=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「真珠の耳飾りの少女」 トレイシー・シュヴァリエ (イギリス)
<白水社 uブックス> 【Amazon】
タイル職人だった父親の目が見えなくなり、ヤン一家の16才の長女フリートは、画家ヨハンネス・フェルメールの家の女中として働くことになった。 フェルメールの家には、フェルメールと妊娠中の妻カタリーナ、そして5人の娘と1人の息子がいたが、家を支配していたのは、家の持ち主でもあるカタリーナの母、マーリア・ティンスだった。 | |
映画にもなり、白水uブックスにもなりで、今読まなきゃどうするのよってことで、あわてて読みました「真珠の耳飾りの少女」です。 | |
これは題名のまま、フェルメールの描いた名画「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」のモデルとなった少女が主人公のお話なのよね。 | |
まあ、実際のモデルというのはわかってなくて、あくまでも絵から想像して、作者が創作した人物だけどね。 | |
舞台は17世紀のオランダ、デルフトという町。フリートのお父さんは優秀なタイル職人だったけど、事故で目が見えなくなってしまったの。 | |
16才のフリートはフェルメールの家に女中奉公に、13才の弟フランスは父親の親友のタイル職人のところに徒弟奉公に、家には10才の末娘アグネスだけが残されることになるのよね。 | |
フランスは父親の事故が原因じゃなくて、その前から13才になったら徒弟奉公に行くことになってたんだよ。 | |
うん、でもフリートは完全にお父さんの事故のためだよね。一家の収入はわずかな手当だけになり、フランスは徒弟奉公で給料はもらえない。フリートがわずかながらの給金をもらうために働くしかなかったの。 | |
でもさあ、フリートは、堪え忍ぶ薄幸の少女って感じじゃないよね。おとなしくて前に出過ぎない性格みたいだけど、じつはけっこう気が強くて、自尊心が高くて。 | |
最近読んだ、現代作家が書いた古い時代のヒロインは、みんな気が強いよね。もう堪え忍ぶ女性じゃ受けないってことよ(笑) | |
着いた早々、フェルメールの娘の一人、コルネーリアにビンタを食らわして、憎まれるようになるんだよね。 | |
でも、気が強くて肉屋で文句をつけたおかげで、そこの息子のピーターに一目置かれ、惚れられることになるのよね。 | |
ピーターはハンサムで、しかも思い遣りがあって、素敵な若者なんだよね。ピーターのお父さんもいい人だし。 | |
フェルメールの家でフリートは、フェルメールの妻カタリーナには、あまり好かれていなくて、マーリア・ティンスには目をかけてもらえて、 マーリア・ティンスの女中タンネケは、機嫌を取ってどうにかって感じかな。 | |
問題はコルネーリアだよね。異常なほどにフリートを憎んでるみたいなの。 | |
理由は、カタリーナがフリートの存在をなんとなく快く思わないのと一緒でしょ。若くて綺麗な女中は奥さまの目を盗んで、旦那様と関係を持つもの。 | |
そして、女中は銀のスプーンを盗むもの、だよね。 | |
絵を描いているあいだは物をいっさい動かしてはならないフェルメールのアトリエを掃除するのが、フリートの一番大事な仕事なんだよね。 | |
でも、アトリエを掃除するとはいえ、最初のうち、フリートはフェルメールとほとんど接点がないのよね。 | |
そんななかでも、もともと美意識の高かったフリートは、初めて知った芸術というものに啓蒙されていくわけだけど。 | |
私はさあ、読むまでずっと女主人公の少女とフェルメールの不倫の話だと思ってたのよね。だから、いくら美しく理由づけされても、不倫話はあんまりな〜、と思ってたんだけど、 違ったね。 | |
そうそう。なんというか、惹かれていくにしても、そんな大味じゃなくて、もっとデリケートな心の機微を描いたお話。さすがに良かった。まだ読んでない人は、この機会にぜひぜひ。 | |
途中、フリートがちょっと出来すぎかなとも思ったけど、最後はキリッと現実的で、夢物語にもなってしまわなければ、暗い話に終わってしまってもいなくて、読みおえたら大満足だった。 これはもう間違いなしのオススメでしょう。 | |