すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「ジェゼベルの死」 クリスチアナ・ブランド (イギリス)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
明るく、誰にでも好かれる青年将校ジョニイが自殺した。婚約者のパーペチュアが他の男といちゃつい ているところを目撃したからだ。だが、それは、悪女イゼベルと、女たらしの三流役者アールが仕組んだこ とだった。彼らもまさか、ジョニイが自殺するとは思っていなかったのだが。そして7年後、舞台劇の準備 をするパーペチュア、アール、イゼベルの3人に、殺人を予告する手紙が届いた。
にえ 私たちは初めてですが、ミステリ界では、「新本格派」と呼ばれている女流作家さんだそうです。
すみ 読めばなるほどって思うよね。読んでるあいだ、どんな感じだ ったかというと、「やっぱりこいつが犯人だったのか〜」「やっぱりこいつが犯人だったのか〜」って心の中 で何度も叫んで、しまいには耳鳴りがしてしまいそうだった(笑)
にえ 何度も違う容疑者が、真犯人候補として浮かび上がってくるの よね、まあ、乗せられるだけ乗せられて、「謎が解けた!」「あ、違った」ってその繰り返し。掌でいいよ うに転がされながら、楽しませていただきました。
すみ 登場人物に感情移入できる人がいないから、逆によかったのか もね。どの人が犯人でも納得できちゃう。
にえ そうそう、登場人物はみごとにヤナやつ揃いだったよね。まず イザベル。打算的で、人を金勘定でしか考えないようなセコイ女。悪女としての魅力すらないのよね。
すみ で、アールはなんだか臭そうな、腐れ役者でしょ。パーペチュ アは頭のねじが何本か外れてるような、口から涎垂らしてそうなバカ女でしょ。
にえ それに、妻に悪いと言いながら浮気心を隠さないオッサン、 マザコンでストーカーの気色の悪い少年、気が強いわりにコンプレックスも感じさせる男っぽい女、 外国訛りがひどいくせに、やたらとしゃべる無駄にハンサムな男。強烈に変な人はいないんだけど、微妙に 嫌悪感を感じるというか、読んでてあんまり愛情は感じない人たちよね。
すみ だからこそ、謎解きに気持ちを集中できるんだろうね。それに さ、好きな登場人物なんていなくても、練ったストーリー展開で、充分楽しめるよね。
にえ 殺人はいちおう、密室殺人なのよね。部屋じゃなくて、舞台な んだけど。鍵がかかって裏からは入れないようになってたから、完全に閉じられた状態なの。
すみ みんなが見ている前で起きるから、通常の密室より、さらに 難しいよね。
にえ そう、で、その前の殺人予告の手紙のけんもあるから、おのず と、容疑者は劇に出ていた数人に絞られてるの。
すみ 読んでる人は、その中から探せばいいから、推理をするぶんで のよけいな煩わしさはいっさいなしだよね。
にえ で、謎解きを導くのは、コックリル警部とチャールズワース警部。
すみ コックリル警部は田舎の警部で、会議のためにたまたま居合わ せたんだけど、数々の難解な事件を解決してて、ちょっと有名人。
にえ 頭は鋭く、見かけはブサイクって人よね。
すみ で、チャールズワース警部は都会の警部で、若くてハンサムで、 でも、頭はだいぶ劣るかな。というわけで、正反対。
にえ この二人のせめぎあいが、けっこう息抜きになってるよね。 腹の中でたがいの悪口言ってるところとか、クスリとさせられる。
すみ それにしてもこの二人、まあ単純に考えて、二人だから倍にな るわけだけど、とにかくまあ、次から次へと推理するし、真犯人指名するし、最後の最後まで、誰が真犯人 なのか、惑わせてくれるよね。
にえ ちなみに、私は第一印象で犯人だと思った人、ハズレでした(笑)
すみ 私はアタリ〜。やっぱ、あの人しかないって。にえちゃん裏読 みしすぎ。あれじゃ当らないよ(笑)
にえ たまたま当たったら、コレだよ。
すみ それはいいとしても、最後まで迷わされるけど、与えられるも のは限られてて、そこから推理できるから、ほんと、推理を楽しめる本だったよね。
にえ ていうか、読んでるといつのまにか推理させられちゃう。 読者参加型の推理小説じゃないでしょうか。