=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ユダの窓」 カーター・ディクスン (アメリカ→イギリス)
<早川書房 文庫本> 【Amazon】
ジェイムズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため、恋人メアリーの父エイヴォリー・ヒュームを 訪ねた。二人きりの閉めきった部屋で、エイヴォリーに勧めら、ウィスキー・ソーダを飲んだジェイ ムズは、のどに異様な感触を覚え、意識を失った。そして、目を覚ますと傍らには、胸にアーチェリーの矢 が刺さったエイヴォリーが死んでいた。メアリーの依頼で被告人の弁護を引き受けたヘンリー・メルヴェー ル卿は、不利な状況証拠のそろった裁判で、ジェイムズを救うことができるのか。 | |
クリスチアナ・ブランド、P.D.ジェイムズに続いてカーとお初の有名ミステリ作家第3弾です。 | |
この人はねえ、ずっとバリバリのハードボイルド作家だと思い こんでたの。どうしてそう思っちゃったのか、忘れたけど(笑) | |
初読みは『ユダの窓』となりましたが、これって法廷もので、 密室ものと、私たちの苦手系が二段重ね。で、どうだったでしょう? | |
おもしろかった!! おもしろすぎて、笑っちゃう。なんだ こりゃ、おもしろすぎ。おもしろすぎて、法廷とか、密室とか、いつもは息苦しい設定もぜんぜん気にな らなかった。おもしろ〜い。わはははっ。 | |
たしかにおもしろかったけど。そんなに気に入ったの? | |
うん、純粋に推理と謎解きがおもしろいかどうかっていう条件に限定 すると、今まで読んだ推理小説で、一番おもしろかったかもしれない。 | |
これって推理の中でも、メルヴェール卿がジェイムズを助ける ことを目標にしてるから、犯人あてるよりも、どういう経緯でどんなことが行われたかを解明していくことに 重点が置かれてるタイプなのよね。 | |
そういうのを、ハウダニットと言うのだそうな。 | |
まあ、とりあえず最初にわかってることは、ジェイムズが犯人 ではないってことよね。 | |
そりゃそうだよ。これでジェイムズが犯人だったら、名作ゲー ム『ポートピア殺人事件』でヤスが犯人だったことより犯則技だよ(笑) | |
で、全編がほとんど裁判なんだけど、クドクド同じ話の繰り返し じゃなくて、どんどん新事実があかされていくかんじだから、法廷ものなのにサクサクしてるよね。 | |
初っぱなはジェイムズに不利な話ばかり。いったんは結婚を許した はずのエイヴォリーが、急に不機嫌になって、どうやら結婚に反対しだしたように見えてたとか、なんといって も殺人は完全な密室で行われたとか。 | |
密室は、ぜったい外からは入れないように堅く閉じられた小さな窓が 二つ、内側からボルトでとめられ、開けることのできないドア、仕掛けのない厚い壁と完璧な密室。 | |
エイヴォリーの胸に刺さった矢にはジェイムズの指紋、ジェイムズが なぜか脱ぎたがらなかった外套の下にはピストルが隠し持たれていたし、ヒューム家を訪れたときのジェイムズの 様子も変だった。 | |
この、どう考えても縛り首な状況を打開するのがメリヴェール卿。 かなりヨボヨボのおじいちゃんなのよね。 | |
でも、かくしゃくとしてて、もちろん頭脳明晰。ちょっと口が悪 くて、機嫌とってあげなきゃいけないようなところもあって、愉快なオジイチャン。 | |
まずは陪審員の皆様に、真実と当て推量をごっちゃにするなと お説教だもんね。 | |
私はあそこでしびれたよ。だって、読んでる私も一緒に叱られて るようなものだったからね。ほんと、ほんと、言われてみればたしかに、同じ方向につながっていくような 話を積み重ねられるうちに、真実でもないことを真実だと思いこみそうになってた。オジイチャン、目が覚 めたよ、ありがと〜(笑) | |
そこからは、バンバン証拠の品が出てくるし、嘘つきどもは追い つめられて自白させられるし、隠れてるヤツは見つけだされるし・・・、ちょっとトントン拍子に行き過ぎてない? | |
いいの、いいの。リアリティーを求めてモタつかせても、結局出 すものは一緒でしょ? だったら、もったいぶらずにどんどん出してくれたほうがテンポよく読めますっ。 | |
まあ確かに、出すものがいっぱいあって、最後までネタは尽き ないからね。手持ちの札が少ないと、ケチケチ出さなきゃならないけど、いっぱいあれば大盤振る舞いだ〜(笑) | |
そうそう。それにしても、解けてみれば、なんとまあ、それぞれ の人間の思惑や行動が、複雑に絡み合ってたんでしょう。それにあのトリック! よく解けました、オジイ チャン、すご〜い。 | |
そこがまたね、私は神業すぎる気もしたのよ。あんな複雑な謎を 解く前に、ある程度の予測ってたてられるものなの? | |
ああ、おもしろかった〜。新事実が解明されるたびに、ビック リさせられたよ〜。解けてみれば、無理は感じられなかったし。ああ、こんなおもしろい推理小説読めてしあ わせ〜♪ | |
うん、話がおもしろかったのはたしかだよ。ただね、私が言って るのは・・・。 | |
こんな完璧におもしろい話が書けるなんて、カーってやっぱり天才 だったよね。天才バンザ〜イ。またすぐ次を読もうね〜♪ | |
・・・そうだね。 | |