=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「愛という名の病」 パトリック・マグラア (イギリス→アメリカ)
<河出書房新社 単行本> 【Amazon】
イングランド南部の海辺の町で、患者のほとんどが老人の診療所を営む医師ハガードは、突然の訪問を受ける。パイロットの青年だった。青年はハガードに「あなたは母の愛人だったのですか」と訊ねた。 そう、あれは1937年秋。戦争は始まらず、ハガードがまだ脚を引きずってもいなかったし、モルヒネのために目の下を黒くもしていなかった頃。ロンドンの有名な病院で外科の研修医として働きはじめたハガードは、同じ病院の病理医の妻ファニーと出会った。 今は名前も忘れてしまったある人の葬式で、一瞬見せたファニーの笑顔に釘付けになってしまったのだ。 | |
私たちにとっては、「スパイダー」につぐ2冊めのパトリック・マグラアです。 | |
この方の作品って、処女作「血のささやき、水のつぶやき」と2作め「グロテスク」のあとは、アメリカで出版された年と日本で邦訳出版された年が、ちょっと前後してるのね。 | |
そうそう、その2作のあとアメリカで出版されたのは、「スパイダー」「愛という名の病」「閉鎖病棟」の順だけど、日本では「閉鎖病棟」「スパイダー」「愛という名の病」の順。 | |
これが最新刊なのかと思ったら、「閉鎖病棟」より3年前に発表された作品だと知って、あらま、そうなの、と驚いた。 | |
これは1993年に発表されたものだから、10年前ってことだね。まあ、こういう内容だと、古いも新しいも関係ないんだけど。 | |
「スパイダー」は精神を病み、信頼できない語り手によってつづられる過去の出来事から、本当はなにがあったのかと読んでるほうが迷宮の奥へ追いやられていくような小説だったけど、これは同じく一人称語りでも、信頼できないってところまではいかないよね。 | |
やっぱり病んでるけどね。失った愛に病み、腰の痛みを抑えるためのモルヒネに病み、痛みそのものにも病んで、精神はかならずしも健康とは言えない状態。 | |
え〜と、あとはお願いします(笑) | |
ええっ、そんな〜。私だって、なにを言えばいいのかわからない。というか、良かったのか悪かったのかもわからない。 | |
なんかとにかく、執着なのか、愛なのかはともかくとして、他人から見ればグロテスクなまでに、愛する男の話だよね。 | |
そうそう、凄かった。最初はね、まあ、ありがちな不倫なの。 | |
息子が一人いて、まずまず裕福な家庭で、特別問題があるわけじゃないけど、それほど一緒にいて楽しくもなく、 深い愛情を感じるでもないような夫と暮らしているファニーという女性と、若き研修医ハガードの恋。 | |
なんとなく、女のほうから誘ったって流れだし、遊びとまでは言わないけど、金のない研修医のために家庭を捨てる気はなく、危ない恋愛にのめりこむことに喜びを感じているような女だった。 | |
ファニーって名前が、どうしても「ファニー・ヒル」を連想させるから、悪気のない娼婦気質って気がしちゃうんだよね。 | |
相手は年下で、自分に夢中になってくれる男なら誰でもよかったんじゃないの、と言ったら言い過ぎかな。 | |
まあ、そのへんはハガードの一人語りだから、なんとも言えないけどね。でも、とにかくハガードは夢中になってしまうの。 | |
で、まあ、いろいろあったらしくて、ハガードは今はロンドンから離れ、前の年老いた医師から譲られた診療所で静かに暮らしているんだけど。 | |
そこに現われるのが、ファニーの息子なのよね。スピットファイアのパイロットで、時代はイギリスにドイツが攻めてきた頃。 | |
ハガードがこの息子に語りかけるようにして話が進んでいくのよね。過去のことと、今のこと。 | |
ずっと「おまえ」って語りかけるのよね。自分の息子でもないのに、なんで「おまえ」なんだよと気になりまくりつつ読み進めると・・・。 | |
う〜ん、グロテスクと言う以外に言いようがないなあ。なんとも気色が悪いんだけど、とっても哀れでもあり。 | |
とにかくネッチリネトネトの愛の物語だよね。私たちには良いんだか悪いんだかわからなかったってことで、ご勘弁を(笑) | |