ったりして。 | |
<彼方より>
クロフォード・ティリンギャーストと私は仲違いをして、2ヶ月半ほど会っていなかった。そのティリンギャーストから会いたいと手紙が来て、私はティリンギャーストの自宅の研究室におもむいた。出迎えたティリンギャーストは10週前とはまるで別人のようで、長く使えていた召使いたちもいなくなっていた。 | |
なにか物凄いものを発明して、それで興奮しているらしきティリンギャースト。見せられた私は・・・ということで、典型的な怪奇ものって感じで、かなり小さくまとまってるお話だった。それにしても、ティリンギャーストって名前がスゴイ(笑) | |
<ピックマンのモデル>
見る者の嫌悪感を呼び起こすほど迫力のある絵を描くビックマンは、それゆえに知人たちにも嫌われがちだった。しかし、私がピックマンと疎遠になったのは、他の理由からだった。 | |
吐き気をもよおすほどリアルなバケモノを書くピックマン。って、こう書いただけで、大部分の人にはオチが見えちゃうんじゃないかな。そのわりに引っぱりすぎて、間延びしているように感じちゃったんだけど。 | |
<狂気の山脈にて>
ミスカトニック大学探検隊は、工学科のフランク・H・ピーバディ教授の考案した驚くべきドリルで、南極大陸のさまざまな場所から、深層部の岩石や土壌を確保するために探検に出発した。調査は順調で、南極にかつて多くの生物が棲んでいた痕跡を発見したが、巨大な山脈で、まったく未知なる生命体の標本を発見したことにより、様相は一変した。 | |
南極大陸の奥深くに大山脈があって、そこを調査したところ、地球に人類が現れるより遙か昔に、人類としか呼べないような生命体が文明を築いていたことを発見したの。さあて、それはどういうことでしょうね。話としては、第3巻の「無名都市」がスケールアップしたような感じかな。とにかくこれを読んでおかないと、クトゥルー神話は語れないでしょ。で、この隠された地球史については、「ナコト写本」と「ネクロノミコン」にいろいろ書かれているらしいの。何回も言及されてた。こういう読みたくても読めない謎の本の存在は読者心をソソるなあ(笑) | |