すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「エヴァが目ざめるとき」  ピーター・ディッキンソン (イギリス)  <徳間書店 単行本> 【Amazon】
野生動物のほとんどが死に絶えた近未来。事故によって再起不能となった十三歳の少女エヴァは、父親の勤めているチンパンジーの研究所で目を醒ます。しかしその姿は、 以前の美しい少女ではなく、チンパンジーとなっていた。
にえ これは一応、SFってことになるのかな。サイバーなかんじではなかったけど。
すみ うん。舞台が未来、で、エヴァの記憶や意識をチンパンジーに移しかえるってサイエンスチックな話だから、やっぱりSFでしょ。
にえ そうそう。脳を移植するんじゃなくて、記憶や意識だけをチンパンジーの脳に移すのよね、これポイント(笑)
すみ だから、エヴァがチンパンジーとして目ざめたあと、人間らしい言動はしていても、奥底にはチンパンジーの記憶があるのよね。
にえ あの時バナナを食べた、とかいうはっきりとした記憶じゃなくて、遺伝子レベルの種の記憶ってやつね。
すみ この本でいうと、エヴァはたびたびジャングルのことを思い出すんだよね。エヴァが乗っ取った体のチンパンジーはジャングルを見たことがないのに。
にえ 人間以外の動物は、遺伝子レベルで記憶が受け継がれていくらしいからねえ。
すみ 人間だけはないのかな?
にえ わかんない。あるのに感じられないだけかも。騒音の激しいところでは小さい声が聞こえないみたいに、大脳がでかくて考えることが多すぎるから、 遺伝子レベルの記憶に気づけないのかもね。
すみ で、このエヴァだけど、そういう記憶だけじゃなくて、もともと父親の仕事がらチンパンジーと一緒に育ってるから、わりと新しい体にも馴染みやすいのよね。
にえ とはいえ、チンパンジーになるのは厭だろうけどねえ。私だったら泣き暮らしちゃうかも(笑)
すみ でも、エヴァは違うのよね。自分の今の姿を愛そうと努力するし、チンパンジー人間としての生き方を模索する。
にえ 13歳にしては、立派すぎ!
すみ まあ、みんながみんな、にえちゃんみたいに本能のまま生きてるわけじゃないからね(笑)
にえ ムカッ。
すみ で、母親が拒否反応しめしたり、見世物にされても、冷静に自分の生きる道を見つめるのよね。
にえ まあ、どうなっていくかというのはお楽しみ。で、読み終わったあとで、うしろについてるピーター・ディッキンソンのメッセージを読んで、どういう意図でこの本が書かれたかわかり、納得。
すみ この本は、こわいもの見たさのグロイだけの話でもなく、安っぽい作り話でもなかった。しっかりとしたメッセージがあったし、知識の裏付けも感じられたし、ほんと、読んでよかった、感動したよ。
にえ うん。読んでる間も展開がおもしろくて夢中になったし、読み終わったあともめいっぱい余韻が残るよね。
すみ これはオススメでしょう。SF好きか嫌いかはまったく問題にならないよね。
にえ うん、超オススメ。私たちもこの人の本をもっと読みましょう♪