すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「ステップフォードの妻たち」 アイラ・レヴィン (アメリカ)  <早川書房 文庫本> 【Amazon】
二人の子供を持つジョアンナとウオルターの夫妻が、ステップフォードという閑静な住宅地に中古住宅を買い、移り住んできた。カメラマンとしては半プロとして活躍し、 女性運動にも興味のあるジョアンナは、さっそく親しくなれそうな女友だちを捜したが、なぜかステップフォードの女たちは、朝から晩まで家事に専念し、友だちとちょっとコーヒーを飲むという暇すらしないらしい。 ウオルターはすぐにステップフォードの唯一のクラブともいえる男性協会に加入したが、女性むけにはクラブもなにもなかった。
にえ 私たちにとっては、「ローズマリーの赤ちゃん」「ローズマリーの息子」以来、ずいぶんと久しぶりのアイラ・レヴィンです。
すみ この本は1974年に翻訳されて単行本が出ているのよね。それが今になって文庫化というのもすごい話だけど、二コール・キッドマン主演で映画化されることになったからなんだって。
にえ 1975年に一度映画化されているから、リメイクってことになるのよね。
すみ 前の映画はそのままだったみたいだけど、今度の映画では意表をつきすぎて、ズルッとずっこけそうになる謎あかしの部分は変えるんじゃないかと思うんだけど、どうかしら。
にえ 昔の映画なら逆に許せるけど、今の映画としては通用しないんじゃないかなとは思うよね、アレは。子供だましもひどすぎるというか。
すみ まあ、どっちにしても結果よりも過程を楽しむホラーだから、結末がどうであれ本では充分楽しめたけどね。
にえ 巻末にピーター・ストラウヴの解説がついてて、どうしちゃったのってぐらいアイラ・レヴィンの文章の上手さを褒めたたえてたでしょ。それが楽しく可笑しいやら、 たしかにホラー作家は文章力だよなと納得したり。
すみ ほんと、そうだよね。ホラーってありきたりの題材で、ありきたりのストーリーだって許されるよね、文章が上手くて、真に迫ってて本気で怖くなれれば。 それが文章下手で、怖さが伝わってこなかったら、どんなに他が上手でもアウトだよね〜。
にえ そうそう、人をジワジワ怖がらせるような文章を書くって本当に難しいと思うし。
すみ そういう点で言えば、この小説は大満足だったね。ラストがどうあれ(笑)
にえ 最初は明るい雰囲気の出だしから。まだ幼い子供二人を育てながらも、社会に目を向け、自分なりの生き甲斐を求めてがんばっている、溌剌とした女性ジョアンナがステップフォードに引っ越してくるの。
すみ 旦那様のウオルターはとっても理解のある人で弁護士、とってもいい夫婦だよね。
にえ さて、この町で女友だちをたくさん見つけて、社会活動にもいっぱい参加するぞ、と張り切るジョアンナなんだけど、ステップフォードの妻たちは、なんか変。
すみ 朝から晩まで家事に励み、旦那様を尊敬し、いつもお化粧から服装まで身ぎれいにキチンとしていて、穏やかで言葉遣いもきれい。バストはボンッと出て、ヒップはきゅっと締まってて、 買い物以外で家から出ることはないのよね。
にえ そういう人が一人か二人いたら、少しは見習わないと、なんてところだろうけど、町中の女性、全員がまったく同じようにそうなんだから、ちょっと気味が悪いよね。
すみ アメリカでは今でも、理想の妻のことをステップフォード・ワイフなんて呼ぶことがあるんだって。それくらいこの小説は映画を含めて反響が大きかったのね。
にえ そのうちにジョアンナには、ジョアンナたちより1ヶ月前にステップフォードに引っ越してきたというボビイという楽しい友だちができるんだけど、ジョアンナもボビイも、 この町はなんか変だと怖くなりはじめるの。
すみ 古新聞から偶然に、町の過去を知って驚き、そのうちにいろんなことがわかっていって、となるのよね。
にえ たしかにこんな町に引っ越しちゃったらイヤだよね〜。
すみ しかもまあ、アレの腹の底ってものが見えてきて、そういうもんだよな、と妙に納得しつつゾゾッとするよね。
にえ 厚い本じゃないのに、うまいこと引き込まれるし、うまいこと追いつめられて怖くなってくるし、なかなか楽しめた。まあ満足ってところかな。
すみ 私は個人的には、ずっとアイラ・レヴィンを女性だと勘違いしてて、男性だったのねとわかったのも収穫なんだけど、それはどうでもいいわね(笑) おもしろかったです。リメーク映画では、この小説にどう手を加えてるのかなってのも興味津々。