すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「ホーニヒベルガー博士の秘密」 エリアーデ (ルーマニア)  <福武文庫 文庫本> 【Amazon】
文庫本で100ページ程度ずつの中編が2編入っています。
ホーニヒベルガー博士の秘密
東洋文化を研究する私のもとに、ゼルレンディ夫人という女性から手紙が届く。訪ねてみると、 夫が研究していた、ホーニヒベルガー博士の秘密について、研究を引き継いでほしいと頼まれる。 夫であるゼルレンディが亡くなったのか、失踪したのかもあかさずに。
セランボーレの夜
インドのセランボーレで、私とボグダノフとファン・マネンは、そんな場所にいるはずのないスーレン・ ボーズという同僚を見かけた。彼は、オカルティズムを研究しているという噂がある。そしてその夜、私た ち三人は薄暗い森で迷い、女の悲鳴に誘い出された。
にえ この人は、私たちは初めて。うしろについてた解説によると、 ルーマニアで生まれた天才で、宗教学者として世界中に知られていて、人生のほとんどをルーマニアから 出て亡命生活を続けながら、ルーマニア語だけで幻想小説を書き続けた人だそうです。
すみ 12歳で小説を書きはじめ、14歳で新聞に論文を発表し、 18歳までには百編以上の論文やら小説やらを発表し、6カ国語をマスターしてたっていうんだから、 スゴイよね。その後はいろいろ苦労したらしいけど。
にえ で、この本ですが、まず、『ホーニヒベルガー博士の秘密』。 これは学者が他人の研究書を研究し直すって話だから、けっこう堅めの文章。
すみ サンスクリット語を理解し、マントラ・ヨーガを 習得することによって、不思議な力を身につけたって話なんだけど、まあ、ようするに、オカルト研究なのよね。
にえ うん、全体の中心は、サンスクリット語を利用した暗号を解読 して、ゼルレンディ氏の日記を読んでいくんだけど、そこで信じられないような怪奇現象が起きてるのよね。
すみ 話としてはおもしろいけど、こう知識というか、ウンチク が詰まった話だと、こっちは一方的に情報を与えられてるだけって状態になっちゃうよね。
にえ うん、マントラ・ヨーガを極めた修行者の一部が、こういう 現象を経験することがあるという報告がある、なんてことを書かれても、こっちは「ほー」「へー」って 唸ってるだけだもんね(笑)
すみ そうそう、ただただこちらは、エリアーデって人は有名な宗教 学者だから、それだけを信じきって、ありがたく読ませていただくだけ。
にえ ゼルレンディ夫人と娘のいうことが正反対だったり、結局、ゼル レンディ氏はどうなっちゃったの? なんて謎がらみで、おもしろい話ではあるんだけど、ちょっと読みづらいよね。
すみ うーん、学者が主人公だと、どうしても話が難しくなるよね。
にえ で、もう一つの『セランボーレの夜』もやっぱりカルト宗教 がらみの話なんだけど、こっちは難しいウンチクも控えめだったよね。
すみ うん、異国情緒たっぷりの幻想的なストーリーで、雰囲気があった。
にえ インドの夜、森の中で迷い込んだ館、そこで出会う怪しげな 人々。こりゃあもうゾクゾクするような話だよね。
すみ 不思議な出来事を解明しようとすると、より深みにはまって いくというような、そういう妖しい感じがたまらない。
にえ こっちは研究じゃなくて、経験を追ってるから、話もわかりや すいし、なんといってもこの先どうなっていくんだろうって、ストーリーを追う楽しさがあるよね。
すみ スーレン・ボーズって人がほとんど登場しなくて、噂だけで どういう人か探っていくってとこも、妖しさが増してよかったね。
にえ で、結論としては、この作家さん、私たち的にオススメか、 オススメじゃないか、保留。
すみ 話は2つとも、東洋のカルト宗教を扱ったもので、質は高かった けど、まだつかめないよね。
にえ 『セランボーレの夜』みたいな、わかりやすくて妖しげな話が 多い作家さんだとしたら文句なしにオススメだけど、『ホーニヒベルガー博士の秘密』みたいな、ちょっと 小難しい話が多い作家さんだとしたら、人には勧めづらな。
すみ なんとなく、『セランボーレの夜』系かなって予感はしてるけ ど、せめてもう1冊読んでみないとわからないよね。
にえ 読んでる間、ちょっとボルヘスを連想したけど、もし読みやす い話が多いとすれば、あの辺が好きな人なら、オススメだよね。
すみ うん、知識の背景があるし、深みのある話が書ける作家さんって感じがした。
にえ ということで、もう1冊読んでからってことで。