すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「終わらざりし物語」 上・下  J・R・R・トールキン/クリストファ・トールキン (イギリス)
                              <河出書房新社 単行本>  【Amazon】 (上) (下)

J・R・R・トールキンの死後、息子であるクリストファが、「指輪物語」の中つ国に関する父の未完の原稿のなかから抜粋し、注釈を加えた作品集。
にえ またまた誰それの父親が誰それで、何とかの戦いでどうのこうの、と難しい蘊蓄が詰まった本を読んでしまうのね、と思ったら、 意外にもそんなことはなくて面白かった「終わらざりし物語」です。
すみ 順番としては、「ホビットの冒険」→「指輪物語」→「シルマリルの物語」→「終わらざりし物語」で読むのが一番いいんだろうね。
にえ そうだね、この本は、当然、読者は「シルマリルの物語」まで読んでるでしょう、というスタンスで、クリストファの注釈が入ってたし。
すみ できれば子供の頃に「ホビットの冒険」を繰り返し読んで、中高大生ぐらいで「指輪物語」を2、3回読んで、そのあと「シルマリルの物語」を読んで、大人になった今になって、おお、 「終わらざりし物語」だ! 喜んで読むのがベストなんだろうね、私たちはこのところでまとめて読むことになっちゃったけど(笑)
にえ とはいえ、エルフの話を中心として、神話的な雰囲気さえあった「シルマリルの物語」より、「指輪物語」と直結して、裏話的だったり、外伝っぽかったり、後述談だったりする話をまとめた、 この「終わらざりし物語」のほうが、とっつきやすいし、面白かったりもしたけどね。
すみ うん、未完の原稿集だから、尻切れトンボに途中で終わっちゃう話が多くて残念といえば残念なんだけど、それが気にならないくらいおもしろい話が多かった。
にえ 「シルマリルの物語」みたいに、冒頭で尻込みさせられることもなかったしね。
すみ 序文も興味深かったな。トールキンは生きている時から、学者やマニアたちが中つ国に関する問い合わせの手紙を大量に送りつけていて、その山にトールキンがゾッとしてたんだとか、 追補編は出さなきゃよかったと思ってたんだとか、そういう話に、へ〜っと思った。
にえ でも、一番のマニアはやっぱり息子さんのクリストファ・トールキンなんだろうね。クリストファの注釈に、物凄いマニア熱を感じたんだけど(笑)
すみ もともとはトールキンが自分の子供たちに話してきかせるために「ホビットの冒険」を紡ぎだし、そこから「指輪物語」が生まれたんでしょ、やっぱりトールキンの子供たちが、筋金入りの中つ国マニアになるのは仕方ないかも。 子供の頃からあれこれ想像して楽しんだだろうし、質問をすれば答えてくれるトールキン本人がそばにいたんだし。
にえ それにしても、あそこに書かれて他のとこれに書かれてるのは、この部分がちょっと矛盾してるとか、いろいろし適してあって、ある意味、一番手強いファンかも。
すみ まあ、それはともかくとして、どんなお話が出てくるかというと、まずは、フオルとリーアンのあいだに生まれた息子で、種族は人間のトゥオルの冒険の物語。
にえ トゥオルは両親を亡くして、灰色エルフに育てられ、それから隠れた都トゥアゴンで過ごしたのよね。
すみ この最初のトゥオルの冒険の物語がとにかく面白くて夢中になってしまったから、その先も読みやすくなったよね。
にえ 次はフーリンとモルウェンのあいだにできた息子、トゥーリンの物語。こちらもトゥーリンの生涯をかけた冒険の物語と言えるんだけど、トゥーリンの生涯は、悲しみに悲しみを重ねていくようなんだよね。
