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 「チャングム1 宮廷篇」 キム・サンホン (韓国)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
燕山君8年(1502年)、13才のオンニョニは、万里峠の石投げ合戦を見物に来ていた宦官、韓乃温(ハンネオン)の怪我の手当をしたことで、大きく運命を変えることになった。 父親は漢江べりのサムゲの渡しで荷運び、母親は七牌の市で魚の行商という、文字も書けない、貧しい暮らしの両親に育てられた常民の娘であるにも関わらず、宮女に推挙されたのだ。 宮廷ではオンニョニが予想だにしなかった苦難が、そして喜びが待ち受けているのだった。
すみ 韓国の作家キム・サンホンの初邦訳本です。「チャングム1」ということですが、全何巻になるのか、わからないのだけれど(笑)
にえ キム・サンホンは韓国推理作家教会総務理事だそうで、ということは、作品は推理小説が多いのかな、私たちには馴染みがなくても、理事ってぐらいだから、そうとうな書き手なのでしょう。
すみ これはミステリじゃないけどね。エンタメ系ではあるけど、歴史もの大衆小説、とでも言えばいいかな。
にえ サクサク読める女の一生もの、大河もの、だよね。小説だけど、出版社の紹介文にあるように、「歴史ドラマ」という言い方が一番ピッタリくるのかもしれない。
すみ ワンパターンなのかもしれないけど、こういう女性の生き様を描いたものって好きだなあ、飽きないよ。それぞれの生きた時代の悩みや苦しみがあるわけだし、成功の形もさまざまだからね。これもワクワクしながら読んで、続編が今から楽しみでならないっ。
にえ 主人公は実在の人物なんだよね。大長今(テ・チャングム)という、500年前の女性では、普通考えられないような偉業を残した人。
すみ この小説の中のチャングムも、子供の頃から非凡なんだよね。チャングムという名前は宮女になってからの名前だから、オンニョニという名前で始まるんだけど。
にえ 父も母も平凡な顔立ちの、文字もろくに書けないような人たち。家族が飢え死にしないために、娘を売ることも当たり前な貧しい常民。
すみ でも、オンニョニの両親は違うんだよね。美しく聡明な娘のオンニョニに、なんとか学問を身につけさせようと頑張っているの。
にえ 宮廷に行ってからわかるけど、オンニョニは手も綺麗だから、家のことも手が荒れるようなことはやらせてなかったのかもね。
すみ 両親が学問を身につけさせようにしていたといっても、この時代には女が学問を身につけることは、かならずしもその子のためにはならないんだけどね。むしろ、幸せをつかむ障害になってしまうかもしれないの。
にえ それでも両親は、オンニョニに学ぶ機会を与えようと、努力してるんだよね。もちろん、オンニョニも学びたいという気持ちが強いし。そんなとき、李鐘海(イ・ジョンヘ)という医師に出会うの。
すみ オンニョニが7才の時だよね。
にえ 李鐘海の弟子のような立場になって、13才まで医学を、そして諺文(オンムン)や経書など、男顔負けの知識を身につけるオンニョニ。その運命を変えたのが、韓乃温(ハンネオン)との出会い。
すみ 韓乃温は宦官なんだけど、生まれつきではなく、あとからそういう体になった人だから、女好きなの。オンニョニのことも、本当は妾にしたかったみたいだけどね。
にえ 宦官って中国だけじゃなかったんだね。そんなことも知らなかった。あと、宦官が結婚して、妾もたくさんいたりするっていうのも知らなかった。そういう女性との関係はすべて断っているものとばかり思っていたよ。
すみ 宦官以外でも、オンニョニが宮廷に行ってからはとくに、そうだったのかって驚くことが多かったよね。
にえ 宮廷はイメージ的には、中国の朝廷を描いた小説と、日本の大奥とかのちょうど中間ぐらいな感じがした。
すみ うん、女だらけだったよね(笑) オンニョニが行くのは、王の食べる料理をつくるところなんだけど、そこも女ばかりで、厨房尚宮(チュバンサングン)という女性の長がいるし、他も女ばかりみたい。それぞれの長となる女性がいて、その上にまた、それをまとめる女性がいるという、女性の縦社会だった。
にえ 当然、女どうしの友情やら、庇護やらもあれば、諍いもありだよね。王は二人の寵姫と遊びにふけって、政治をおろそかにしちゃってるみたいだけど。
すみ 宮廷に勤める女性たちは大変なんだよね。幼い頃に親から離れ、宮廷から出ることもない暮らし、だけど、老いたり、王が亡くなると、宮廷を出なくてはならなくて、そうなると、もと宮女ということで、男性と結婚することすら赦されない。
にえ それでも常民として外で暮らせば、食べることも満足に出来ず、一日一食で喜ばなくちゃいけない生活だもんね。ホントに大変。
すみ とにかく、そういう生きることだけで精一杯のような世の中で、チャングムは自分の人生を切り開いていくのよ。
にえ この1冊だけでもいろんなことが起きたし、いろいろ気になることも出てきたし、先が気になるね〜。ということで、興味があって、楽に読みやすいものをお求めなら、オススメです。