=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ナイチンゲールの屍衣」 P.D.ジェイムズ (イギリス)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
大病院の一角にある看護婦養成所ナイチンゲール・ハウスに、総看護会の視学官ミス・ビールが 訪れた。そして、ミス・ビールの目の前で、胃に栄養剤を送りこむ実習訓練中、患者役の看護学生ピアスが 突然苦しみだし、息絶えた。栄養剤の代わりに使われた牛乳に毒物が混入していたらしい。 そして数日後、おなじナイチンゲール・ハウスの寮生であるファロンが、ナイトキャップとして毎晩飲んで いたウイスキーを飲み、変死を遂げた。やはり毒物が入れられていたらしい。捜査を開始したダルグリッシ ュ警視は、病院内の複雑な人間関係を調べ上げていくが。 | |
私たちにとっては2冊めのP.D.ジェイムズ。今度はダルグリッシュ警視ものです。 | |
これさあ、すっごい、すっごいおもしろかったよね。 | |
おもしろかった〜。男の人より、女の人が読んだ方がおもしろいかもね。 | |
そうそう、男の医者なんかも混じってるけど、なんといっても 女ばかりの世界のドロドロ、たまんないよね。 | |
さすが女流作家だよね、一緒に食事して、たえず仲良くつきあっ てるようで反感持ちあってたり、ペチャクチャしゃべってるようでも、妙に冷たい感情しか抱いてなかった り、こういう女の集団にありがちな人間関係って男じゃ書けないんじゃない? | |
もう前半から、ワクワク、ゾワゾワしながら読んじゃったよ。 ダルグリッシュなんていてもいなくてもいい、とにかくこの女の園の人間関係がおもしろい。 | |
会話も強烈だったよね。キツイことをチクチク言い合っちゃう ところなんか、ひゃ〜って感じ。 | |
ラストのほうの告白も、これまた、わかる〜って叫びたくなっちゃったよ。 | |
そうそう。それにしても、女どうしの人間関係の描写だけじゃ なく、ストーリーもよくできてたよね。これはもう大満足。 | |
密室殺人とちょうど対極になるよね。ナイチンゲール・ハウス の人間なら、だれでも毒物を混入するチャンスがあった。で、さて犯人は誰でしょう。 | |
登場人物はみんな個性的。でも、平気で殺人をやっちゃうよう な人たちには思えないよね。 | |
被害者は、いかにも殺されそうな娘だけどね。 | |
ピアスでしょ? この女もまた、わかる〜って感じの娘だった な。独善的で、人の悪さを見つけて責めたてるのが大好きな女。しかも、そのやり方がまた、ねちっこくて、 いい子ぶってて、おお、やだやだ。 | |
しょっぱなで死んじゃうから、この娘のイヤさかげんも安心して 楽しめるのよね。生きてて、本人がしゃべっちゃったりしたら嫌悪感が走るでしょう。 | |
で、最後のほうで隠されていた過去が浮上して、あ、じゃあ、 あの人が犯人?って思ったら、これもひとひねりしてあって、上手かったな〜。 | |
上手いといえば、病院、看護婦の世界の描写がやけに上手いと 思ったら、P.D.ジェイムズは元看護婦、亡くなった旦那様はお医者さん、どうりでリアル。 | |
そうなの、なにをとっても雑な部分がないのよ。ちょっとでも、 あれっと思うようなところは、あとでかならず説明されてるし。 | |
それにムダが感じられなかったよね。人の会話にしても、あれ だけドロドロした関係があり、ベラベラしゃべる女があり、なのに、簡潔にまとめてあるから、うう、しつ こいと思うところはどこもなかった。 | |
たしかに、これだけベタッとした世界だと、こういうちょっと 冷めた文章で書いてくれる作家さんのほうがいいかもね。 | |
登場人物はちょっと多いけど、みんなけっこう強烈な人たちだ ったから、混乱するってことはなかったよね。 | |
でも、登場人物がみんな強烈すぎて、ダルグリッシュ警視の ことはあんまりわかんなかったね。 | |
うん、警視でもあり、詩人でもあるってことだったけど、本人 の詩集が被害者の部屋で見つかる他は、これといって詩もウンチクも出てこなかった。 | |
でもまあ、それはこの先シリーズを読んでいって、だんだんと わかればいいか。 | |
そうよ、この本に関しては、登場人物からストーリーから、 おもしろくて、用意されていた悲劇も意外性があって、胸をついてで大満足。私としては、百点満点! | |