すみ トゥーリン自身は体も大きく、強く戦う男ではあるんだけど、幼いころに妹を失ったことから悲しみは始まって、行く先々で悲しいさだめが待ち受けているんだよね。まるでトゥーリンが愛する人は悲劇のなかで死んでいくことが決まっているみたいに。
にえ このお話に、グラウルングっていう悪賢く大きな竜が出てくるんだけど、表紙の絵はこのグラウルング。色合いが素敵ないい絵だなと思ったら、なんとJ・R・R・トールキン自身が描いたものなんだって。
すみ それから次にはヌーメノールの島にあった、王都アルメネロスのお話。
にえ ヌーメノールの島は今では水没してしまっているようなんだけど、もともとは五芒星の形をした島で、 代々の王が治めていたの。
すみ 王やその一族はエルフの血が入った人間で、そのため300〜500年前後と、とっても長生きだったんだよね。
にえ おもに語られているのは、第6代の王となるアナルディルと、その妻となるエレンディスの若き日のお話。
すみ アナルディルはアルダリオンと呼ばれてて、その父メネルドゥアが天体を観察するのが好きな学者肌だったのに対して、海が大好き、船が大好きの冒険家だったんだよね。
にえ なにかというと、中つ国へ航海へ出掛けて、何年も帰ってこないアルダリオンと、森を愛し、故郷を愛するエレンディスは幸せになれるのでしょうか。
すみ 一般的な夫婦間の話にも結びつけて考えられるようなお話だったよね。なんかそれぞれの気持ちもわかるし、でもってところもあったりして、唸らさせれる話だった。
にえ それからガラドリエルとケレボルンの話。これは物語性はあまりなくて、蘊蓄話かな。
すみ ここから下巻。長くなってきたんで、あいだを飛ばすと、「ホビットの冒険」にまつわるお話。
にえ ガンダルフがドワーフのトーリン・オーケンシールドに、ホビットのビルボを旅の仲間に加えろって説得する話よね。
すみ トーリンがどれほどビルボを仲間に入れるのを嫌がっていたのかがわかって、あの話の裏にはそんなことがあったのね〜とニンマリ。
にえ それから<指輪>をめぐる、ゴクリ、サウロン、サルマン、ガンダルフなどのお話。「指輪物語」で軽く語られて終わっていたことが、詳しくわかるよね。
すみ これはもう、「指輪物語」の裏ではそんなことがあったのね〜と興味津々だった。
にえ それから同じく「指輪物語」に出てきた、<蛇の舌>ことグリーマがセオデン王を無能の人にしてしまっていたローハンのお話。
すみ これまた、あのローハンでは実はそんなことがあったのか、と「指輪物語」では簡単にしか説明されなかった流れが詳しく把握できるお話だった。
にえ それから、ハレスの族(やから)の仲間だった、ドルーグという種族の話。
すみ ドルーグっていうのは表情もほとんどなく、エルフまでつられて笑っちゃうという素敵な笑い声のある種族で、わからないことが多いから、魔法使いだとも言われ、不思議な言い伝えがいろいろ残ってるのよね。
にえ そしてイスタリについて。これは「おおおっ」だったよね。
すみ イスタリっていうのは、ちょっと違うんだけど魔法使いのようなもので、サルマンやガンダルフたちのこと。彼等がどこからやって来た、何者なのか、これを読めばちょっとわかります。
にえ 「指輪物語」を読んでいたときも、この人たちは何者で、種族はなんなの?とちょっと思ってたんだけど、これを読んで驚いた。そういうことだったのか〜。
すみ それから、のぞけば遠国の統治者の行いや考え方までわかってしまう、イシルの石に代表される、<石>についてのお話。
にえ とまあ、興味津々で楽しく読めるお話がつまっていたよね。とにかく冒険の物語やら、いろんなエピソードやらが楽しかった。
すみ いまいち中つ国についてはなにもかも把握できていない私たちでも、たっぷり楽しめたよね。個人的には「シルマリルの物語」より前に読んでも良いと思う。「指輪物語」の記憶が薄れちゃってる方にもオススメで〜す。