すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「きらきら」 シンシア・カドハタ (アメリカ)  <白水社 単行本> 【Amazon】
日系アメリカ人のタケシマ一家は、アイオワ州で営んでいた食料品店をたたみ、父親の兄であるカツヒサおじさんに養鶏場の仕事を紹介してもらい、ジョージア州に移ることになった。 長女のリンの夢は、家を買って海のそばに住むこと、両親のために家を7つ買ってあげること、大学へ行って、ロケット科学者か有名な作家になること。4つ年下の次女ケイティはリンと一緒にいられればそれでよかった。 リンはきれいで、頭が良くて、やさしくて、そして妹のケイティのことをとても大切にしてくれたから。
すみ 邦訳は2冊めのようですが、私たちにとっては初めての日系アメリカ人作家シンシア・カドハタの小説です。
にえ これはシンシア・カドハタにとって、初のヤングアダルト作品になるみたいね。装丁などからして、邦訳本ではあまりそれを意識せず、大人も読んでほしいって感じなんだけど。
すみ アメリカの読者にしたら、アメリカに住む有色人種の子供の話ってことになるから、やっぱりYA本なんだろうけど、日本人の私たちからすると、日系アメリカ人三世の暮らしってだけでも興味深いからね、それだけで大人でも読み応えがあるかも。
にえ 読んでみると、アメリカに住む日本人の苦労が実感できるよね。それだけじゃなく、小説じたいが持つ美しさも、これなら大人の鑑賞に堪えうるなと思った。
すみ 美しさもだけど、楽しさもだよね。語り手であるケイティが、ちょっとちびまる子ちゃんを彷彿とさせるような元気の良さで微笑ましかった。
にえ それは読んでない人のイメージがそっちの方向に固まっちゃうおそれがあるから、私は言わないようにと思ってたのにっ(笑)
すみ げっ、やっぱり? さりげなく流せば平気かなと思ったんだけど。しっかり者で頭も良くて美人のお姉さんと、勉強もできず、なにをやっても失敗ばかり、でも明るく笑い飛ばすような性格の妹。この姉妹構成もなにげに似てるんだよね。
にえ あんまり自分で努力しようとしなくて忍耐力もなく、でも、他人には意外と辛辣なことを言ったりして、ちょっとだけ悪いことをしてみることにも興味津々、でもじつは小心者で、4つ上のお姉ちゃんを心底慕っていて、見た目以上に思いやりはあって、と親近感を覚える女の子だよね、ケイティは。
すみ リンがケイティをかわいくてしょうがないのもわかるよね。そのリンのほうも頭が良くてなんでも知ってて、いつだってとても頼りになるお姉さんだから、ケイティが慕うのもまたわかるし。
にえ タケシマ一家は、アイオワ州で、アジアの食材を売る小さな店を営んでいたけど、うまくいかなくなって、ジョージア州に移ることになったんだよね。
すみ 父親の兄であるカツヒサおじさんの紹介で、両親ともに養鶏場の仕事をするようになるんだけど、カツヒサおじさんは明るくて、楽しい人なのよね。ケイティは認めないだろうけど、ちょっとケイティに似ているのかもしれない。
にえ そのカツヒサおじさんにしても、測量士になりたいけど、日本人だからその職には就けないっていう辛さを抱えてるんだけどね。
すみ なんで養鶏場で働くんだろうと思ったら、ヒヨコの雌雄識別は日本人があみだした技で、それでケイティのお父さんも、カツヒサおじさんも、雌雄鑑定士の技能を身につけていて、その職に就けるみたい。
にえ ケイティの両親が働く養鶏場は、リンドンさんっていう大きな屋敷に住んでいる金持ちが経営しているのよね。組合運動が盛んになりつつあるみたいだけど。
すみ 両親はクビになるのを恐れて、組合運動には関わらないようにしているみたいだけどね。こういうところも日本人であるがゆえの悲しさだけど。
にえ とにかく、リンドンさんの屋敷ほどではなくても、小さな家を買うために両親は頑張ってるんだよね。
すみ リンとケイティもそれがわかっているから、少しでも足しにしてもらおうと、自分たちのお小遣いを貯めてるの。
にえ 両親も子供のためを思って一生懸命だし、子供たちもその愛情をしっかりと感じ取っているし、生活は苦しくても、いい一家だよね。
すみ でも、そんな健気な一家に、不幸が襲ってくるんだけど。ただ、つらい話ではあるけど、生命力にあふれているって感じのケイティの語り口で、息苦しくなく読めるんだけどね。最後は爽やかでさえあった。
にえ 落ち込んでいるときに読むと、ケイティに負けずにがんばろうって気になるかも。そんな日系人の女の子のお話でした。