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 「地下鉄のザジ」 レーモン・クノー (フランス)  <中央公論社 文庫本> 【Amazon】
田舎で母と暮らしているザジは、パリの伯父ガブリエルに預けられることになった。ザジが憧れるのは、 パリの地下鉄。だが、残念ながら地下鉄はスト中で、ザジが乗ることはできなかった。ふてくされたザジは、 パリの街を走り回ってやっかい事を巻き起こし、周囲の大人たちを翻弄する。
にえ これは、1959年に発行され、戦後のフランス小説界に大きな影響を与えた作品だそうです。
すみ レーモン・クノーは、もともとシュールレアリズムの代表格だったんだけど、この本で一気に広く名前を知られてメジャーになったそうね。
にえ で、この本の紹介だけど、これは一言で済んじゃいそう、フランス語の原書で読め!(笑)
すみ ほんとね〜、クノー自慢の美しい文章は、翻訳でガタガタになっちゃってたね。
にえ せっかくリズム感をつけるために短く切ったんだろう文章が、 翻訳で読むとリズム感をなくしてギクシャクしちゃってかえって読みづらいし、テンポのいいはずの掛け 合いの科白も、滑らかさに読めないし。
すみ 拍子をとるように挿入されるオウムのお喋りも、和訳で読むと邪魔なだけだったような・・・。
にえ ザジが連発する決め科白も、和訳の<ケツくらえ>じゃねえ、 いつの時代でも笑えないな。
すみ うしろの解説で、クノーが美しい文章とは、みたいなこと言って るのも、これじゃあ勘違いの大馬鹿野郎のように感じられちゃうね。
にえ これ書くのに6年間推敲を重ねたとか、最近の作家の文章は雑だ とか、おもいっきり語ってるのが哀れにさえ思えるね。
すみ フランス語で読めば、きっとリズム感も、滑らかさも、会話の テンポの良さも堪能できるのでしょう。
にえ 日本語とフランス語は音の響きが真逆な言語だからねえ。
すみ 文章のことはこの辺にして、内容のほうに話を移しましょう。
にえ 生意気な少女の話っていうより、1950年代のパリの雰囲気を楽しめる話だったよね。
すみ パリの庶民生活ね。登場人物がパブの店主とか、タクシーの運 転手とか、なにやってるのか妖しい奴とか、いかにもパリの街角にいる人たち。
にえ 舞台もクルクル変わって、蚤の市とか、エッフェル塔 とか、サント・シャペル寺院とか、観光ガイドブックさながらのパリの街ご紹介。
すみ 登場人物がさあ、ちょっとずつ変な人たちで、それがまたな んだか、私たちが勝手にイメージしているちょっと昔のパリって感じがしたよね。
にえ おもいっきり変な人もおフラ〜ンスって感じだったよ。 変装して警官になりすます男とか、男探しに夢中で、相手を見つけたとたん、恋に盲目になっちゃう未亡人とか。
すみ ルイ・マル監督がこの本を映画化した作品を見てみたくならなかった?
にえ なった〜。科白だけでもフランス語で流れるリズム感もつかめそ うだし、ちょい古で画面がやや暗い映画で観たほうが、このコミカルな話はかえっておもしろく感じられそう な気がする。
すみ そういえば、この本には挿絵が入ってるんだけど、それがいか にもフランスっぽくて楽しかったよね。
にえ そうそう、今回は最初っから最後までパリだの、フランスだの と二人ともしつこく繰り返してるけど、ホントにそれがすべてって感じなのよね。
すみ パリを楽しみたいって気持ちで読めばおもしろいでしょうってことね。
にえ これ読んでフランス語を勉強したくなる人とか、いるといいね〜。