=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「年老いた子どもの話」 ジェニー・エルペンベック (ドイツ)
<河出書房新社 単行本> 【Amazon】
夜、商店街の道路にバケツを持って立っていた女の子が警察によって保護された。質問に対し、女の子は14歳だと答えたが、あとは名前も、住所も、両親のことも、なにも答えることができなかった。 少女は児童養護施設に連れて行かれた。他の子どもと比べて、その女の子は体格が良かったが、それ以外に勝るところはなかった。 | |
「ロサリオの鋏」「すべての小さきもののために」に続く、河出書房新社のModern&Classicシリーズの本です。 | |
これは、1967年生まれのドイツの女性作家の小説なのよね。 | |
前の2つも他とはひと味違うって感じの小説だったけど、変わってる度では、これがズバ抜けているかも。 | |
いや、変わってる度というより、わけわからん度と言ったほうがいいような(笑) | |
うーん、理屈ではわかっても、感情的に納得しきれないようなところは残るよね。結果より過程の部分でそうなってしまうのかも。 | |
なんか積み重ねていってるわりには、方向性がハッキリしなくて不安定って印象があった。統一感があるようでないような。 | |
素性のわからない少女の出現ってことで、どうしても謎解きしようって姿勢になってしまって、そのせいでかえって混乱しちゃうのかもしれないね。 | |
どうなのかなあ。謎解きしようとしちゃうから、どの方向に向かっているのかとそればっかり考えて、少女の言動に統一感がないように感じてしまうのかなあ。 でも、なんか違うって感じが残るんだけど。 | |
まあ、私も、作者がこの女の子のような心理を、どこまで理解できたうえで書いてるんだろうって、ちょっと思わなくもなかったんだけど。 | |
とにかくね、夜の商店街にポツンと一人でいた女の子が保護されて、自分の年齢以外は何もわからず、児童養護施設に連れて行かれるの。 | |
どうもそれこそが女の子の望みだったみたいなのよね。女の子は施設の他の子と違って、そこに入っている自分に喜びを感じて、出ていきたくないと思っているみたいなの。 | |
女の子はひたすら愚鈍なんだけど、それも女の子が自分をそう見せようと、あえてやってることみたいなのよね。 | |
ほとんど全編って言っていいぐらいが、この女の子の施設での暮らしぶりなの。 | |
ものすごく詳細。授業中での少女の態度、休み時間の様子、ロッカー検査の様子・・・。でも、不透明で、肝心なところが省かれてるって感じだった。 | |
女の子に接する子どもたちの心理とかが細やかに書かれてて、そこがおもしろいんだけど、ちょっと苛つくっていう、焦らされ感があるよね。 | |
女の子は、教師から見ると、努力をしてもまったく報われないタイプのおちこぼれ、でも、子どもたちから見ると、どうしてもなにか異質な、不気味な存在なんだよね。 | |
細かく書かれた子どもたちの心理の流れについては、興味深くおもしろいものがあったな。ま、疑問に思うことも多かったんだけど。 | |
そして、はたして女の子は何者だったのかという結末。やっぱりなと思いつつ、これについても、どうしても納得しきれないものが残っちゃう。 | |
あともうちょっと女の子に近づけるところまで連れていって欲しかったって気はしなくもないね。 | |
私としては、全体的に消化不良かな。でも、この消化不良感こそが、この小説のおもしろさなのかもしれない。悩まされたい方はどうぞっ。 | |