すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「女には向かない職業」 P.D.ジェイムズ (イギリス)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
共同経営者バーニイが不治の病を苦にして自殺のため、22歳の女性コーデリアは、一人で探偵事務所 を続けることになった。そこに現れた依頼者は、有名な科学者ロナルド・カレンダーの代理人。ロナルドは、 突然大学を辞め、庭師となり、あげく自殺した息子の真相を探ってほしいと言うのだ。さっそく捜査に乗り だしたコーデリアだが。
にえ なんでこんなに有名な作家の有名な本を、私たちは今頃読むの か、知ってる人は知っている(笑)
すみ 題名を見ただけで、男の作家が書いたハードボイルドで、キザ な男の探偵が「フッ、こんな危険な仕事、女にはできないぜっ」とか言ってる本だろうと決めつけてたのよね。
にえ 知ってみればP.D.ジェイムズは女性作家、表紙をめくれば、 主人公は女私立探偵と、はっきり書いておりました、とほほ。
すみ まあ、それはともかくとして、この本はどうだった?
にえ なんといっても、印象に残るのは主人公コーデリア・グレイよね。
すみ 22歳の女私立探偵と聞いてイメージする人物像とは、かなり 違ってたよね。悪い意味じゃないけど、若さがないの。
にえ うん。自制心がきいて落ち着いてるし、受け答えも普通の22歳 の女性じゃないよね。
すみ 同じ年頃の男性に、コーデリアって名前から、リア王にひっかけ て冗談を言われると、そういう冗談にはうんざりしています、なんて答えるのよね。
にえ 普通なら、しゃれたお返しの冗談でも用意してるところなのにね。
すみ なんかすごく硬質的で、若い女性ならではの愛嬌がないよね。
にえ で、なんで?と思ってると、実は彼女が生まれてすぐ母親が亡 くなって、その後は養父母が変わり、マルキシスト詩人で、アマチュア革命家だった父親に振り回された生 い立ちがわかってきて、納得。
すみ 無理にハードに徹してるわけじゃないのよね。おしゃれが好き だったり、涙を流したりもするし。
にえ うん、困ったことがあると、だれかと相談したいって素直に 思うし。なんか無理にがんばりすぎてて、肩に力が入りまくってるようなギスギス感はないよね。
すみ でも、やっぱり普通に育った22歳の女性とは違ってて、気安 く電話をかけておしゃべりするような同じ年頃の女友だちなんて一人も出てこないし、淋しさを感じさせる よね。浮いた人間の孤独っていうのかしらん。
にえ 22歳の女の子が探偵、なんていうと、同じ女で年上の読者と しては、ゲロッと思うけど、そういうジェラシーチックな嫌悪は感じないよね。彼女にたいしては。
すみ なんか妙に惹かれる。がんばってほしいわ〜って気になってく るね。まあ、私たちはネット上では、本を勧める双子の天使ってことになってるから、コーデリアの年上で も年下でもないんだけどねっ。
にえ ええ〜っ!! 私たちってネット上では年齢不詳の天使だった の?! 知らなかった。なんかサムサムすぎて怖い(笑)
すみ なんとなく流れ上、言ってみたくなっただけです(笑) それ はともかくストーリーの話をまだぜんぜんしてないんだけど。
にえ これはもう複雑に絡み合った人間関係が交錯して、ややこしく してしまった謎をコーデリアが解いていくという、問題なしの上質ミステリーでしょ。
すみ 科学者のロナルドを崇拝する男女とか、息子の大学の同級生た ちの別れた、くっついたのという若者らしい数人の男女の恋愛絡みとかあったりして、わかりやすくも複雑 に仕上がってるよね。
にえ コーデリアは新米探偵だから、捜査は忠実に基本に沿って、 わりあい淡々と、でも読んでるこっちにとってはわかりやすくって感じよね。
すみ でもさ、息子が働いてた家の人たちの奇妙な行動については、 想像にお任せします、で終っちゃったよね。好奇心旺盛な私としては、もうちょっと知りたかった〜。な んなのよ、あの人たち。
にえ 息子は屋敷の奥のコテージに住まわせてもらってたんだけど、 そこには、主の老夫婦は決して近寄らないのよね。近寄るのは、老夫婦の妹だけ。この人の言動がまた変 なんだけど、イマイチわかんない。いろいろ想像しちゃうよね。
すみ で、結論としては、おもしろかった。ただ、これは最高によか ったから、ぜひ読んでほしい1冊ですって本じゃなくて、これを読むと、続けてコーデリアが主人公の本を 読みたくなってしまうって本じゃないですか。
にえ うん、読みたくなった〜。コーデリアのその後を思う母心が 芽生えた! 私は年齢不詳の天使だけど(笑)
すみ あとさ、バーニイの上司だったダルグリッシュって警視が、他 のシリーズで主人公になってるとかで、その辺も読みたくなったね。
にえ うん、バーニイがすごく尊敬してたって気持ちだけ伝わってき て、どういう人なのかはあんまりわからないような書き方をしてるから、よけいそそられた。
すみ 他のはもっと堅くて難解らしいとか、文学的だとか、いろいろ 気になる情報も小耳に挟ませていただいているので、まずは読み進めてみましょう。ああ、読んでよかった♪